2014年
11月号
今上天皇(当時皇太子)御成婚記念事業として昭和42年に完成した須磨離宮公園

造営100年 武庫離宮と須磨

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 観光

造営100年 武庫離宮御殿に思いを馳せる

神戸市立須磨離宮公園は、1967(昭和42)年に開園しましたが、その前身は、天皇のご宿泊を主目的にした皇室の別荘「武庫離宮」でした。
1914(大正3)年に離宮が完成してから、今年で100年にあたります。

今上天皇(当時皇太子)御成婚記念事業として昭和42年に完成した須磨離宮公園


 風光明媚で、温暖な須磨の地は、明治期から大正にかけて、別荘地として栄え、日本一の商社であった鈴木商店の鈴木よねや、川崎造船を創設した川崎正造らの邸宅のほか、多くの異人館や高級別荘が建ち並んでいました。シルクロード探検で有名な西本願寺の大谷光瑞も、資料の整理や研究のために、月見山に別邸を建てました。
 武庫離宮は、その西本願寺月見山別邸と、隣接する土地を宮内省が買収して造営されました。現在は北須磨小学校などがある西側も、離宮の一部であり、背後の山林も御料林とされていました。この地が選ばれたのは、眺望のよさと、良質の水源があったためといわれています。敷地は、道路(現在の県道・神戸加古川姫路線)を境に、東側と、西側の厩舎地とに分かれており、天井川の上流に水源地を設け、浄水施設で水を浄化して御殿へ水が供給されていました。総ひのき造りで二階建ての御座所、須磨の海や風景、月を眺めるために、前庭の西側には展望台である物見台(現在ではバルコニー部分が残る)、東側にはあずまや「傘亭」が造られました。
 離宮内の御殿は、1945(昭和20)年3月の空襲により多くが焼失してしまいましたが、それまでの約30年間、大正天皇・皇后両陛下や昭和天皇(当時は皇太子)、ラストエンペラー・溥儀皇帝らもご利用されました。
(参考資料:「須磨離宮物語」神戸市立須磨離宮公園発行)

写真提供:神戸市立須磨離宮公園

二階建ての御殿


御殿内部


謁見所


車寄せ


市民の木「クスノキ」は樹齢100年以上、離宮造営前からのもの


神戸市立須磨離宮公園に離宮の面影を訪ねる

山と海に囲まれた自然の立地を生かして造営された武庫離宮の跡地に、神戸市民の憩いの場として建設された神戸市立須磨離宮公園。
自然豊かな公園内には、当時の離宮の面影を残すものが、いくつか残されています。
山村治園長に、当時をしのばせる営造物を案内していただきました。

今も残る「中門」「潮見台」
 離宮当時からの正門(両脇の太い石門と亀甲形の石積みが当時のもの)を入り、まっすぐにゆるやかな坂道を上って行きましょう。離宮時代は、一般の謁見者はこの「馬車道」を通って御殿に向かいました。「このゆるやかなカーブは、当時のままです」と、山村園長。馬車道を上りきったところ、市民の木である大きなクスノキの向こうに、中庭をぐるりと囲む白壁の中門があります。この中門は、空襲による焼失をまぬがれた、武庫離宮当時の門。その奥が、私邸、つまりプライベート空間となります。御殿はすべて焼失しましたが、唯一残されているのが物見台の名残りである石造りのバルコニー。現在は「潮見台」と名付けられており、「かつてはここから、須磨寺、旗振山、そして須磨の海を見渡すことができる絶景スポットでした」、と山村園長は紹介します。
 さて、この潮見台を下から眺めてみましょう。正門を入ってまっすぐに行かず、右に行くと、庭園を設計した福羽逸人が海外から購入して植えたという印度杉(ヒマラヤスギ)をはじめ、木々が茂っています。「市街地から天皇がおられる御殿が見えてしまうのは恐れ多いと、福羽が多くの木々を植え、視界を防いだそうです」と山村園長が言う木々のあいだから、大きな岩、その上にバルコニー(潮見台)が見え隠れしています。「これは、ライン川にある古城を見上げた風景を連想させます。崖を思わせる大きな岩はいくつかの岩を組み合わせた装石です」とのこと。ぜひ潮見台は、下からも見上げてみてほしい。
 中門広場にはオリーブの木が植えられていますが、これも庭園設計者の福羽にちなんだもの。福羽は新宿御苑や京都御所など皇室庭園を手掛け、フランス・ドイツなどに留学経験があり、海外の園芸・造園技術などを日本に紹介した人物でもありました。海外の宮殿では観賞用の植物だけでなく、オリーブやレモンといった食用の植物も育成し、晩餐会などで供されていることから、武庫離宮にも100本ほどのオリーブが植栽されていたといいます。福羽は、現在流通するイチゴのルーツである福羽イチゴ、岡山のマスカット、小豆島のオリーブ栽培など、さまざまな花、木、野菜、果物の育成・研究において足跡を残しています。

