11月号
音楽のあるまち♬13 シンプルな言葉をメロディーにのせ、そっと心に寄り添う
音楽家
こいずみ ゆり さん
9月29日、東日本被災地支援チャリティ・コンサート「いのりの花束11th」がカトリック神戸中央教会で開催された。透き通った歌声で温かいメッセージを届け続ける、こいずみゆりさんにその思いをお聞きしました。
―音楽との出会いは?
子どものころからピアノを弾いたり、中高ではブラスバンド部に入ったり…それほどの目的意識もないままに音大に進みました。卒業後は自宅でピアノを教えながら、頼まれた時には作詞・作曲をしていました。
―本格的に歌うようになったきっかけは?
2010年、神戸新聞ギャラリーで開催された「マザー・テレサ生誕100年記念写真展」です。テーマソングの依頼をいただいて作った「大好きなマザー・テレサ」「Something beautiful for God」をオープニングセレモニーで歌い、その後も自分で歌ったりみんなで歌ったり。その頃3年間、キリスト教系の雑誌にも毎月オリジナル曲を発表していましたので、「メッセージ性のある歌だから自分自身の声で歌ったらどうですか」と勧めていただくようになりました。
―声楽が専門というわけではなかったのですね。
音大でクラシック曲の発声法は習いますが、わたしのオリジナル曲は言葉を聴き取っていただけるようにポップスよりの発声法で歌っています。
―言葉にはどんな思いを込めておられるのでしょうか。
私自身が何度も大病に見舞われるなど挫折を繰り返してきた経験から、決して「頑張れ!」「立ち上がれ!」という強くて直接的な励ましではなく、悲しみや苦しみに寄り添いたいという思いです。ですから、シンプルな言葉しか使っていません。実は使えなくて…同じような言葉ばかりが出てきているんです(笑)。
―金子みすゞの詩にもメロディーを付けておられますね。
20年ほど前、曲を作る気力もなかったころ、「金子みすゞの詩集を読んでみたら」と勧められました。その存在すら知らなかったのですが、読んだとたんに何か自分の気持ちと通じるところ感じ、すぐにメロディーが浮かんできました。
―被災地支援コンサートを始めたのはなぜ?
決して立ち上がれないと思っていた私をたくさんの方が励ましたり、寄り添ったり、方向性を正してくれたり、一緒に遊んでくれたり…まるでパズルのように組み合わさって元気にしてくださいました。今度は私がピースの一つになろう!と「いのりの花束」を始め、いつの間にか11回目を迎えていました。
―他にも震災復興支援に関わっておられるそうですね。
映画「わすれない ふくしま」のエンディングテーマ曲として「虹」を提供させていただきました。また、外で存分に遊べなくなった福島の子どもたちを毎夏神戸に招き地元の子どもたちと一緒に遊ぶプロジェクト「ふっこうのかけ橋」のテーマソング「Let’s cross the bridge!」を作りました。福島や他県の学校でも歌われています。
―つらい思いをしている人たちにどんなメッセージを?
マザー・テレサは悲惨な状況で苦しみ悲しんでいる人たちを目にしながら、その奥深くにある光や愛を見ていました。私を含め誰もが天変地異が起きると動揺してしまいますが、目の前にあるものの奥に豊かなものがあるというメッセージを、歌を通して伝えられたらいいですね。
―これからもずっと神戸で?
私は神戸で生まれ神戸で育ちました。これからも大好きな神戸の街で歌を作り、各地のコンサートや学校、病院、チャペルなどで歌っていきたいと思います。すでにネット配信も行っているので、ますます世界にメッセージが伝わればいいなと思っています。