6月号
やがて、 いのちに変わるもの。
三木市でぽん酢やめんつゆなどの調味料に、納豆も製造しているミツカングループ。広大な工場敷地28万平方メートルのうち、16万平方メートルをビオトープとして利用し、地域の人たちと協働で自然を守っている。先進的な取り組みが注目される三木工場を訪ねた。
―長い歴史を持つミツカンですが、三木へやって来た経緯は?
前田 ミツカングループは、1804年に創業し、酒粕を発酵させて作っていたお酢が、江戸の握り寿司に使われて「美味しい」と評判になったのが始まりです。関西での第一号工場は明治37年に操業開始した尼崎工場です。消費地大阪に近いという理由もありますが、灘の清酒会社から酒粕をいただいていたという関係もあったのではないかと思います。その後、尼崎工場を閉鎖し、大阪府枚方市に、大阪工場を操業し、現在も稼動しています。平成19年に、西日本の調味料と納豆の最新鋭の工場として、交通網が整備され豊かな自然に囲まれた三木市で竣工しました。この辺りは、酒造米・山田錦の産地です。工場からの排水は、浄化して水田に供給しています。できた山田錦が酒造会社に行き、その副産物でできた酒粕から大阪工場でお酢を造り、そのお酢が三木で造る調味料に使われています。灘の酒造りとは不思議なご縁ですね。
―敷地半分以上がビオトープということですが、何故、工場敷地内にビオトープを? どういう構成になっていますか。
前田 山林を造成して造られた工場ですからできるだけ自然を残し、工場と自然が共生できるような開発をしようとしました。
里山活用と整備のエリア「里山公園」を始め、棚田跡、畑、新池、ため池、湿地で構成され、貴重種保護を目的としてあまり人の手を入れないエリアもあります。
―管理はどのように?
前田 三木市や、お隣の三田市にある兵庫県立 人と自然の博物館にご協力いただき、「ミツカンよかわビオトープ倶楽部」をつくり、地域の住民の皆さんと一緒に管理しています。春夏秋冬、倶楽部の皆さんが中心になってイベントを企画するなど、楽しみながら自然を守る活動を行っています。
―工場ではミツカンのどんな商品を製造しているのですか。
前田 調味料を製造しています。かつお節から出汁をとり、醤油等の調味料を加えて、「追いがつおRつゆ」を始めとする、めんつゆを主に造っています。ほかにも、「味ぽんR」や「やさしいお酢R」などを製造しています。併設の㈱ミツカンフレシア三木工場では「金のつぶR」「なっとういちR」ブランドなどの納豆を製造しています。
―製品はどのエリアに出荷されているのですか。
前田 主に、中部地方から西、九州まで出荷しています。
―食の安心・安全への配慮はどのように?
前田 ミツカングループでは品質保証・品質管理の基準「MGQS」を定めています。それに準じて、原料、製造工程、製品の各段階で厳しくチェックをしてお客様に安全・安心な商品を提供しています。昨今問題になっているアレルギーや農薬、放射性物質などについても、弊社が責任もって検査を行ってから製造、出荷しています。検査は全て、分析値と社内基準を合格した官能検査員の味覚チェックと両方で実施しています。
―官能検査員の基準とは?お酢やお出汁に強い舌を持つとか?
前田 特別な味に強いというわけではなく、味の変化に気づく敏感さを持っているかが重視されます。
―新商品開発の際には、健康機能の研究もしているそうですね。
前田 愛知県半田市にミツカングループの研究所があります。主に食酢について健康機能の研究をして学会発表などしています。
お酢には様々な機能がありますので、ぜひミツカンのホームページ※をご覧いただければと思います。また、調理では、素材の色をきれいに、おいしく仕上げ、防腐・静菌効果などが役立つといわれています。
―健康のために今、お勧めの商品は?
前田 黒酢にはちみつや果汁を加えたお酢ドリンク。今年の春、女性をターゲットにした「ざくろ黒酢」を新発売しました。今、一番のお勧めです。
―これからの三木工場について。
前田 今後も地域の皆さんのご協力をいただきながら、地元密着型の工場づくりを続けていきたいと考えています。
―環境に配慮しながら、これからも体に良い商品を作ってください。ありがとうございました。
※http://www.mizkan.co.jp/company/health/
株式会社三木ミツカン 代表取締役社長三木工場 工場長
前田 晋吾さん
1965年大阪府生まれ。1988年京都府立大学農学部卒業。同年、株式会社中埜酢店(ミツカングループ)入社。営業、原材料購買、工場、生産管理、原価統括部門を経て、2011年8月より現職。