9月号
連載コラム 「第二のプレイボール」|Vol.19
Vol.19 「球場から銀幕へ舞台を移して 元阪神タイガース投手・嶋尾康史さん」
文・写真/岡力<コラムニスト>
引退後にさまざまな世界で活躍する元プロ野球選手の「今」をご紹介します。
鎧兜を身にまといカメラの前で迫真の演技をする虎戦士がいる。元阪神タイガース投手の嶋尾康史さんは、1968年生まれ姫路市出身。小学4年から野球をはじめ中学卒業後は、地元の強豪である東洋大姫路高校に進学した。小学校では内野、中学校では外野を守っていた嶋尾さんにある日、転機が訪れる。第67回全国高等学校野球選手権大会3回戦。後に「ハマの大魔神」と呼ばれる佐々木主浩投手率いる東北高校に先輩たちが完敗した。その際、ライバル佐々木と体格が似ていた事からバッティングピッチャ―として任命される。翌年の第68回大会では、長谷川滋利投手と共に出場しベスト8の成績をおさめた。同年のドラフト会議では、複数の球団が注目する存在となり阪神から2位指名を受け入団。6年間に渡り1軍試合のマウンドに立った。(タイガース在籍10年間)
1992年、高知(安芸)キャンプのブルペンで右ひじを痛めキャッチャーまで球が届かない事態に見舞われる。国内で施術後、その翌年、スポーツ医学の権威であるフランク・ジョーブ博士によるトミー・ジョン手術を受けファームで調整するも機会に恵まれず1996年に引退した。
その後は、知人の紹介で現在の事務所に所属しスポーツキャスターになる。1998年、日本を代表する演出家・深町幸男氏から恵まれた体格が高く評価され役者デビュー。これまで数多くの映画、テレビドラマに出演している。一昨年には、地元姫路が舞台のNHK大河「軍師官兵衛」で重臣・大野治長役を演じ故郷に錦を飾る。「野球選手も役者も人に見られる商売ですから共通する点が多いです。あつかましさも必要です。常に結果を求められる部分でも似ていますね」。現在、海外進出を見据えオーディションに参加する傍ら若手俳優の体力指導も行っている。野球を通して培ったノウハウでこれからも芸能界を席巻していく。