9月号
フランスのエスプリを日本へ|日仏商事株式会社
日仏商事株式会社
代表取締役社長
筒井 潤さん
―日仏商事設立の経緯は?
筒井 フランスで焼かれているおいしいフランスパンを日本でも焼きたい、というパン職人たちの熱意に賛同して、私の叔父にあたる前社長がそのために必要な原材料や機械を輸入する会社を立ち上げました。当時叔父と交流があったドンクさんとの合弁会社でした。
―当時は、フランスの商品といえばファッションや化粧品などが主流でしたね。
筒井 弊社が「食」を専門的に扱うことにしたのは、ドンクさんと一緒になって始めたということもありますし、今でこそ日本で市民権を得ているフランスの食文化は当時、まだ珍しい存在で、目新しかったということもあります。
設立翌年に開催された大阪万博では多くの商品を紹介して好評いただきました。それまで大阪の貿易会社に勤めていた叔父は輸出のノウハウを持っていましたので、当初は輸入事業と並んで出身地のニューカレドニアをはじめ、タヒチ、レユニオン島など仏領への日本製品の輸出も多く扱っていました。
その後、食の多様化が進み、フランスの食文化も日本で認知度が高まって、それら商品の輸入にシフトしていきました。中でも製菓・製パンに特化するようになったのです。
―製パン材料は主にイースト菌ですか。
筒井 日本にもイースト菌はあるのですが主に砂糖や乳製品の入る食パン用が主です。ですから当社は砂糖を使わないバゲット用に世界シェアトップのルサッフル社ドライイーストをフランスから輸入しました。現在も同社製品を扱い、ドライイーストでは日本でのシェアトップです。当社は主に業務用卸ですが、卸先が小分けにしてスーパー等で一般向けにも販売されています。
―製菓材料としては?
筒井 冷凍フルーツやマロン製品を中心に、チョコレートやフルーツ缶詰など多くのアイテムを扱っています。
―女性の製菓技術者(パティシエール)限定「ボワロン杯」も今年で10回目を迎えたそうですね。
筒井 日本にはパティシエールが多いということで冷凍フルーツメーカーのボワロン社と一緒になって始めた製菓コンテストです。毎年設定されるテーマにそってフルーツを使ったお菓子が参加者によって作られます。優勝者は副賞として贈られるフランスへの研修旅行を通じて現地のトレンドを肌で感じてもらっています。コンクール後に、独立開業したパティシエールもいますし、年々レベルの高まりを感じています。
―日仏商事が輸入する商品は、ご自身でフランスへ行って見つけてこられるのですか。ご苦労もあるのでしょうね。
筒井 当社のパリ事務所でも常時良いものを探していますし、私も年に何回か食品フェアなどに出かけるようにしています。自分でも試食してみますし、パティシエやパン屋さんに味見していただいたりします。昨今は競合も多く、中々「これだ」という商品を見つけることも昔に比べて少ないですが、苦労というよりは、楽しんでやっていると言うほうが正しいと思います。
―日仏商事のビジネスとして3つの柱を掲げられていますが、「食品」以外の「機械」「研究開発」とは?
筒井 機械は主に業務用として使用されるヨーロッパ製の優れた器機を輸入販売しています。大小いろいろありますが、例えばオーブン。フランスのパンは日本の食パンのように鉄板ではなく、石床の上で焼きますから、フランスパンを焼くためには必要です。
研究開発の基本は製菓・製パンのノウハウをお客様に提供することです。主に本社および東京事業所に併設されている研修スペースで開く講習会です。当社の技術者が先方の工場へ出かけて指導したり、お客様からの要望で新商品の扱い方を紹介することもあります。食品、機械、研究開発が一体となって活動しています。
―日仏商事が神戸に本社を置いた理由は?
筒井 まず、地元だということ。そして港がありますから、輸出入には便利で、自然な流れだったと思います。
―これからの日仏商事は?
筒井 他では扱っていない良いものを他社に先駆けて紹介するというのが当社のモットーです。フランスでは地方へも出かけて、お菓子やパンでちょっと変わったものや新しいものを見つけて日本に紹介できればいいなと思っています。
筒井 潤(つつい じゅん)
日仏商事株式会社
代表取締役社長
1951年4月神戸生まれ。
幼少の頃、父親の仕事の関係でフランス領ニューカレドニアに渡る。1973年帰国。
1975年日仏商事入社。2007年、代表取締役社長に就任し、現在に至る。