11月号
harmony(はーもにぃ) Vol.33 「非日常」ということ
神戸に本部がある「誕生日ありがとう運動」の機関誌に、遠藤哲也さんが「“非日常”という体験」について原稿を書いています。「誕生日ありがとう運動」は知的にハンディをもつ人たちの啓発活動を長年続けている団体で、遠藤さんには成人した知的障がいの娘さんがおられます。遠藤さんの文章の一部を引用します。
「多くのカップルがそうであるように、私と妻は我が子が健康に生まれ、健やかに育つだろうと想像していました。自分たちが育ってきたように、健康面で問題のない日常がつづくと疑いもしなかったのです。しかし、娘の発達の遅れは徐々に目立ち、大学病院の医師からある日、娘の障がいの告知を受けました。その日までつづいていた自分たちなりの『日常』が途切れ、知らない『非日常』の世界に紛れ込んだような感覚でした。ある障がい児の親は障がい者家族になったときのことを『まるで宇宙空間に放り出されたような孤独感』と表現されていました。いずれにしても、地続きと思い込んでいた『日常』が途切れたと感じたのです。今振り返ると、このときの日常とは健常者の世界、その日常だったのだと思います。その後、娘と通った療育訓練施設や専門病院などは、病児・障がい児の日常の世界であり、まだ若かったそのときの私たち夫婦にとっては、まさに『非日常』の世界と感じていたのです。」
新型コロナウイルス感染拡大防止のために緊急事態宣言が発令され、自粛生活が始まると「非日常」という言葉を目にするようになりました。これまでと違った生活や仕事に戸惑い、収入の道が断たれたり、先の見えにくい状況に不安を感じたりした人たちも多いことでしょう。しかし、この「非日常」という事態は個人にとってはいつでも起こりうることなのです。思わぬ事故、病気、ケガ、災害、突然の死、離婚、離別、倒産、解雇・・・、私たちの暮らしはいつ何時、非日常の世界へ放り込まれるかわからない不安定さの中にいるわけです。しかし非日常がすべてマイナスの出来事、経験であるとは限りません。非日常の世界が思わぬ新たな視界を開いたり、これまでとは異なる人生を贈ってくれるかもしれません。遠藤さんも障害のある娘さんとの非日常が、今では日常になり、非日常で得た経験が今の暮らしに彩りを添えているように思います。
愛の手運動は親に育てられない子どもたちに、
里親・養親を求める運動です。
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