当時のままのカーブの馬車道


御殿より庭園をのぞむ


神戸市立須磨離宮公園 山村治園長


曲線を描いた洋風バルコニー跡の潮見台


潮見台横の崖上石柵(石造手摺)


離宮所縁の地には案内板があります


正門西側の大きな石柱(写真左側)が離宮当時の門


11月に見ごろを迎える「王侯貴族のバラ園」

 神戸市立須磨離宮公園といえば、関西屈指のバラ園が有名。大阪湾を一望できる南斜面の地形を生かし、変化に富んだ噴水と芝生、色とりどりのバラが調和した整形式庭園でもあります。終戦直後、1946(昭和21)年には進駐軍が接収し、射撃場として使用されていました。
 現在は武庫離宮であった歴史に由来し、日本の皇室をはじめ、海外の王室、芸術家などの名前がつけられた品種を集めたバラ園になっています。秋はバラの開花シーズンで、低い気温の中でじっくり花を咲かせるバラは、香りが濃く、色合いにも深みがあるのが特長。
 レストハウス前から庭園の向こうに須磨の海をのぞむ場所は、園内の絶景スポットのひとつですが、月見の名所として親しまれてきた須磨の歴史を感じる場所といえば、庭園の南東にある「月見台」です。光源氏のモデルとされる在原行平も月見を楽しんだ須磨の地。武庫離宮にも、御殿から月の出る方向に、月見のためのあずまやが建造されていたとか。そのあずまや「傘亭」は、宮内庁蔵の設計図をもとに再現されて建っています。
月見台からは「晴れた日には西は淡路島、東は和泉葛城山と金剛山が見渡せます」と山村園長。眼下にはマンションや宅地が増えましたが、遠く眺める山々や島は歴史を感じます。
 園内には自然の中のアスレチックやレストランなどもあり、歴史を感じながらも家族で楽しめる施設がいっぱい。11月中旬からは紅葉シーズンを迎え、期間限定の夜間開園、ライトアップなども行われます。ぜひご家族でお出かけください。

王侯貴族や芸術家の名前がつけられたバラが花を咲かせる


上りやすいよう一段一段互い違いに組まれた石の階段


園内各所にある石灯籠も趣がある


有事の際の避難路として造られたという馬蹄型の隧道(トンネル)


現在の噴水広場は戦後、進駐軍の射撃練習場となっていた


「月見台休憩所」からの眺め


離宮当時の傘亭


青銅製の柱だけが残されていた傘亭は、市民活動により復元された


神戸市立須磨離宮公園

TEL.078-732-6688
●入園料/大人400円 小中学生200円
●開園/9:00~17:00
●休園/木曜日(祝日の場合は翌日)
●駐車場/300台収容(乗用車500円・二輪車100円)
●アクセス/電車・バス:山陽電車「月見山」駅下車、
バラの小径徒歩約10分

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