2021年
7月号
7月号
木のすまいプロジェクト|平尾工務店|木材編|Vol.1 山を育てる
失われつつある日本伝統の建築文化を未来へ。
連綿と受け継がれてきた匠たちの仕事をご紹介します。
山を育てる
近代以前のわが国の建築の歴史は、まさに木造加工技術の変遷そのもので、現在も多くの木造建築が新たな技術を採り入れつつ進化し、建設されてきました。
すぐれた木造建築は優良な木材なくして築くことはできませんが、それはどのように生産されているのでしょうか。平尾工務店が構造材に使用している紀州材を例にご紹介します。
森林資源の豊かな紀州=紀伊国。その名の由来は一説によると、木の神様とされる五十猛命が鎮座されることから「木の国」とよばれ、それが奈良時代に「紀伊国」と転じたそうです。特に江戸時代、紀州材の多くは江戸に送られ、八百八町の発展に大きく貢献しました。
紀州では重ねてきた歴史の分だけ技術や知見が蓄積し、現在はそれを生かして良質な材木を多く生産しています。
建築用材ではスギ・ヒノキが最適とされ、しかも細かい年輪幅、強度と光沢、ねじれや狂いの少なさという条件が求められます。このような材木を生産する土台は、一にも二にも山づくり。土地条件や気候など風土にあった「育林技術」で生育環境を整えています。林業は更新~保育~生産、具体的には地ごしらえ→植林→下刈り→除伐→間伐→伐採のサイクルを繰り返して森を育てていき、また、1年間季節ごとの仕事があります。これらの地道な作業により良材が得られるばかりでなく、環境の保全や災害の防止にも結びつきます。国産材の家を建てることは林業を守ること、そして国土環境を守ることにも繋がっているのです。