4月号
神戸創生を考える|都心とウォーターフロントエリアを結ぶ
神戸の玄関口、三宮エリアの再整備が、神戸創生の大きなカギとなる。
さらに三宮エリアの人の流れを街全体へつなげていく。
神戸開港150年を控えたウォーターフロントエリアでも再整備が進む。
神戸の玄関口、三宮エリアからウォーターフロントエリアへの誘導
神戸の資源を生かした新たな都市部の創生を。その核となるのが、神戸の玄関口、三宮エリアの再整備。阪急電鉄とJR西日本は、神戸の玄関口、三宮駅ビルの再建を表明、それに合わせて、JR、阪急、阪神、地下鉄西神・山手線、地下鉄海岸線、ポートライナーを含む6駅を同じフロアで乗り換えができる共同コンコースの構想がもちあがっている。また、中・長距離バス乗降場を集約するため、ターミナルを中央区役所方面に拡張するという計画も発表されている。これらの公共交通アクセスの充実を中心に、回遊性を高め、人の流れを北野、元町、旧居留地、ウォーターフロントエリアへ誘導しようとしている。
ウォーターフロントエリアへの誘導に向けたプロジェクトが、28年度から本格化する。いち早く貿易港として栄え、神戸の玄関口となってきた新港突堤西地区は、明治40年から大正10年にかけて建設され、現在でも住友、三菱、三井の三大財閥の倉庫が建ち並び、繁栄を極めた頃の神戸の面影を残している。この倉庫群の南側、新港第1突堤から新港第4突堤が船着き場として利用されてきた。
日本国内初、世界の豪華客船を代表する「クイーン・エリザベス」が発着クルーズ
そのうち、新港第1突堤~第2突堤エリアは「観光・集客複合エリア」に区分され、第1突堤では2015年12月、「ラ・スイート神戸オーシャンズガーデン 神戸みなと温泉『蓮』」が誕生。和モダンをテーマにした都心型ホテルで、90室の客室をはじめレストラン、天然温泉浴場、フィットネスジム、エステなど多彩な機能を備えている。神戸の市街地で天然温泉を楽しめ、温浴施設だけの利用も可能であることから連日多くの賑わいを見せている。さらに南にはコンベンション機能も有しており、700人前後の会議や会合なども開催できる。また第1突堤から夜の神戸の街並みやハーバーランドを眺めると、その美しい光景に息をのむ。日本三大夜景に数えられる神戸の新たな名所として期待が寄せられている。
新港第3突堤~第4突堤エリアは、大型客船などが神戸に寄港する「海のエントランスエリア」。第3突堤では2014年には宮崎カーフェリーが就航を開始。三宮をはじめ神戸市街地への好アクセスという点も大きな魅力である。また近年、海外の大型客船が神戸港を寄港地に選ぶケースが増えており、第4突提のポートターミナルはその玄関口。新たに案内モニターを設置する他、インフォメーションブースや送迎デッキの改修などを進めている。
来春には、神戸開港150年を記念して、世界で最も有名な客船「クイーン・エリザベス」が、神戸で発着クルーズを予定している。これは日本国内初となる快挙で、その決め手となったのは、下船がスムーズで市街地までのアクセスの良さ等であった。また、28年3月に引き続き28年8月にも、全長347メートル、総乗客定員4905人を誇る世界最大規模の大型客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」も寄港する予定で、乗客が寄港地観光に使用するツアーバスは100台が必要となる。これだけのバスを受け入れる収容能力の高さも評価されたのだ。
新港第1突堤~第4突堤の北側に位置する新港突堤基部の北側は、「文化・創造産業複合エリア」。このエリアには、神戸モダニズム建築を代表する神戸税関が建つ。昭和2年に完成した二代目庁舎の姿をそのまま引継ぎ、船をイメージした神戸港の新しいシンボルとして威容を誇る。外装は花崗岩とタイル張りの重厚な造りで、貿易港・神戸港の象徴となっている。この歴史的建築物群に調和するような外観デザインで建築が予定されているのが、総合福利厚生施設。会議室や多目的ホール、イベント広場など多様なニーズに対応しており、港湾労働者をはじめ一般市民も利用でき、新港突堤西地区の新たな拠点として、来夏の完成が予定されている。
神戸開港150年記念イベントに向けたメリケンパークの再整備
新港突堤西地区のさらに西エリアでは、メリケンパークの再整備が進む。神戸開港120年を記念して整備されたこの公園も30年の月日を経た。機能性と緑化の両面を整備することで、賑わいを創出しようとしている。歩道幅を増やすことで歩きやすい動線を確保し、インターロッキング(舗装部分)は芝生広場に生まれ変わり、桜の木の植樹を増やし、環境の向上を図る。コミュニティースペースも充実し、機能性を高めるだけでなく、イベント開催時の収容人数も増やす。夜間景観にも配慮しており、LEDで公園全体を明るく照らすことで、治安の向上にもつなげる。
来年は、神戸開港150年の記念イベントが目白押しで、神戸メリケンパークが主会場となる。5月に開催される神戸まつりに合わせ、神戸港で働く方々の主催で音楽イベント「神戸開港150年音楽祭」を予定。7月の「海の日」の開催を目指して国に立候補中の日本最大級の海の祭典「海フェスタ」の主要会場にもなる予定。現在、日本を代表する帆船「日本丸」「海王丸」など10隻が集まる「帆船フェスティバル」の誘致も進む。
実りの秋のシーズンには、食のイベントを予定。異国文化を味わえる神戸の名店の屋台や神戸産の食材の販売などを、ハーバーランドからメリケンパークといった港を舞台に企画している。神戸から全国に広がった神戸発祥の食を通して、開港が神戸のまちの成り立ちの礎となっていることを認識してもらえると期待を寄せている。
ウォーターフロントのプロムナード整備
ウォーターフロントエリアの歩道拡幅を行うことで、歩行者が歩きやすく海辺を散策しやすくするという計画も進んでいる。中でも注目すべきは、新港突堤西地区とメリケンパークエリアをつなぐプロムナード。現状の通りのプロムナード化を図り、海辺を散策できるよう親水性に優れたデザインが検討されている。この二つのエリアが結ばれることで、東は震災復興記念公園からHAT神戸エリアへ。西はメリケンパークから中突堤、さらにハーバーランドエリアへとつながり、ウォーターフロントの“点”が動線で結ばれることになる。
現在、三宮エリアでは東遊園地の芝生化も計画されている。昨年、実験的に開催された「アーバン・ピクニック」では、公園の一部を芝生化することで多くの人々が訪れた。一定の成果があったことで、グラウンドの完全芝生化に向けて大きく前進している。三宮エリアは、私鉄各線へのアクセス、さらに新幹線や神戸空港へのアクセスにも至便、ショッピングなども便利であることから、三宮エリアに住まいを求める人々が増えている。そんな都心に暮らす人々の“憩いの場”として、東遊園地は生まれ変わろうとしている。
かつて貿易の要衝として栄えた新港突堤西地区でも、業務・商業・集客・住宅などの複合機能をもった都市開発計画がもち上がっている。三宮エリアからウォーターフロントエリアへも “暮らしの場”が広がろうとしている。神戸は、時代とともに生まれ変わろうとしている。