2016年
8月号

企業経営をデザインする⑧
「本物のおいしさ」を追い求めて50年

カテゴリ:グルメ, スイーツ・パン,

株式会社エーデルワイス 代表取締役会長 比屋根 毅 さん

アンテノールやヴィタメールなど人気ブランドを展開する洋菓子の名門、エーデルワイスが創業50年を迎える。沖縄、石垣島から裸一貫で出て、一代で業界屈指の企業を築いた比屋根会長にさまざまなお話を伺った。

風雪を耐えて咲く

─創業50年のご感想は。

比屋根 50年も経ったのかなというのが実感ですね。過ぎてしまえばあっという間でした。いろいろとあった辛いことが、転じてプラスになったのでしょう。重ねた失敗があって、今があるのです。

─社名の「エーデルワイス」にはどのような思いが込められていますか。

比屋根 エーデルワイスはスイスの国花で、岩場で風雪に耐えながら真っ白い花を咲かせます。事業を始めるにあたり、忍耐強く頑張らなければならない。そして全く白紙の真っ白の状態から始める訳です。エーデルワイスの花はまさにその象徴なのですよ。耐えて頑張っていれば信用がつくだろうと、社是は「忍耐と信用」と定めました。

─創業前、修業時代にはどんな思い出がありますか。

比屋根 当時のお菓子屋は、お店がなかったんですよ。午前中に製造して、昼から売りに行くのです。最初は得意先がないから、飛び込みで営業です。売れ残ったら捨てますが、勿体ないので先輩の売れ残りも引き取って、自転車で戎橋へ行き売りました。武道を教えていましたので、道場の仲間が空手着のまま応援に来てくれて。新聞紙を折って箱をつくり売っていましたが、お客さんもそれで何も言いません。良い時代でしたし、無茶な時代でしたね(笑)。

困難が成長の糧

─1966年に独立されますが、そのきっかけは。

比屋根 1年間のうち3ヶ月間は暇をくださいというのが勤務先との契約でした。毎年7月から9月は東京などいろいろなところに武者修行に出て、自分なりに「こういう店にしたいな」と思い描き、それを勤務先に話をしました。でも、今すぐにはできないと断られ、自分でやるしかないと。もうひとつは、秋田でおこなわれた菓子博覧会で、大阪城の天守閣を50分の1サイズで製作したのです。27万円を費やし、55日間現地で泊まって製作し、それが一番の賞を取ったので今度は自分の城をつくろうという気持ちになりました。27万円というのは今の300万円くらいの価値があったのではないでしょうか。しかも、自腹ですからね。中途半端な気持ちではないですよ。実は独立資金だったので、独立時は全然なしでした。

─武者修行の思い出は。

比屋根 3年間、東京の一流店の一番厳しいところに行きました。1日3時間しか寝られなかったですね。それ以外は働いている訳ですから、3ヶ月で1年分のことが吸収できます。そして厳しいところには必ず愛情があります。給料をもらいませんでしたから、家は大変でしたよ。それを家内が辛抱してくれました。

─寝食を惜しんでまで洋菓子を極めたいという思いは、どこから来るのですか。

比屋根 やはり差別から来るものもあったのではないでしょうかね。僕が来た頃、沖縄は完全な外国でしたから。「内地の人には負けないぞ」という思いはあったのかもしれません。

─独立後も大変なことがあったのではないでしょうか。

比屋根 いよいよ会社が危機という時期もありました。家内と息子と娘の前で、「僕の経営手腕がないばかりに迷惑をかけて悪い。君らは君らでしっかりやっていけ」とまで言いましたよ。僕は「大過なく」という言葉が大嫌い。「大過なく」ということは何もしていないのと一緒です。いろいろあるからこそ成長するんですよ。

シンプルこそ極意

─よく「本物のおいしさ」とおっしゃいますが、それはどのようなものですか。

比屋根 63年間菓子一筋に生きてきて、「本物のおいしさ」を一言で言い表すのは非常に難しいですけれど、売れ続けているものはそうですよね。一番難しいですけれど、シンプルな味ですよ。素材を生かしたシンプルな味のものが本物です。シンプルなものほど難しいのです。

─アンテノールというブランドにはどんな思いが込められていますか。

比屋根 やはり、もっと良いものをつくりたい。職人として最高のものをつくりたい。ですからフランチャイズではなく、自分の目の届く範囲で展開したのです。それは職人ならではの目線でしょうね。ビジネスとしてはフランチャイズの方が展開しやすいですよ。しかし、フランチャイズ全店撤退を決意してアンテノールにシフトしてきました。ネーミングは、戦いで血を流さずに勝利を得たギリシャ神話の武将の名前「アンテノール」からとりました。これから戦いが始まるという気持ちも込めて。ロゴは槍を持たせていましたが、勝利を得たので今は旗を持たせています。

