2016年
8月号
「兵庫築嶋人柱祈祷の図」一寿斎芳員画

兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第三十回

カテゴリ:文化・芸術・音楽

中右 瑛

経が島建設と松王丸の悲劇

清盛は遷都挙行より10年も早くから福原に移り住んで、国際交易港を造るため、海を埋め立て、人工島・経が島の建設に取りかかった。今の兵庫・築島あたりという。
しかしこの計画はあまりにもスケールが大きく、それに難工事であった。台風や災害で事故が相次ぎ、築地の土が台風や大雨のたび流され、また工事人足が思うように集まらず、工事中断もたびたび。
生田の森あたりで旅人たちをかどわかしては、強制人足に使ったり、その場しのぎの工事であった。
工事に支障があるのは、何かの祟りではないかと、側近たちは言い出した。
「悪霊を祓うためには祈祷がいい」
「いや、人柱が必要だ!」
安全祈願のため、人柱を立てることになり、誰がその犠牲となるのか。
「旅人をかどわかし、それを人柱にすればいい」
と誰かしこから言い出した。しかし、罪なき人を犠牲にすることは、あまりにも惨いやり方。
それを聞いていた大勢の中から、一人名乗り出た者がいる。
「私が人柱になりましょう」
名乗り出たのは、清盛の侍童・松王丸だった。祈祷のあと、松王丸は犠牲となった。苦渋の選択であった。
松王丸とともに経典を添えたので「経が島」と名付けられた。兵庫・築地寺には、今も松王丸の菩提が祀られている。
このように計画遂行のためには、多くの人民の犠牲が強いられた。世に「悪逆無道の清盛」と呼ばれたのも、そのためである。がしかし、この経が島の建設だけは後世に残る大偉業であると『平家物語』で褒め称えている。いま神戸が国際港都として反映しているのも、先達・清盛がいたからである。

「兵庫築嶋人柱祈祷の図」一寿斎芳員画

「兵庫築嶋人柱祈祷の図」一寿斎芳員画

『松王物語』のさしえ北斎 「清盛像と松王児童像」を悼む

『松王物語』のさしえ北斎 「清盛像と松王児童像」を悼む

■中右瑛(なかう・えい)

抽象画家。浮世絵・夢二エッセイスト。1934年生まれ、神戸市在住。行動美術展において奨励賞、新人賞、会友賞、行動美術賞受賞。浮世絵内山賞、半どん現代美術賞、兵庫県文化賞、神戸市文化賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰など受賞。現在、行動美術協会会員、国際浮世絵学会常任理事。著書多数。

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