2013年
5月号

北野ガーデン古典芸能イベント 芝能 桜舞の宴を開催

カテゴリ:文化・芸術・音楽

北野坂の閑静なガーデンレストラン、北野ガーデンにて4月10日、恒例の古典芸能イベントが開催され、桜舞の宴と題し芝能がおこなわれた。
北野ガーデンが誇る美しい庭園も今宵は能舞台に。演目は「隅田川」。春の隅田川といえばうららかなイメージだが、ストーリーは真逆、花の散るような無常の物語だ。
子どもを人買いにさらわれた女が狂気となって我が子の行方をたずね歩き、はるばる東国、隅田川の渡船へ。そこで旅人の問いに答え渡守が、川向で一年前に人買いに連れられてきた梅若丸という子どもが病死したのを地元の人たちが不憫に思い供養しているのだと語るが、その子こそ女の探していた子どもとわかり、嘆き悲しむ。女が墓の前で念仏を唱えると梅若丸の亡霊が現れるも、手を取ろうとすると消えてしまう。気づけば我が子と見えていたのは塚の上の草だった…。
感情を繊細な動きで表現したのはシテ(女役)の上田貴弘氏。ワキ(渡守役)の江崎敬三氏、ワキツレ(旅人役)の松本義昭氏ともども脂ののりきった演技に、観衆はすっかり魅了されていた。また、梅若丸の亡霊を演じた子方の江崎太朗くんも迫真の演技。どこかに隠れていきなり現れた演出にはみな驚いたであろう。鼓や笛の音、地唄とも、抑揚を重ねながら物語を導き、舞台には何もなくとも場面場面が目に映るようであった。
人間無常の花盛り。無常の嵐音添い─。地唄がそう謡ったとき、六甲からの冷たい風がにわかに強まり、葉擦れの音も哀れさを演出。残念ながら桜は盛を過ぎて花びらが舞うだけの、少し肌寒い夜であったが、それゆえに悲哀の物語はより引き立ったのかもしれない。
素晴らしい舞台のあとには、さすがは北野ガーデンと唸らせる美味にあふれたビュッフェ料理が。参加者もワイン片手に、優雅なひとときを過ごした。
次回の芝能は10月2日(水)の夜、演目は「葵上」。源氏物語ファンも必見だ。

北野ガーデン

TEL 078・241・2411
神戸市中央区北野町2-8-1
http://www.kitano-garden.com/

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