7月号
大学に見る名建築 ① 神戸女学院大学
芸術的な学舎でキリスト教的教育を育む
(1) 礼拝や入学式、卒業式が行われる講堂
(2) 4階建ての図書館。天井の鮮やかなステンシルが目を惹く
(3) 1933年、キャンパスが移転する際、ヴォーリズが設計し
(4) 講堂や図書館をはじめ12棟が重要文化財に指定されている
(5) 講堂の隣に建つソールチャペルでは、卒業生らのウェディングも執り行われる
(6) 天窓から光が射し込む、講堂の横の廊下
(7) 岡田山の豊かな自然に囲まれ、緑と一体化したキャンパス
(2)(3)(4) 写真提供:神戸女学院
(1)(5)(6)(7) 撮影:吉永真理子
平成26年(2014)、神戸女学院の校舎12棟が、「重要文化財神戸女学院」の名称で国の重要文化財に指定された。指定の対象となったのは、講堂及び礼拝堂、図書館ほか、正門及び門衛舎を含む、ヴォーリズが設計した12棟すべて、キャンパスのほぼ全体にあたる。
設計者ウィリアム・メレル・ヴォーリズは、明治38年(1905)に来日した米国の建築家で、大阪心斎橋の大丸や旧豊郷小学校の校舎など、今に残る名建築を多く手がけた人物として知られる。明治8年(1875)に、キリスト教主義にもとづいた女性のための学校として神戸の山本通に創立された神戸女学院は、昭和8年(1933)に現在の岡田山へ移転した。ヴォーリズの夫人・満喜子の母校ということで、特別な思いを込めて設計にあたったといわれている。建築様式は、クリーム色の外壁に赤銅色の瓦を葺いたスパニッシュ・ミッションスタイルで統一されているが、徹底したこだわりによって、一つひとつの建物ごとに、細部に至るまでデザインが異なっている。日本各地に残るヴォーリズ建築の中でも、傑作のひとつといわれている。
ヴォーリズは、芸術的な学舎は教育に良い影響を与える、という価値観をもってキャンパスの設計にあたったと伝えられる。第二次世界大戦と阪神・淡路大震災を耐え抜いて、ほぼ創建当時のままの形を保ち、多くの卒業生たちの愛校心の拠りどころとなっている。ここでは、ヴォーリズが建築によって実現しようとしたキリスト教主義教育が、現在も受け継がれている。
神戸女学院大学
西宮市岡田山4-1
TEL.0798-51-8536