7月号
ぶらり私のKOBE散歩 女が深みにハマる新開地
西島陽子 Yoko Nishijima
<新開地まちづくりNPO PR担当>
「新開地ファンを増やそう」と願い、女性限定の新開地ツアーなどを企画してきた西島陽子さんに新開地を案内していただきました。かつては文化発信の中心地であった新開地。「歴史のある場所なので、お店はいろいろな物語を背負っている。そんなまちの魅力にとりつかれ、私もどんどん深みにハマっていっています」と、西島さんは話します。
西島陽子(にしじま ようこ)
1973 年生まれ。アパレルメーカー勤務ののち、在日外国人支援やコミュニティビジネス支援系NPOを経て2005 年新開地まちづくりNPOの広報・PRに。ミニコミ『アレッ!新開地』、小冊子『ザ・シンカイチツウ』、WEB『新開地ファン』など、情報発信にかかるディレクションのほか『新開地映画祭』の企画、『ザ・シンカイチツアー』のガイドも務める。妊娠出産のため2011年5月退職。フリーランスに。現在も、新開地まちづくりNPOのPR担当を務めつつ、まちづくりプランナーとして各地で活動。日本PR協会認定・PRプランナー。
歴史が溶け込んだ『一平』のデミグラスソース
「その街を代表するお店を紹介することで、街の魅力が紹介できるんです」という西島さんがまず訪れたのは、おなじみ『グリル一平』。特製のデミグラスソースを使ったオムライスやハイシライスが名物です。西島さんが好きなのは海老クリームコロッケ。かにのコロッケはほかにもあるので「海老で美味いもんを作ろう」と初代の職人さんたちが試行錯誤したコロッケです。
現在の主人・山本隆久さんのお祖母様が昭和27年に創業した『一平』。神戸一の職人を集めたそうで、「代々の職人さんたちは本当に腕が良く、勉強熱心でした」と話す山本さんご自身は、阪神・淡路大震災後、お店を愛してくれるお客様、そして一緒にがんばってきた料理人さんたちに励まされお店を継ぐ決心をしたそうです。一平で修行した職人さんがそれぞれに独立し洋食店を開くことも多く、山本さんの息子さんも三宮店で一平の味を守っています。「新開地でも最近は若い人が飲食店をオープンしたりしていて、嬉しいことです」と話す山本さんの優しさに、神戸の“洋食文化”の源流を見た気がしました。
■洋食 グリル一平
TEL.078-575-2073
神戸市兵庫区新開地2-5-5-203
11:30~20:30(L.O.)
毎週木曜、第三水・木曜連休
レトロな店内で味わう深煎りのネルドリップコーヒー
黒光りするテーブル、細工の凝ったソファのフォルム、使い込まれた床。これぞ新開地、といった雰囲気の『喫茶エデン』。昭和23年創業、船のキャビンを造る会社が、内装を手がけたのだそうです。お父様からお店を継ぎ、ご自身もコーヒー豆のメーカーで働いた経験のあるマスター・堺井太郎さんが淹れるコーヒーは、粗挽きで深焼きの豆をネルドリップで入れた、力強いボディの味わい。「コーヒーの味も、サンドイッチの味も、すべて創業当時からの、父から受け継いだ味」と堺井さん。カレーや定食といった食事ものは出さない、喫煙も可能、一杯のコーヒーでゆっくりくつろいでほしい、という純喫茶の伝統を変わらずに持ち続けています。
西島さんが案内する新開地ツアーでは、レトロで味のある店内で、プロのカメラマンに撮影してもらい“女優気分”に浸るのが人気。気さくな堺井マスターと交流し、すぐに常連さんになってしまう人も多いそうです。
■喫茶 エデン
TEL.078-575-2951
神戸市兵庫区湊町4-2-13
8:00~18:00(日曜、祝日は午前中のみ)
無休
おでんと季節の味で乾杯 !「高田屋京店」
大きなおでんと季節のお料理が自慢の「高田屋」。昭和6年に創業し、名物大将と女将の鈴木さん夫妻が長く店に立っていましたが、今年で創業85周年。3代目の鈴木拓矢さんが後を継ぎ、女将さん、元気なお姉さんたちとともにお客様をお出迎え。
