2022年
7月号

神大病院の魅力はココだ!Vol.11
神戸大学医学部附属病院 皮膚科 久保 亮治先生に聞きました。

カテゴリ:医療関係, 神戸

私たちの身近にある皮膚科ですが、意外と知らないことが多いようです。皮膚の病気のこと、治療法や予防法など興味深いお話を聞かせていただきました。

―皮膚にはどういった病気があるのですか。
皮膚科は歴史が長く、また病変を目で見て確認でき、組織を取ってすぐに検査できるなど理由があるのでしょうか、病名は非常に多くて500種類とも1000種類ともいわれています。かさつく、かゆいなどといったお肌の悩みから、命に関わる病気までさまざまです。例を挙げると、全身に水ぶくれができる水疱症、主に手のひらや足の裏に膿(うみ)が溜まった白い水ぶくれができる膿疱症、角化症、白皮症、メラノーマなどの皮膚がん、薬のアレルギー反応で起きる薬疹などなど、きりがないほど多くの病気があります。

―皮膚の病気が命に関わるのですか。
命に関わる病気の代表は皮膚がんです。黒いメラノーマだけでなく、皮膚を覆う表皮をつくる細胞や血管を作る細胞、神経、リンパ球など、皮膚を構成するさまざまな細胞が「がん」になります。早期に気付いて治療をしなければ、血液やリンパの流れにのって全身に転移し、最終的に命に関わります。また、水疱症の中でも自己免疫疾患の一種「天疱瘡(てんぽうそう)」は全身に水ぶくれができ、水ぶくれが破れてびらんになります。すると、体液や栄養分がどんどん漏れ出していき、さらにそこで菌が繁殖して感染症が起きます。同じような症状が、重度の薬疹などで全身に起きてしまう場合も命に関わります。

―アトピー性皮膚炎について教えてください。
皮膚の角質バリアが生まれつき弱い乾燥肌が発症要因のひとつです。またご両親に喘息などのアレルギー疾患があると、アトピー性皮膚炎になるリスクが高いです。生まれつき角質が弱い人でも温暖で湿潤な環境下では角質バリアは壊れにくいのですが、乾燥した環境下では角質バリアが壊れやすくなってしまいます。そうするとダニ抗原や食物抗原などのさまざまな抗原が皮膚を通して身体に入り込み、免疫にアレルゲンとして記憶されてしまって、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症要因になってしまうのです。実は家の中のほこりには、子どもさんの食べこぼした卵やピーナッツなどの食物抗原がたくさん含まれています。それが皮膚を通してアレルゲンとして免疫に覚えられてしまうと食物アレルギーを発症する原因になってしまいます。
アトピー性皮膚炎が増えている理由はいくつか考えられます。近年日本の湿度が低くなってきていること、エアコンによる部屋の乾燥、部屋の気密性が上がったために増えたダニやカビなどです。ぜんそくの重責発作や食物のアナフィラキシーなどは命に関わる可能性もあります。正しい治療法、対処法を知ることが大切です。

―治療についてはいろいろな情報が氾濫していますが…。
今は治療薬の種類も増えて、アトピー性皮膚炎と戦ういろんな武器があります。武器は正しく使うことが大切です。間違った使い方をすると色んな問題が起こります。世の中には皆さんを怖がらせる情報が溢れ返っていますが、正しい使い方をすれば怖い武器ではありません。なんとなくの印象でステロイドを使うことを怖がったりせず、皮膚科専門医の指示に従って適切な治療を続けてください。

―皮膚がんの原因は?

がんはいくつかの遺伝子の傷が積み重なって発症しますが、皮膚がんに関しては紫外線が大きな要因の一つです。一例を挙げると、イギリスからオーストラリアへ入植したコーカシアンの人たちに非常に多くの皮膚がんが発症しました。国を挙げて「紫外線が皮膚がんを起こす」というキャンペーンを行ったところ、皮膚がんの患者さんはかなり減りました。赤道付近に住む民族は濃い肌の色を生まれつき持っていて、強い紫外線から肌を守り皮膚がんを防いでいます。一方、骨を作るためのビタミンDは、皮膚で適量の紫外線によって作られます。北ヨーロッパをはじめ、紫外線が弱い地域で暮らす人たちにとっては、紫外線を吸収しやすい白い肌が必要なのです。白い肌の人々がオーストラリアのような紫外線の強い地域に移住したため、皮膚がんの原因になったのです。

