9月号
ぶらり私のKOBE散歩 Vol.19
「ウツミシュラン」三ツ星店を歩く
内海芳宏 Utsumi Yoshihiro
「神戸らしくて美味しいお店、なおかつ1,500円以下で」という方針のもと、内海さんが10年前から独自にまとめている『ウツミシュランガイド』。神戸グルメを世界に発信しようと英語で書かれたガイドは、副知事や神戸税関長、地元を愛する神戸市民や海外にもファンが多い。その中からよりすぐりのお店をご紹介いただいた。
美味くて安い、長田の鮨の名店「魚勝(うおかつ)」
長田の町のブランディングに携わる内海さんは、「長田は“神戸の京都”と呼ぶことができる、伝統が息づく町」と話す。例えばお正月には神戸最長の歩行者天国ができる長田神社界隈の元気な商店街。「海外の方が、浴衣を着て神戸の町を歩きたいと思えるようにしたい。舞台は長田がぴったり」と、「浴衣の町・長田」を海外にも発信中。
地元を愛する元気なお店が立ち並ぶ長田でも、「伝統と味が申し分なく、しかも庶民的な価格」と内海さんが一押しするのは長田商店街の「魚勝(うおかつ)」。60年続くお店の二代目店主・中島光隆さんとは長田のまちづくりの仲間でもある。一番の名物「穴子」は、今日はきゅうりと味噌を海苔で巻いて食べる「磯巻き穴子」でいただく。本鰹と昆布のだしに、旬のマツタケがぜいたくに入った「土瓶蒸し」や日替わりの前菜盛り合わせなど、どれも新鮮な地場の食材を手間ひまかけて調理する、和のおもてなしを堪能した。
■鮨・割烹 魚勝
TEL.078-576-3432
神戸市長田区五番町8-1-15(地下鉄・高速長田駅西2番出口すぐ)
営業 11:00~14:00 16:00~21:00 (LO 20:30)
火曜日及び第3または第4水曜日休
カウンターで食べる神戸のカレー「SAVOY(サヴォイ)」
メニューは「ビーフカレー」のみ。あとは大盛りか普通か。玉子のトッピングがあるのみ。
センタープラザ東館地下にある現在の場所で26年。震災を経て、多くの人々に愛されてきた。オーナーの村田麗子さんが5年ほどかけて考案したカレールーは、16種類のスパイスと、たまねぎ、にんじん、セロリ、トマト、お肉を約2日間かけて煮込む。「煮込み料理はバランス、バランス感覚の良い人は良い料理ができる。ま、人生すべてがバランスやけどね」と、村田さん。
一早く開港した神戸は、「古くから当たり前のように“おとなりが外国人”という文化だったので、生活様式がおしゃれなんですよ。うちの親父は夕食にもパンを食べるような人でしたから」という内海さん。美味しい洋食店や各国料理店が多い神戸でも、この「サヴォイ」のスパイスの効いたカレーは、「代表的な神戸の味」と紹介する。
■Dear old Curry SAVOY
TEL.078‐333‐9457
神戸市中央区三宮町1‐9
センタープラザ東館地下
営業11:00~19:00
イベリコ豚に生ハム… 独創的な蕎麦に出会う「水野」
続いてセンターサウス通りの麺所「水野」へ。東京の老舗蕎麦店の息子である店主・水野俊通さんが、神戸の人の口に合う味を作ろう、そして幅広い年齢層の人に蕎麦を食べてほしい、という願いから試行錯誤して生み出したのが、「伝統製法から生まれる創造そば」。北海道や長野など時期によって最良の産地から取り寄せたそば粉で打った蕎麦、かつおぶし、さばぶしなどを毎朝炊いて作るめんつゆ、これらの基本を踏まえた上で、独創的な蕎麦のメニューが並ぶ。内海さんも大好物の看板メニュー「新東京蕎麦」は、黒毛和牛しぐれ煮、千切り大根などのトッピングと薬味でいただく。その他旬の食材を使った蕎麦(冷・温)が登場し、そのどれもがまず、見て驚く楽しさがある。例えば「鬼おろしとろろ蕎麦」は大和芋と鬼おろしがなんと蕎麦の下に敷いてあり、そばの上にはチコリーに乗った小海老と野菜の素揚げ、生ハムが配されている。人気の秋メニュー「きのこフォルマージュ」は、きのこ、チーズ、グリルチキン、ベーコンをせいろで蒸し、味わい深くなったところで温かいそばにトッピング。
