7月号
虫歯の原因「砂糖」を使わずにケーキをつくれるか⁉ その実現はまさに奇跡!歯科医監修のケーキ店
Little teeth Open!
虫歯予防のために我慢はおかしい…
ケーキ屋さんと歯医者さんという「対極」に思える関係者同士がタッグを組んだ⁉
苦楽園に誕生した「Little teeth」は、なんと歯科医院が監修するパティスリーだ。ケーキづくりに砂糖はマストな材料だが、虫歯の原因となる砂糖は歯医者にとっては天敵。相容れることのない、まさに奇跡とも言える組み合わせの店舗が生まれた経緯を、店を営む西宮の歯科医院「むらまつ歯科」の村松弘康院長と店のオーナーも兼任する、奥様で歯科衛生士の村松憂華さんに伺った。
「子供達に虫歯予防のため、スイーツを我慢するよう指南するのは何かおかしい。とはいえシュガーレスのスイーツは得てしておいしくない(笑)。だったら自分達でおいしいものを作ろうと考えました」と語る村松院長。
「当院は外来のほか老人ホームなどへの訪問治療もしているんです。栄養摂取のため、刻んだり、とろみをつけたり、食べやすく工夫される食事と違い、嗜好品のお菓子にはなかなか手を掛けられない現状を見て、血糖値への影響や嚥下障害などで一般的なお菓子を食べられない高齢者にも、好みのケーキを個別に選び、味わってもらいたいと考えました」と憂華さん。
そうして歯科医院ならではのこだわりのお菓子を作りたいと一念発起し、パティシエの三軒家祐さんと研究を重ね、2月の開業へとこぎつけた。
想像を超えまくり!高感度な街の逸品
ショーケースに並ぶケーキは、「むらまつ歯科」で作るオリジナルの絵本『Little teeth』の世界をモチーフにしている。「くまくん」や「ぞう先生」など登場する動物達を通して、“歯医者さんは怖い”というイメージを払拭するストーリーで、店の内装やロゴもその世界観を彷彿させるデザインに。
絵本に出てくる「チーズケーキ」、主人公のくまの顔の形をした「ごほうび」、大きな苺!と目をひく「華」など定番の4種ほか、季節や月ごとにラインナップは変化。手間暇かけてつくるため種類や数は限られるが、見た目からは想像できない計算し尽された重層的な味わいで、食べ進めるたびにため息が漏れる。虫歯になりにくい天然甘味料を使用しながら甘みはしっかり、それでいてすっきりとしたあと口が印象的だ。
「当店のケーキはシュガーレス&グルテンフリーがテーマ。虫歯になりにくいのはもちろん、血糖値が上がりにくく、カロリーも30%カットゆえ、糖質制限をされている方やダイエット中の方にもお勧めです。また小麦アレルギーのお客様でも安心して食べて頂けるよう、『チーズケーキ』と『ぷりん』は小麦の代わりに米粉を使用しています」と憂華さんは胸を張る。
試行錯誤の後、完成 今後は元気を切り拓く
噂を聞きつけて遠方から足を運ぶファンが多く、ケーキ店激戦区の苦楽園でも独自のコンセプトで他と一線を画す。ただ、その実現には並々ならぬ努力があった。砂糖を使用しないことで生地が膨らまない、固まらない、甘味が足りないなど、問題は山積みだった。「無理…と何度も諦めかけた」と村松院長は開業までを振り返る。歯科医院としての知識とパティシエの技術を駆使し、おいしくて、誰もが安心・安全に味わってもらえるスイーツを追求した。
「砂糖を天然甘味料に差し替えるだけなら簡単ですが、全て一から考えなければならないのが大変でした」と憂華さんは試行錯誤を繰り返し、ケーキを完成させてくれたパティシエをねぎらう。
今後は老人ホームや幼稚園、保育園で、食育や食がもたらす豊かな暮らし、虫歯になりにくいケーキの紹介などの活動も行っていく予定。本人が食べたいものを一生食べ続けることができることは生きていくうえで大事なこと。季節の新作ケーキや新しい焼き菓子も続々と登場予定。元気な未来を切り拓くスイーツを提案する「Little teeth」のこれからに目が離せない。
Little teeth(リトルティース)
2022年2月5日オープン
西宮市南越木岩町3-13-101
10:30~19:00
月曜休み(祝日は翌日休み)
TEL.090-4275-4624
https://little-teeth.com/