5月号
神戸を愛し、世界へ羽ばたく子どもたちへ 本の森をプレゼント
令和元年9月からプロジェクトがスタートした
「こども本の森 神戸」が3月25日、オープンの日を迎えた。
建築家・安藤忠雄さんが設計し、神戸市に寄贈した建物が完成し、館内には市民をはじめ多くの有志から寄せられた本など約1万8000冊がそろった。オープニングセレモニーで、久元喜造神戸市長は「安藤さんの『子どもたちに本に親しんでほしい』という思いから始まり、多くの皆さまのご協力、ご寄付、ご支援をいただき今日を迎えることができました。感謝いたします。世界は非常に厳しい状況にあります。そんな中でも、神戸の子どもたちがすくすくと成長してくれることを願っています」とあいさつ。竹下景子名誉館長は「素晴らしい晴天の下、オープンの日を迎え、安藤さんをはじめ皆さんの熱意を改めて感じています。私もいろいろなジャンルの本を選ばせていただきました。その中にアンネ・フランクの写真集と沖縄ひめゆりの絵本があります。訪れた子どもたちが本を通じて世界の平和を自分のこととして受け止めてくれたらと今、思っています」と願いを込めて話した。幼いころは本に親しむ余裕がなく、20代になって読書を始めたという安藤さん。「もっと早く文学の世界に触れていればもっと豊かな時間を過ごすことができたのではないかと後悔の念に駆られました。同じ後悔を今の子どもたちにはしてほしくない」と本の森プロジェクトを始めたきっかけについて語った。
招待された市内の子どもたちなど20人が、関係者に迎えられ緊張した面持ちで館内へ。入口正面には「本を通して豊かな感性を養い、想像力を育み、100歳まで青春を生き続けてほしい」と安藤さんが思いを込めて「青いりんご」を設置。吹き抜けの開放的な空間に広がる「しぜんの森」「くらしの森」「げいじゅつの森」など全15の森には、かわいい絵本、楽しい図鑑、難しい本…足元から頭のずっと上まで本、本、本…そこは〝本の森〟。あちらこちらに〝秘密基地〟!?あっという間に子どもたちは生き生きとした表情になり、思い思いの本を手に館内探索を始めた。
「今、自分がいる場所を愛せないのなら決して世界へは羽ばたけない」という安藤さん。「つらい状況にあるウクライナの人々は『自分たちはここでやっていくんだ!』という強い気持ちを持っています。神戸の子どもたちも家族や地域社会に対する愛情を持ち、ウクライナをはじめ世界に目を向け、地球に対する愛情を育み、ここから世界へと羽ばたいて行ってほしい」。この森には安藤さんの未来に向けた思いがたくさん詰まっている。
こども本の森 神戸HP
https://kodomohonnomori-kobe.jp/