―「ほくろのような皮膚がん」といわれているメラノーマも紫外線が原因ですか。

西洋人のメラノーマには紫外線が関わっていますが、日本人のメラノーマのはっきりとした原因は解明されていません。日本人では手のひらや足の裏にできることが多いです。特に足の裏は気付きにくいので、早期発見、早期治療が重要です。発見が遅いと、既に転移しているケースもあります。皮膚科専門医が専用の拡大鏡を使い観察すれば模様のパターンから診断できます。小さなうちなら検査を兼ねて切り取れば、治療は完了します。
今はクリニックや大学の関連病院のホームページなどに情報が詳しく出ています。皮膚科の専門医資格を持っておられる先生にまずは診てもらうことをお勧めします。大学病院での診療が必要であれば、紹介していただけます。

―皮膚の病気の治療法は進んでいるのですね。
目覚ましく進歩しています。江戸時代なら確実に死に至ったといわれる天疱瘡では、自分で自分を攻撃してしまう自己免疫をステロイドで抑えられるようになり、生き延びられるようになりました。最新のものでは自分を攻撃する細胞そのものを狙い撃ちしてやっつけてしまう薬が開発され、完治の可能性も開けてきています。 
一方、水疱症には生まれつきのものもあります。全身の皮膚に水ぶくれができ続ける、とても辛い病気です。そんな生まれつきの水疱症で、たまたま原因となる遺伝子の傷が突然変異で治ってしまい、皮膚の一部分で水ぶくれが起こらなくなる現象があることが分かってきました。遺伝子の傷がたまたま治った皮膚が生まれてくれれば、そこから培養細胞を育てて表皮のシートを作って、病気の皮膚と貼り替えていくことができるのです。ほぼ全身の皮膚を水ぶくれが起こらない皮膚と置き換えることができた患者さんがいます。自然に治る皮膚が生まれてきたことは本当に奇蹟のようで「神様からのごほうび」としか思えないケースですね。

―日頃から誰でもできる皮膚の守り方は。
保湿をして肌を良い状態に保つこと。特に空気が乾燥する暖房器具には注意が必要です。炎症などが起きているときは早めに専門医を受診して完治させること。
皮膚がんの原因は紫外線とお話ししましたが、紫外線全てがワルモノというわけではなく、ある種の紫外線はリンパ腫の治療に用いられているほどです。美白を意識しすぎて紫外線を極端に避けるのは危険です。美白を追求するあまり、産まれたばかりの赤ちゃんを紫外線から完全に遮断したところ、骨を育てるビタミンDを作ることができず、くる病になってしまったという事例が現代の日本で起きています。常に適度な紫外線を浴びてちょうど良い加減の肌色を保つことが大切です。
もう一つ、肌の洗いすぎは禁物。もちろん、食べたものが付いた赤ちゃんの肌はちゃんと洗ってから保湿してあげなくてはいけませんし、皮脂が多い十代のころはある程度洗う必要がありますが、年齢を重ねて同じことを続けていると必ずと言ってもいいほど肌トラブルが起きます。不要な垢は自然に落ちていきますからこすって無理やり剥がしたりしないこと。必要だから肌についているのです。何ごとも「極端はダメ」ということです。

神戸大学医学部附属病院 皮膚科 久保 亮治先生

久保先生にしつもん

Q.医学を志された理由は。皮膚科を専門にされたのはなぜ?
A.父が皮膚科医でしたので子どものころからお医者さんになろうと思っていました。大阪大学医学部に入り、薬理学の研究室で実験をやらせてもらうと、それが面白くて、楽しくて…。それ以来、研究の世界にどっぷり。基本〝オタク〟なのでハマったらとことん突き詰めてしまいます(笑)。
卒業後は皮膚科にいったん入ったのですが2年を経て、基礎研究に進み10年ほどは研究に没頭していました。その後、皮膚科に戻り、慶應義塾大学で臨床と基礎を結びつける仕事を15年続けたのち、昨年、神戸大学へ来ました。

Q.患者さんに接する際に心掛けておられることは。
A.子どもの患者さんのご両親、特にお母さんは「病気になったのは自分のせい」と思ってしまう傾向があります。親から受け継いだ遺伝的な要因で発症したり発症しなかったり…。でも病気は誰のせいで起こるものでもありません。ご自身を責めることではないと分かってもらえるように努めています。私たち医師と親御さんが信頼関係を築き緊張がほぐれたら、子どもさんはそれを確実に感じ取り、緊張がほぐれます。怖がられることもなくなり治療がスムーズに進みます。これはどんな年代の方でも同じですね。まずは信頼関係の構築です。

Q.趣味やストレス解消法は。
A.〝オタク〟なのでいろいろありますよ。まず〝クラシックオタク〟。最近は室内楽を聴くことが多いです。しゃべり始めたら時間が足りませんね。続いて〝カメラオタク〟。生き物と旅行も好きなので、行った先で動物を撮り、鳥を撮り、海に潜って魚を撮り…これも話が止まらないので、またの機会にします(笑)。

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