2021年
7月号
7月号
特集|最近読んだ一冊|蓑 豊
李禹煥氏の美学に触れ、思考を深める
国際的に活躍する美術家、李禹煥氏の著作を集めた本です。李氏は、哲学的且つ詩的な表現で、自身の芸術を始め、他の芸術家・作家たち、「ものと言葉」などについて語っています。李氏の文章からは、彼の作品同様、深い精神性が感じられます。
「芸術作品における余白とは、自己と他者との出会いによって開く出来事の空間を指すのである。」とは、最初の章の李氏の言葉です。創作活動の中で李氏が大切にされている「余白」の概念は、美術作品とその鑑賞者の関係にも通じると、私は考えます。人が美術作品と出会い、精神的な何かを吸収することは、発想の源や動力、支えになったり、意義を与えてくれたりと、生きていく上での可能性を大きく広げてくれます。
李禹煥氏の美学に触れ、思考を深めることのできる一冊です。
『余白の芸術』
著 李禹煥
出版社/みすず書房 4,950円(税込)
兵庫県立美術館長
蓑 豊さん