2016年
7月号

Power of music(音楽の力)
第7回

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 音楽・舞踏

作曲家は楽譜を聴く『実はローカルな西洋音楽』

上松 明代

 遡ることおよそ8年。私が作曲を学び始めた頃、せっせと書いた曲を聴いて貰いたく複数の作曲の先生に「聴いて欲しい」とお願いしたところ、全ての先生にこう言われた。「楽譜が見たい」。音より楽譜。当時は「音を聞いた方が分かるのでは」と疑問だったが今なら分かる。楽譜を見たいという真意が。
 一般的にクラシック音楽とは西洋音楽のことを指す。ヨーロッパの教会を中心に発展した音楽のこと。現在クラシック音楽は一つのジャンルとなり、グローバル音楽として認知されているが、元は西ヨーロッパという地域における民族音楽なのだ。では何故、クラシック音楽が世界的に広まったのか。要因の一つに【五線譜】の存在が挙げられる。
【五線譜】は音を機能的にそして緻密に記録出来る(楽譜を書くための一定条件を記譜法と呼ぶ)。西洋音楽には記譜法に則り楽譜を書き、音符を音に変えるという大原則があったため、数百年前の作品が今も変わらず残っている。では他の国(地域)はどうだろう。例えば日本音楽。日本古来の楽器である龍笛や尺八、三味線、お箏など、各々に譜面がある。しかし各々が独自の譜面を持ち、《日本音楽》という括りで統一された楽譜ではない。バリのガムラン音楽のように譜面に残すという概念がない民族音楽も多い。
 楽譜(記譜法)は実に合理的だ。楽器は異なれ、五線譜で読む音符は同じ。だから世界的に楽譜というツールが広がり万国共通のものとなった。
 後世に残る音楽は縦(ハーモニー)と横(メロディー)の線の均整美が素晴らしい。音源だと一度聴いただけでは細部までわからない。しかし楽譜を見ると一目瞭然。途端に頭の中で音楽が流れる。そうか!作曲家は楽譜で音楽を聴いているのかぁ〜。納得!
 18・19世紀のヨーロッパでは、クラシック音楽は特権階級の人々が楽しむ知的自慢芸術でもあったわけだが、元を正せばローカル音楽。「神戸と言えばジャズ。クラシック音楽は敷居が高い」とおっしゃらず、気楽に、そして気軽に楽しんで。

20160707102

上松明代(フルート奏者・作曲家)

武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。
オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

  • 電気で駆けぬける、クーペ・スタイルのSUW|Kobe BMW
  • フランク・ロイド・ライトの建築思想を現代の住まいに|ORGANIC HOUSE
〈2016年7月号〉
兵庫県医師会 新会長インタビュー 「県民のみなさまのために日本の医療を守りたい」…
「集中力の大切さ」 千 宗室 <茶道裏千家 家元>
創業75周年の歴史から「創新」で次のステージへ 橋本 覚 <株式会社神戸マツダ …
華麗なるデザインの原点も展示 神戸マツダファンフェスタ2016
芦屋山手のフロントラインを歩く④ 珈琲 麓(ろく)
芦屋山手のフロントラインを歩く③ グランドフードホール
芦屋山手のフロントラインを歩く② ワインハウス センチュリー
芦屋山手のフロントラインを歩く① 京料理 たか木
先人たちが夢見た地 東山町・東芦屋の洋館とその背景
里山から邸宅街へ 芦屋と東山町周辺の歴史
ー扉ー 芦屋山手のフロントライン 「東山町」 その 一
自由な発想を空間に生かす
ガゼボショップが提案する“上質なくらし”①
第1回 神戸洋藝菓子ボックサン
「西神飯店」 「神源」誕生秘話 ①
Kamine Watch Jam! vol.4 2016.7.31 SUN 今年…
有馬歳時記|有馬グランドホテル
NEWS 神戸百店会|「ゴンチャロフさんちか店」
連載エッセイ/喫茶店の書斎から② コーヒーカップの耳
兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第二十九回
神戸鉄人伝 第79回 和田 行雄(わだ ゆきを)さん
Power of music(音楽の力)第7回
連載コラム 「第二のプレイボール」 |Vol.17
神戸のカクシボタン 第三十一回 幅広い芸で活躍するお笑いコンビ「ボルトボルズ」
早くて安い!神戸空港からひとっ飛びの旅!! |神戸〜札幌の飛行機旅(前編)