4月号
社員の情熱と連帯が 真っ赤に実った甘いトマト
「木ゴコロファーム」では、レタスなどの水耕栽培に加え、このたびハウスでのトマトの栽培をスタートしました。我々は前々から食料の問題には関心を寄せていて、良い形で何かできないかずっと思い描いてきました。また、本業に万一のことがあった際の雇用の確保も考えていました。あわせて、高齢化が進んでいくので、年を重ねても働けるような場づくりも課題としてきんたんですよ。
一方で、地方では過疎が問題になっています。過疎になると土地や建物は、所有者がいても使い手がいなくなってしまうのです。空き家もそうですが、人の手が入らないから、耕地も山も荒れてしまうのですよ。ですから我々が荒廃しないよう、代々伝わってきたせっかくの財産を使えるようなあり方も模索していたのです。
そこで思いついたのが、トマト栽培です。
トマトハウスの土地は、もともと私の父が水田として購入していたところなんですよ。しかし、山に近いので条件が良くなく、担い手もいないので稲作に使われていませんでした。さらに、野菜工場で働く社員にトマト栽培に興味を持っていた者がいて、彼を巻き込んだら面白いのではないかと。
しかし、もともと私どものお客様には農家の方も多いので、既存の農家とバッティングすると不協和音が起きてしまいます。そこで出会ったのが、今回取り組んでいる特殊なトマト栽培です。露地栽培とシーズンをずらして出荷することで、近隣の農家さんとの競合を避けつつ、差別化も図れます。
土地があり、人材があり、ノウハウも見通しが立った直後に、コロナ禍になりました。本業がリスクに遭遇したとき、その中でどういう風に変わっていくか。常日頃から考えていたことが、コロナによって社会的な課題となり、副業としてのトマト生産の重要性も増してきたのですよ。しかも我々が持っている資産、人材、技術、情報を最大限活用できるビジネスモデルとして、ぴたりとはまったんです。副業でリスクを分散すると言いながら、過大な投資により新しいリスクを抱え込むのは矛盾していますので、新しいことをはじめるにあたり、自社のリソースを生かすことは大切なことです。
そして、仕事にはチャレンジが必要です。チャレンジしないと面白くないじゃないですか。いまの時代、企業が発展するにはIoTの活用へのチャレンジも非常に大きなポイントだと思います。今回もIoTを活用する仕組みを試みます。例えば、画像処理により栽培予測や病気・害虫の発生予測がどこまでできるか、AIによる集配プランの最適化など、鉛筆と紙に頼らないシステムづくりにも取り組んでいきたいと思います。
まだ収穫がはじまったばかりですが、とにかく甘~いトマトです。販売開始してまだ1週間ですが非常に好評で、きのうも道の駅で完売したそうです。
社員も、ハウスの建設ももちろんですが、設計担当が販売計画を立てたり、広報担当が販促チラシをつくったり、ショップも社員が交代で運営したり、社員が新しいことを経験する場ができたという意味でも良かったと思います。会社のみんなが寄ってたかって、知恵を出し、汗をかき、いろいろと携わっていく。そうする中で会社としての一体感、社員の連帯感が生まれています。このリスクの大きい時代を乗り切るために、それはとても重要な要素ではないかと思います。
これからも木ゴコロファームの挑戦は続きます。この秋には、甘~いトウモロコシがたわわに実ると思いますよ!
(取材日 2021年3月10日)