7月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第121回
新型コロナ検査方法の変遷と今後
─新型コロナウイルス感染症の検査方法には、いろいろとあるようですね。
足立 はい。一番知られているのがPCR検査ですが、これにもいくつか方法があり、その精度設定によっては感染力がなくなっても陽性が残る場合があります。次に多く使われているのが抗原定性検査で、その場ですぐ判定でき、発症初期の確定診断にも使えますが、偽陰性など疑わしいときはPCR検査を追加します(表1)。PCR検査では綿棒を鼻の奥まで入れる方法が一般的でしたが、後から唾液でも認められるようになりました。抗原定性検査では、鼻の入口までの綿棒採取で可能となっています。このように方法も替わってきていますが、いずれにしても、あくまでもその時点の判定であると理解することが大切です。
PCR検査も絶対的なものでないので、本当に感染していたか、あるいはワクチンの効果が出ているかを判定するには、血液採取による抗体検査をする必要があります。
─検査機関も拡大されてきたようですが。
足立 当初はPCR検査ができる場所も限られ、確定診断まで時間がかかるということで、発生の実態もつかめないお粗末な状況でした。その後、各府県の衛生検査所で検査出来るようになり、民間検査会社でも順次体制が整っていったという訳です。
新型コロナの場合は法的な感染症対象疾患として行政的な検査対象となりますから、その検査は公費扱いとなります。
初期段階では、行政が関係病院に「帰国者・接触者外来」を「水際対策」の一環として設置した訳ですが、市中感染が拡大する一方で検査が追いつかなくなり批判を浴びる中、このような保健所からの行政ルートに乗らなくても検査ができる「地域外来・検査センター」が地区医師会の協力で設立され、ドライブスルー方式で唾液をとる等の方法で多くの検査が可能になったのです(図1)。
─兵庫県下でもそのような検査センターが役立っているということですね。
足立 神戸市での設置はじめ、県の委託施設として、昨年8月末の加古川・高砂PCR検査センター以来、淡路から阪神地区まで5か所ほど設置され、地区の医療機関から直接検査依頼をして、患者さんに行ってもらい検体を採取し、民間検査所での検査結果を知らせていただく形でより迅速な結果対応が可能となりました。
検査センターの設置は有意義なデータの分析にも役立ち、例えば加古川・高砂PCR検査センターでは、設立から本年2月末までのデータを集計することにより、50歳台の男性の陽性率が高い、若い世代の嗅覚異常は陽性者の確率が高いなどの傾向がわかりました(図2)。
─「発熱等診療検査機関」とは別のものですか。
足立 はい。前号・前々号で紹介した「発熱等診療検査機関」は個別診療所等でかかりつけ患者さんなどの鑑別検査をおこなうもので、抗原検査などより迅速な検査や届出対応が可能になりました。これにより検査は一気に拡充し、テレビなどで宣伝している自費検査といった精度不明で後の責任のない検査に頼らず、心配なら近くの医療機関に問い合わせできるようになりました。
─今後はどうなるのでしょう。
足立 ご承知のとおり、これまで説明した方法だけでは問題となっている「変異型」はわからず、さらに詳しい検査が必要です。どんな「変異」で、どの程度の危険性があるものか等迅速に判断できる検査の確立が目指されているところです。
記事内容は取材日(2021年5月29日)時点での情報に基づいています。新型コロナウイルスに関する情報は日々変化しています。最新の情報は各自ご確認ください。