2013年
5月号

神戸市医師会公開講座 くらしと健康 68

カテゴリ:医療関係

「痛み」といっても種類はさまざま
まずはその原因を取り除くことが大切

―一口に「痛み」と言いますが、いろいろ種類があるのですか。
松井 まず、痛みがどこから起こるのかという点から分類してみます。交通事故で鞭打ちになった例を使って説明しましょう。鞭打ちになって筋肉や靭帯を損傷して痛みを生じた場合、それは「侵害受容性疼痛」といい、筋肉や靭帯にある痛みのセンサー(侵害受容体)に刺激が加わって生じる痛みです。一方で首の神経に傷がつき、それにより痛みが出るならば、「神経障害性疼痛」といいます。この場合は神経に沿った範囲で痛みが出て、手にゆく神経なら手が痛みます。状況によっては両方の痛みが重なることがあり、それは「混合性疼痛」といいます。さらに、交通事故では「なんで自分がこんな目に」と嘆いたり、加害者を腹立たしく思ったりすることがあります。このような悲しみや怒りのような心の動きで痛みが生じたり増強したりすることがあり、これは「心因性疼痛」といわれます。
―それらの痛みの治療法は違うのですか。
松井 普通によく使われる消炎鎮痛剤は、打撲や捻挫などの侵害受容性疼痛には効きますが、神経障害性疼痛には効果が少ないのです。最近では神経障害性疼痛に有効な薬がありますので、以前より治療効果が上がるようになりました。また心因性疼痛に対しては、鎮静剤が有効な場合があります。飲み薬以外にも、ブロック注射や関節注射なども時には非常に効果的です。しかし、もっとも大切なことは痛みの原因を取り除くことです。例えば、筋肉の痛みであればリラックスさせたり逆にストレッチをしたりして筋肉の柔軟性を確保して血流を改善させます。靭帯損傷であれば固定して靭帯の修復を待つ、あるいは手術で切れた靭帯をつなぐ、などです。神経の圧迫で痛みが出ているならば、手術で圧迫を取り除きます。怒りや悲しみがあるならば、それが軽減するような精神的なサポートをする、といった具合です。ただし、ガンの場合は、原因を取り除くのは困難であり、通常の消炎鎮痛剤でも効果が不十分なので、モルヒネなどのオピオイドといわれるものを使います。オピオイドは、脳にある痛みを感じる部分に働いて、痛みを和らげるものです。最近では慢性疼痛にも使われるようになっています。
―慢性疼痛というのはどういうものですか。
松井 打撲や捻挫、ぎっくり腰などはあるきっかけで急に痛みが出るので、急性疼痛と言います。それらの急性疼痛は、きちんと対処すれば数日から数週間すれば痛みはほぼ無くなります。これに対していろいろな治療をしても長い間(おおむね3ヶ月以上)痛みが続いているものを慢性疼痛と言います。骨が変形して起こる腰痛や膝関節痛、あるいは手術後に残った痛みなどがあります。これらで通常の消炎鎮痛剤では効果不十分な場合や副作用のでる場合には、オピオイドが有効なことがあります。
―痛みの治療で注意すべきポイントを教えてください。
松井 では、痛みの治療でよくある疑問や誤解をQ&Aでご説明しましょう。

Q 痛みというものは全て取り去ったほうが良いですか。
 腰痛や関節痛などのように日常生活に支障のあるものは軽減していったほうがよいですが、なかには体の危険信号としての痛みもあります。例えば心筋梗塞で出現する胸痛、安静を必要とする骨折の痛みなどです。このような場合、痛みが無ければ治療の機会を逃してしまいます。
Q 痛み止めはなるべく飲まないようにして、どうしても我慢できない場合だけにしたほうが良いですか。
 時々痛みがでるといった場合には痛いときだけ飲むといった方法(頓服)もありますが、取るべき痛みは我慢せずに取ったほうが良いことが多いのです。痛みを残すと、場合によっては慢性の痛みになることもあります。また、痛み止めによっては炎症を抑えて、治癒を早める効果があります。
Q 痛み止めは、効果があれば長く飲んでも大丈夫ですか。
 通常の消炎鎮痛剤は長期間服用すると胃腸障害を起こしたり、腎機能低下をきたしたりすることがあります。自覚症状がなくても医師にきちんと相談し、副作用のでないように薬を出してもらいましょう。

痛みの原因による分類


松井 誠一郎 先生

神戸市医師会理事
瀬川外科院長