5月号
「もっと自分のことを大切にしたい」と気づかせてくれた映画
『まっぱだか』主演、津田晴香さん
2021年8月に元町映画館で先行公開された、全編元町で撮影の映画『まっぱだか』。神戸出身の主演、津田晴香さんは、同作でおおさかシネマフェスティバル2022の新人女優賞に輝きました。5月からの東京公開を前に、津田さんにお話を伺いました。
―まずは、新人女優賞受賞の感想をお聞かせください。
役者を続ける上で、何かしら形に残る賞をいただくことを目標にしていたので、喜びが湧き上がりました。いい雰囲気の中でお芝居ができたので、このメンバーだったからいただけた賞だと思います。安楽涼さん、片山亨さんの両監督も東京から駆けつけてくださり、嬉しかったですね。
―初めての映画出演作『みぽりん』では地下アイドル役を熱演し、津田さんのファンが一気に増えましたね。
わたし自身のことを知ってもらう作品になりましたし、ミニシアターを知るきっかけにもなりました。ちょうど『みぽりん』のプレイベントの時に元町映画館スタッフの石田さんから勧められ、安楽監督主演作の『1人のダンス』を観に行くと、画面を超えて安楽さんの想いが伝わり、やりたいことを思うようにできていない自分と映画が重なって、「自主映画ってこんなにすごいんだ」と感激しました。来場していた安楽さんに号泣しながら気持ちを伝え、そこから交流が始まりましたね。
―『まっぱだか』はコロナ下で生まれた作品です。
片山さんから直接出演のオファーをいただいた時は本当に嬉しかったです。当て書きだったので、自分自身のこと、他人といるときにずっと笑っているから、何をしてもいい人と思われてしまうこと、人と付き合うと我慢ばかりし、最後に気持ちが爆発して終わることなど、いろいろお話しました。
―1週間の撮影は非常にハードですが、どのようにナツコを演じたのですか?
撮影へ入るときに、笑ってごまかすことは絶対にしないと決めて臨みました。ナツコはわたし自身ですから、ちゃんと自分に向き合い、意識的に言われたことを受け止め、自分で思ったことを表現する。両監督は思ったように動いていいと言ってくれましたが、精神的にしんどかったですね。
―どんな点がしんどかったですか?
横山役の片山さんが、わたしが今までされて嫌だったことを全部、的確に演じてくれたのです。今までわたしはこんなことを受け流していたのかと。きちんと受け止めると本当にしんどかった。嫌われないように笑って自分を守っていたけれど、もっと自分のことを大切にしたいと撮影中に気づきました。安楽さんの演出も、ナツコの気持ちを一緒に考えてくれ、横山と対峙するシーンは背中を押してくれました。
―W主演の柳谷一成さんが演じる俊とナツコの関係は?
ナツコは自分の気持ちを言えない人ですが、俊は正反対の人です。相手がそうだと、逆にこちらも自然体でいられる。実際に柳谷さんといる時は気持ちが楽でしたし、撮影後半は横山さんの愚痴も聞いてもらいました(笑)
―元町映画館では先行公開の3週間連日舞台挨拶に立ち続けましたね。
自分のお店が映っていたと観に来てくださった方もいましたし、元町の方は本当に温かくて、「頑張ってね」と声をかけてくださいました。舞台挨拶の時の空気がとても柔らかくて、自分が元町映画館ファミリーの一員だと思っているので、終わるのが寂しかったです。
―映画では「当たり前」がキーワードですが、津田さんにとっての「当たり前」とは?
俊と安楽さんが演じる吉田みたいに、どんな状況になっても隣にいてくれる友達、当たり前に隣にいてくれる人はすごく大事だと思うし、だからこそ、もっとそんな人を大切にしたいですね。
津田 晴香
プロフィール
1995年兵庫県出身。女優、タレント、ナレーター、ラジオパーソナリティなど幅広く活動中。2019年『みぽりん』(監督:松本大樹)で映画初出演。その後もリモート短編映画「アワータイム」(大矢哲紀監督)やNHK連続テレビ小説「おちょやん」女給役など出演を重ねる。元町映画館初配給の主演作『まっぱだか』(監督:安楽涼、片山亨)が2022年5月7日より新宿K’s cinemaで公開。