12月号
兵庫のモノづくりの素晴らしさを世界へ! 「KOBE LEATHER(神戸レザー)」プロジェクト始動!
世界的に有名な「神戸ビーフ」。その牛革「神戸レザー」を使った製品を、新しいブランド商品として紹介するプロジェクトが始動。神戸レザー協同組合では、今年4月にイタリアで開催されたミラノサローネで高い評価を得た小物製品をはじめ、次は皮革を使った神戸家具をもって国内、海外に「神戸レザー」を発信する。
―これまで、神戸ビーフの革は、皮革製品にはあまり向いていないということで有効に利用されてこなかったそうですね。
永田 神戸ビーフの皮革製品のブランド化をめざして結成されたのが、「神戸レザー協同組合」です。神戸ビーフの皮革の特質から多くの課題がありますが、神戸と兵庫県が誇るモノづくりの技術やデザイン力により一つひとつ課題を克服し、今回製品化することができました。
片山 今回のプロジェクトは昨年12月にスタートし、やっと市販品(市場向商品)ができたところで、先月、11月に東京でのILFT(インテリアライフスタイルリビング)で、国内での最初のお披露目にこぎつけました。
永田 今回は、小物が8点、家具を4点制作し展示しました。神戸ビーフの革でこんなにおもしろいものが作れます、ということを、製品としてモノを紹介できることは大きな意義があったと思います。
片山 神戸ビーフの皮革の流通に関しては、神戸ビーフ認定に関わる関係者の皆様にご協力頂きながらシステムの最終調整を行っている段階です。他社には真似できないトレーサビリティーを確立した革製品として、神戸ビーフの皮革は一枚ずつナンバリングされ、最終的にはどこのタンナーからどこの工場で作られたものか分かる様にするつもりです。そのあたりは神戸ビーフのお肉と同様に「神戸ビーフ」という価値に、「神戸レザー」も合わせられるようにまで持っていきたいと思っています。
―製品デザインのイメージはどのように描かれましたか。
山内 「神戸レザー」の特色としては、形状が記憶できることや、エッジのはっきりした凹凸が作れるというところにあるので、そういった特色を生かせるデザインがひとつにありました。このデザインで作られた、コインケースやカバンなどの小物は4月のミラノサローネ(イタリア)での試作品の展示では、かなり驚きをもって注目をされました。家具のデザインにおいて、ひとつのフォーマットとして意識したのは、神戸家具の歴史的な部分に代表されるような、神戸の文化のトラディショナルな部分を大切にしたいということです。この街の風景に合うイメージで制作していただきました。
池内 「神戸レザー」は、今までの革とはまったく別物で、ぼくの中では革というよりも「新しい素材」であると感じられるものでした。実験的な革でしたし、どうすればこの革がいちばん際立つのかはかなり悩み、試作をだいぶ繰り返しました。神戸家具を初めて見たときも「神戸レザー」を見たときも、「神戸の女性らしさ」というものを感じましたので、それを取り入れてデザインしました。また、使う人が入ることで形が生まれるということも意識しました。用途によって、好きに形を変えていただくということですね。
山内 形状記憶ができる革ということで、いろいろ作ってはみましたが、季節や温度の変化で記憶のレベルが違ったりする。そこでの遊びの部分を製品になるレベルに持っていけるか、成立するのかどうかの見極めも難しかったです。池内さんは海外からの評価も得ている家具デザイナーなので、バランス感覚によってとても良いものを作っていただけたと思います。
―これから、どんな製品を作りたいですか。
片山 今後、革に関わりのなかったデザイナーさんや作家さんなど幅広い人に使用してもらいたいと思っております。たとえば、先日は折り紙作家さんに作れるものはないかと素材提供させて頂きました。折り目が綺麗で、シワになりにくく、伸びる。紙とは違う特長を生かした作品を期待しています。「神戸レザー」という新しい素材は今まで革を使わなかった方々にも受け入れられていくと思います。
永田 今回は小物と家具ということで、片山さんとうちとで作りましたが、今後は、手袋やジャケット、帽子であったり、神戸と兵庫の皮革の産業、デザイナーさんとが関わっていけば面白いかもしれないですね。もっとも、「神戸レザー」は革自体の枚数制限がありますし、モノづくりを大事にして、正当な価格できちんと販売しなければいけないとは思います。
―兵庫県のモノづくりの魅力を発信する機会にもなりますね。
池内 「神戸レザー」は新しい素材といってもいいほどなので、皮革業界の方はびっくりされるのでは。新しい革の使い方を発信できるのではないかと思いますよ。
永田 ミラノで評価されたのは、このレザーのエコサイクルな部分も大きかったそうです。今まで使われてこなかったレザーに新たな商品価値を見い出したことが評価されました。神戸レザー協同組合では神戸牛のレザーの新たな価値を、サスティナブルにというところに目を向けた商品開発をしていきたいという願いがあります。神戸ビーフは食べるもので、皮革はその副産物ですが、「食べたら、使う」ということをテーマに掲げていますので、そのコンセプトが見えるブランドを作っていきたいと思います。
山内 日本には優れた技術がありますが、素材に対しての技術と作り方の部分と2通りがあります。「神戸レザー」に関しては、PRポイントとして革をなめす部分の技術力が最初に出てくるところが、他のブランドと違っているのではないかと思います。そのなめしの技術の部分と、神戸の職人のモノづくり技術が合わさった、「兵庫県のモノづくり」の素晴らしさを、ぜひ見ていただきたいと思います。今回のプロジェクトはデザイナーも、作り手も刺激を受けますね。
池内 レザーの製品というのは、日本だけでなく他にもたくさん産地がありますが、「神戸レザー」のような実験的なプロジェクトをするとお金も時間もかかるので、あまり挑戦する人もいないと思うんですよ。それを、日本の中でこういう実験的なことをしてモノを作り出すということ、そのハングリーさを見ていただければ嬉しいです。物があふれて飽和しているような時代に、どこも何をつくっていいかわからない、という中で、地方でお金も時間もかけてこういうものを開発しているということにも、価値があると思います。
―神戸と兵庫の新たなブランドとして期待しています。