2013年
3月号

みんなの医療社会学 第二十七回

カテゴリ:医療関係

医療と健康・スポーツ

─健康スポーツ医とはどのようなものなのですか。
松田 スポーツを楽しむあらゆる人のために、健康増進や維持に関する指導、生活習慣病の予防・治療のための運動療法の処方、学校保健や産業医活動の中での健康・運動に関連する指導をおこなう医師に与えられる資格制度で、平成3年に日本医師会が設置しました。この資格を得るには、日本医師会のおこなう運動に関する25項目・1500分の講義等を受けることが必要です。更新は5年ごとで、この間に健康スポーツ医学再研修会5単位以上の受講と健康スポーツ医としての実践活動が更新条件となります。
─健康スポーツ医制度の設置にはどのような背景がありますか。
松田 平成22年に文部科学省は「スポーツ立国戦略」を策定し、ライフステージに応じたスポーツ活動を推進するため、安全にスポーツを親しむことができる生涯スポーツ社会の実現、環境整備を謳っています。また厚生労働省は、国民の健康増進の総合的な推進を図るため、基本方針として「健康日本21(第2次)」を平成24年に策定しましたが、この中に国及び地方自治体と健康増進を担う人材としての「健康スポーツ医」との連携が明記されました。このような流れの中、日本医師会は、健康スポーツ医制度のさらなる発展を推進しています。
─健康スポーツ医の活動状況について教えて下さい。
松田 学校では腕が完全に挙上できない、しゃがみこみができないなど「からだが固い」こどもが全体の2割近くいるとの報告があります。職場では近年、身体と心の両面での課題を抱えている人が多く、健康診断では、およそ50%が何らかの異常所見を有しているとも言われています。このような学校、職場での問題や課題の解決に、健康スポーツ医の活躍が期待されています。地域では、行政がおこなう特定保健指導への参画や各地で行われるスポーツイベントでの救護活動に出務しています。第2回「神戸マラソン」大会では、参加者の安全を確保するために医療救護専門の部会である「メディカル協議会」が何度も開催され、私が会長を務めましたが、兵庫県医師会員の健康スポーツ医や医療関係者の方に大勢参加いただきました。また、障害を持った人も自主的かつ積極的にスポーツに取り組めるよう、パラリンピックや知的発達障害者のスポーツの祭典であるスペシャルオリンピックを支援する活動が、健康スポーツ医を中心に進められています。
─スポーツの現場では、どのような事故が多いのでしょうか。
松田 スポーツは健康づくりに役立つものですが、近年、自らの健康を保つためスポーツを積極的に行っている方が増え、平成21年の内閣府「体力・スポーツに関する世論調査」によると週1回以上運動・スポーツを行う成人の割合は45%、週3回以上は24%となっています。しかし、スポーツは諸刃の剣で、正しい知識のもとに行われないとさまざまな障害や事故を招き、場合によっては死亡することもあります。スポーツによる死亡事故例では、各年代を通じて心臓血管系によるものが最も多くみられます(表1)。
─スポーツ中の事故を防ぐにはどうすればよいですか。
松田 市民マラソン大会では約5万人に1人の割合で突然死が発生し、その多くが肥大型心筋症などの既往症をもっていたとの報告があります。まずは運動前にきっちりとしたメディカルチェックを受けて、体調に見合った運動を心がけましょう。足や膝などの運動器に故障を持った人は悪化する可能性もありますので、健康スポーツ医の指導や診察を受けましょう。
─近年、市民マラソンがブームですが、参加する場合はどのような点に注意すべきでしょうか。
松田 近年、ジョギングやランニングをする人の割合が増加しており、約800万人がこのスポーツを楽しんでいると言われています。しかし、マラソンに何のトレーニングもなしに参加するのは無謀です。レース中に自力で救護所を訪れる人の多くは、練習不足などによる筋痙攣や筋肉痛、疲労です。また大会当日の気温が低ければ寒気や震えなど低体温症をおこし、高ければ熱中症の危険があります。エイドステーションでの水分などの補給が上手くいかないと脱水症を起こしますし、長時間の運動によるエネルギー不足、低血糖なども心配されます。レースに参加するには、メディカルチェックを受けた上で専門的な知識を持って練習することが必要です。健康スポーツ医の資格を持った、身近なかかりつけ医のアドバイスを受けることをおすすめします。

松田 聡 先生

兵庫県医師会理事
医療法人 明視会 理事長

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