2011年
7月号

福祉のまちを目指して シリーズ The welfare city “KOBE”

カテゴリ:

楽しむこと、それが自立につながれば

兵庫区の障がい者作業所「ネットワーク神戸」の2階に、ギャラリー「アートホールWA」がオープンした。どこかにある個性を見つけること、を目的にさまざまな文化活動をおこなう作業所についてもお話をうかがった。

お話をうかがった方/藤山千枝子さん(特定非営利活動法人WA ネットワーク神戸 施設長)
伊田昌義さん(特定非営利活動法人WA ネットワーク神戸 理事長)
ヤマモトヨシコさん(アートホールWA プロでデューサー)

―事業所の2階にアートギャラリーをオープンしたのは、どういった願いからですか。
藤山 私の娘・晃代はダウン症という障がいを持っていますが、小さい頃から絵を描くことが大好きでした。いつか、娘の作品を展示できる場所、発信できる場所をつくりたいと願ってきました。「いろいろな個性が集って、いろどり豊かな場所に」というのがコンセプトです。私は、娘には自由に絵を描かせてきました。私は特別支援学級の担任を26年間つとめ、たくさんの障がいのある子どもたちに接してきましたが、なかなかそのように、好きなように絵を描いたりできる環境を持つことは難しいのです。親御さんも大変ですし、障がいのある子どものための「さをり織り」教室に通っても、お母さんは上手にできるように子どもたちに強制させてしまい、そこですばらしい織りは止まってしまいます。子どもたちは、高校までは養護学校がありますが、そこを卒業すれば行く場所がなく、安い賃金で作業所に通ったりします。このギャラリーによって、例えば作品を気に入った人に買っていただけて、娘たちの楽しみが、自立につながればいいなと思っています。
伊田 晃代ちゃんのように、絵が好きな子もいれば、障がいを持つ子の中には音楽が得意な子や、何けたもの暗算が一発でできてしまう子、聴覚がするどい子など、それぞれの個性を持つ子どもたちがいます。その子の個性を見つけて、それを伸ばすためには、まずいろいろなことをやってみなくてはわかりません。ですから1階の作業所では、絵を描いたり、歌やハンドベルなどの音楽や、写真教室など、さまざまなことをしています。私たちは彼らに、100も200もいろいろなことをさせていきたい。結果、何かが見つかって、それを生かせればと思っています。もちろん、給料をいただくための仕事もします。それも必要なことです。作業所では、牛乳パックなどの再生紙を使い手すきの和紙を作り、押し花をつけてびんせんやしおりなどの商品を作るほか、紙でできたバッグ、ミサンガなどを作ったり、いちご農園での作業をしています。

―ギャラリーのプロデュースをされたヤマモトさんは、このギャラリーでどんな印象を受けましたか。
ヤマモト オープンから半年たちましたが、他のギャラリーにはない温かい雰囲気だと言われるお客様が多いです。ギャラリーは一般のアーティストの方ももちろん利用していただけるので、ぜひお越しいただきたいですね。
 障がいのある方たちの作品は驚かされることが多いです。構図であったり色使いであったり、「上手く描こう」という意識がないので、描きたいものそのものなんです。作業所の写真教室の講師もさせていただいていますが、楽しいです。「変な格好して撮ってみよう」と言うと、もう寝転んだりして好き勝手です。目の不自由な子も撮影します。彼らがシャッターを押し、作品ができます。

―これからはどんな活動を。
伊田 地域との共生のために、地域の人とのふれあいを積極的に行ないたいと思います。地域の子どもたちとのふれあいも、障害者のためにも、健常者のためにも必要だと思います。それから障害のある子どもの親御さんは隠れていることが多いので、ぜひ前へ出てきてほしいですね、特にお父さんが積極的に出てきてほしいと思っています。
藤山 ギャラリーに関しては、彼らがの作品を多くの人に見てほしいと思います。障害云々ではなく、その作品が気に入られたかどうかでご覧になってほしい。もちろん、そのためには障がい者の方も、その親御さんも、障害があるからといって甘えたらだめだと思います。傷がい者だからしてもらって当たり前とか、それではいけないと思います。
 でもまず、ここへ来て知ってほしいです。彼らを取り巻く生活はまだきびしく、なかなか自立して食べていくところまではいかないと思いますが、彼らが楽に暮らせる社会は、他の健常者の方はもっと楽に暮らせる社会であると思います。

藤山てるよ「さる」


藤山千枝子さん(右)、伊田昌義さん


「ネットワーク神戸」では21人が働いている

アートホールWA

神戸市兵庫区中道通9-1-5
078-575-8801
開館 10:00~18:00 月曜休館
利用料 一週間50,000円