お客様は若いカップルや女性客が多く、蕎麦の新しい世界が神戸から発信されていきそうだ。
■麺所 水野
TEL.078‐321‐3773
神戸市中央区三宮町2‐9‐2
営業 11:30~16:00/17:30~21:00(売切れ次第閉店)
※火曜日は11:30~16:00のみ
無休(年末年始除く)(地図は上記「SAVOY」の地図参照)
そごう神戸店新館地階の行列店「大井肉店」イートイン
神戸に住んだ外国人たちが牛肉を食べ、神戸ビーフの美味さが世界に広まっていったといわれる歴史の中で、牛肉店の老舗である大井肉店は創業以来100余年、現在も創業当時と変わりなく、熟練した職人が厳しく吟味し風味豊かな牛肉に仕上げている。そんな伝統ある和牛を、ぜいたくにも百貨店の店舗でいただけてしまうのが神戸。
そごう神戸店新館地階の「大井肉店」イートインコーナーは、お昼時の行列が途切れないほどの人気店。「大判うす焼き弁当」は、大判の黒毛和牛をさっと網で炙ってオリジナルのタレでいただく。タレは、たまねぎがたっぷり入ったオリジナルのステーキソース、焼肉ソース、スパイス、ポン酢から選べる。他にもサイコロステーキの「サイコロ弁当」(929円)、ぜいたくな「モモステーキ弁当」(2138円)などがあり、どれも人気で、売切れ次第終了だ。
■大井肉店 神戸そごう店
TEL.078-271-1229
神戸市中央区小野柄通8-1-8そごう新館地階
営業
平日 11:00~15:00/17:00~19:00
土日祝 11:00~15:30/16:30~19:00
(ラストオーダーは各10分前)
※ラストオーダー時間に関わらず、品切れ次第終了
【精肉コーナー】10:00~20:00
定休日はそごう神戸店に順ずる(年内無休)
お酒もお食事も雰囲気も美味しい
くいもんBar「月夜の夢兎」
カウンターでマスターとおしゃべりを楽しみながら、お酒を楽しむ人がいれば、テーブル席で定食を食べている人もいる。マスター・山下兼司さんは「お客様に笑顔で帰ってもらう」ことだけを考えていた結果、カクテル、ワインはもちろん、豊富な種類がそろうウイスキー、地酒、焼酎などのお酒や、おまかせパスタ、生姜醤油のオリジナル焼きそば、佐賀牛ステーキといったお食事のメニューも増えてしまったという。内海さんおすすめは裏メニューの「カレーラーメン」。カレーライスやパスタといったカレーメニューは大人気で、特にカレーラーメンは専用のカレールーを煮込んで時間をかけて作られる。
アコースティックやジャズ、打楽器などのライブも不定期に行われており、店内は熱気あふれるライブハウスに早変わりする。気さくな山下マスターの人柄か、初めて出会った人同士でもすぐに仲良くなれてしまう雰囲気があるバーだ。店名「月夜の夢兎」は、うさぎが自分の身を犠牲にしてお釈迦様をもてなしたという、インドの童話から。
■Bar 月夜の夢兎
TEL.078-578-5779
神戸市長田区四番町7-5-4 吉田ビル1F
営業 16:00~25:00
日曜日休
内海芳宏(うつみ よしひろ)
1966年神戸生まれ。日本真珠輸出組合専務理事、神戸マラソンブランディングストラテジスト、社団法人日本真珠振興会監事他。プライベートでは、KING RECORD登録作曲家、シャシャ オーケストラ ジャパン主宰、県立高校の弦楽部、大学軽音部等々でコントラバスの指導、楽器の製作も手がける。油絵作品はスウェーデン・マルメ市に作品寄贈。六甲山全山縦走では最若年にて2度制覇。神戸市長田区雲雀丘在住。