2016年
4月号
4月号
Power of music(音楽の力)
第4回
第4回
サウンドスケープ 『耳を澄まして聴くということ』
上松 明代
【サウンドスケープ】。日本語では【音風景】と訳される。1960年代にカナダの作曲家である、マリー・シェーファーが提唱した比較的新しい概念である。簡単に説明すると、「音楽に留まらない、全身で感じる音・気配・雰囲気をも含めた、形あるものや見えるものを超えた音世界」のこと。第四回音楽の力はこれまでとは違う観点からのアプローチです。
めまぐるしい日常の中で、聞こえてくる音は、工事現場、車の往来、エアコンの室外機・・。しかし神戸は都会でありながら山と海が間近にある自然豊かな街。耳を澄まして音を感じる絶好のスポットが沢山ある。その中の一つ、新神戸に位置する布引の滝。
上流から雄滝、夫婦滝、鼓滝、雌滝の四つの滝を総称して「布引の滝」と呼ばれるが、下流の雌滝から最寄りの駅である新神戸まで徒歩十五分程度なのに、もう都会の喧騒は跡形もなく消える。水が勢いよく水面を打つ轟が木霊する。春には様々な鳥のさえずりが景色を彩り、枝葉のそよぐ音が心落ちつかせる。滝から伝わる水の振動、水飛沫の冷たさ、風が肌を優しく撫でる感触。
音を意識し、環境の中で風景として捉える。そして音により今、自分はどのような影響を受けているのか。是非考え感じてみてほしい。
ベートベンは山に住む鳥のさえずりを聴き『ヴァイオリン協奏曲ニ長調』第三楽章の冒頭のメロディーを書いた。クラシック音楽作品には自然界の音を捉え、輝くメロディーに変貌させることがある。やはり耳を澄ましてこそ得られる自然からの贈り物。
ちなみにマーケティングの世界では【サウンドスケーピング】と称される戦略が存在するが、それはまた別の機会に。
春うらら、陽射しに柔らかな温もりを感じられる季節。さぁ、自然に繰り出して耳を澄ましてみよう。