─ヴィタメールもまた人気ブランドですね。

比屋根 ヴィタメールはベルギーの王室御用達のブランドです。昔は世界を代表するパティシエがみんなヴィタメールから出ていたのですよ。1店舗だけにこだわって、百年以上伝統の味を守っているヴィタメールに、10年以上通い詰めた僕の情熱に応えてくれたのでしょう。技術提携を結び、2号店を阪神百貨店にオープンしましたが、言葉では言い表せないくらい嬉しかったですね。その次の店を出すまでにさらに10年かかりました。それは、毎年何人かの職人を3ヶ月から1年ベルギーの工房に派遣し、しっかりと実力を身につけさせたためです。現在は全国で21店舗、主力ブランドに成長しました。

不可能を可能に

─洋菓子ミュージアム設立のきっかけは。

比屋根 本物の歴史を残したいという思いからです。また古い道具に触れることが勉強になります。古い本もたくさんありますが、紐解くことによって昔のレシピを知ることもできます。コレクションは7~8千点くらいあります。今もヨーロッパでどんどん集めてもらっていますが、1万点くらいになったらぜひ神戸にミュージアムをつくりたいですね。ショップや学校も併設するのが理想です。スイーツの街・神戸のイメージアップに結びつけば良いですね。

─これからパティシエを目指す人にアドバイスを。

比屋根 絶対に焦らないことですね。ドラマのようにうまくいくものではありません。じっくりとしっかりと技術を身につけることです。

─最後に、次はどんなチャレンジがありますか。

比屋根 年内、遅くとも来年にはフランスにショップをつくりたい。また、洋菓子の研究所や学校もつくりたい。実は具体的に話は進んでいて、ショップはパリでオープン予定です。50年というひとつの節目になるような大きなチャレンジですね。来年で80歳になりますし、50年を機に退いてゆっくりしようと思っていたのですが…これは死ぬまで走り続けるのだろうなと(笑)。「この世に不可能はない」という精神を忘れずに、夢を追い求めていきたいですね。

エーデルワイス/昭和41年(1966)創業

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確かな技術は衰えを知らない。 多くのパティシエを育て上げた

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エーデルワイスの職人30名が力を合わせて1ヶ月かけて作り上げた大作、ピエスモンテ「ロイヤルウェディング」

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50分の1サイズの大型帆船「日本丸」を、砂糖と卵白で再現。 全て食べられる素材できている

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ベルギー王室御用達のチョコレートブランド「ヴィタメール」

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神戸・北野生まれの洋菓子ブランド「アンテノール」

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1913年、フランス・ブルターニュ地方で誕生した「ル ビアン」

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焦がしバターとアーモンドの深い旨味をしっとりととじ込めたフィナンシェ(ノワ・ドゥ・ブール)

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フランス・ブルターニュ地方の伝統的焼き菓子専門店「ビスキュイテリエ ブルトンヌ」

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2014年に念願の「エーデルワイス沖縄」を創立。写真は「ショコラ・マカダミアサブレ」

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パン作りに欠かせない5つの要素のフランス語の頭文字をとって命名したパンブランド「Felts(フェルツ)」

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洋菓子にまつわる貴重なコレクションを有する。今後、世界に誇れる総合洋菓子ミュージアムの設立を目指す

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祝祭を祝う特別なクッキー(スペキュロス)を型取るための木型

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クグロフ等の銅製の菓子型

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チョコレートやアイスクリームの型

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●JR立花駅より徒歩で20分 ●阪急電車塚口駅より市バス13系統「阪神尼崎行」尾浜西口より徒歩5分 ●阪神電車尼崎駅より市バス13系統「阪急塚口行」尾浜西口より徒歩5分

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●阪急電車塚口駅より市バス13系統「阪神尼崎行」尾浜西口より徒歩5分
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■エーデルワイスミュージアム

株式会社エーデルワイス本部センター
兵庫県尼崎市尾浜町1-3-22
見学予約受付 ☎06-6426-8399
※予約制のため、入館希望日の一週間前にご予約ください。
見学日時は、ご希望に添えない場合がございます。

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比屋根 毅(ひやね つよし)

1937年、沖縄県石垣市生まれ。1966年、株式会社エーデルワイス創業。2002年、同社代表取締役会長。一般社団法人兵庫県洋菓子協会会長、日本洋菓子協会連合会副会長を歴任。2014年9月、株式会社エーデルワイス沖縄設立。全国菓子技術コンテスト内閣総理大臣賞はじめ、国内外での受賞多数

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