赤銅鍋で煮立つおでんのだしは、創業以来受け継ぐ鰹と塩、砂糖のみの味わいで、だしの継ぎ足しは震災で一時途絶えたものの、そこからまた20年、歴史を重ねています。湊川の原どうふ店の焼き豆腐、牛すじ、大根などは白みそで、とろけそうなロールキャベツはケチャップでと、オリジナルの食べ方も人気です。「手作りと季節感」にこだわっており、今や他店では一年中見られる枝豆や焼きナスは高田屋では夏限定の味。新鮮な魚介メニューや天ぷらをはじめ、チーズつくねやホタテバター炒めなど新メニューも続々登場しています。「午前中のまったりした感じも好きなんですよね…」と西島さん。昼過ぎからグラスを傾ける古くからの常連さんに加え、最近では若いお客様もどんどん増えているとか。
■高田屋京店
TEL.078-575-6654
神戸市兵庫区湊町4-2-13
11:00~21:30
日曜・祝日休
今も昔も文化の発信地・新開地の顔「新開地劇場」
かつては映画館や演芸場が立ち並び、関西を代表する文化の中心地であった新開地。「新開地劇場」は、昭和21年に実演劇場としてオープン、往年の映画スターや歌手たちが多数出演してきました。震災後には、大衆演劇専門劇場として再スタートし、連日、歌とお芝居のステージが華やかに行われています。
「何といっても男前な俳優さん、美しい女形が次々に出演されるので、ツアーに参加されたお客さんたちもすぐにハマってしまうんですよ」という西島さんも、今ではひまさえあれば劇場に足を運ぶほどファンに。「大衆演劇は毎日ちがった演目が行われますし、ステージの合間には厳しいおけいこをされています。といってもかまえずに笑って楽しみながら見られるのが大衆演劇ですから、皆さんにも気軽に訪れてほしいです」。神戸で唯一の大衆演劇の劇場は「まちの顔でもある」と西島さん。今日も力強く文化を発信しています。
■新開地劇場
TEL.078-575-1458
神戸市兵庫区新開地5丁目2-3
昼の部12:00~/夜の部17:30~(入替制)
《料金》大人1800円、老人1600円
小人1200円(3歳~小学生)
新開地のお店にはそれぞれに“物語”がある
2005年、新開地生誕100周年の年に、PR担当として新開地まちづくりNPOに迎えられた西島さん。当時はどちらかといえば男の人の街、という新開地のイメージを変えようと企画したのが、女性限定のツアーでした。「実際に街を歩き、お店の人とお話をし、お料理を味わうことによって、雑誌やテレビで見るだけでは伝わらない魅力を発見していただけるのだと思います」。この7月で10周年を迎えるツアーは、毎月一回開催、リピーターお断りにも関わらず受付当日は電話が鳴り止まないほどの人気。他にも、女性限定の「ラブ&エロスシアター」などの名物企画のある映画祭、神戸最大の野外音楽祭となった新開地音楽祭、アート縁日、新開地寄席など様々なイベントを企画。
「まちづくりで大切なのは、地道に魅力を発信し続けて、ファンを増やしていくことだと思います」と西島さん。広報活動のおかげで、「新開地の雰囲気がずいぶん変わってきましたよ」と話す店主さんもたくさんおられました。
その他 西島さんおすすめのお店
■福進堂総本店
瓦せんべいでおなじみの「福進堂」。やわらか焼きや夏期の水ようかんなど名物がありますが西島さんが大好きなのは「和三盆のロールケーキ」。
9:00~19:30 無休
■麻雀 平和荘
建物がレトロでかっこいい…という西島さんおすすめ(?)の雀荘「平和荘」。8月の「夏の社会見学会」では『初めての麻雀』教室を開催。
10:00~24:00 木曜日休
■春陽軒
手作りの豚まんはみそ味のあんともっちりした生地。辛みそとソースをつけて食べるのがおなじみ。お持ち帰りのみのシュウマイもおすすめ。
10:30~売切れ次第終了 日曜休
<新開地イベント情報>
新開地夏まつり
8月1日(土)11:00〜 (雨天決行)
会場:新開地商店街一帯
体験教室、ゲームコーナー、縁日、音楽ステージなど家族で楽しめる夏まつりです。
新開地夏の社会見学会
8月1日(土)・2日(日)
講師陣は各店のオーナーやスペシャリスト。
「B面の神戸・新開地」各店のこだわりに触れる奥深〜い講座です。
神戸新開地アート縁日
毎月第2土曜日 11:00〜16:00(雨天中止)
会場:湊川公園ガーデニング広場
※8月は夏まつりと同時開催(第一土曜日)となります
新開地寄席
5月以外の奇数月の第3日曜日
会場:新開地まちづくりスクエア
入場料:1,500円(要予約)
詳しい情報は・・・
http://www.shinkaichi.or.jp/
■ご予約、お問い合わせ
新開地まちづくりNPO TEL.078-576-1218