4月号
音楽のあるまち♬18 障がいのある人、ない人も、 みんなで一緒に音楽を楽しもう
音楽教室「Peko Music」代表
NPO法人 「あんだんて KOBE」理事長 和泉 裕子 さん
音楽教室を主宰しながら、障がいのある人たちの音楽活動を支援している和泉裕子さん。音楽を通してみんなが支え合う社会をつくりたいと、仲間たちと一緒に活動しています。
―音楽との関りは?
子どものころからピアノは習っていましたが、大学卒業後エレクトーンに興味を持ち、ヤマハ講師、ジャズピアニスト…と音楽活動を続けてきました。灘区への転居を機に複数コースの音楽教室を開いたところ、仲間が講師として集まってくれて、次々と人の輪が広がり五毛教室も開設しました。
―障がい者対象の教室が、あんだんてKOBEですか。
教室という位置づけではなく、上手になることより純粋に音楽を楽しむことを目指しています。20年近く前、ジャズ演奏をしていたころに誘っていただいた、障がい者余暇支援グループの「音楽くらぶ」から発展した、サークル的な「居場所」のようなものでしょうか。
―なぜ、ジャズプレーヤーが障がい者余暇支援を?
知的障がいのある姉がいましたので、母は親の会で会長を務め、特別支援学校や授産施設開設のために活動していました。無意識ですが私も気持ちがそちらの方に向き、結果的に音楽というツールを使って母の意思を継ぐことになったのだと思っています。
―お姉さまの存在が大きかったのですね。
とても音楽が好きで、私が習ったピアノの曲を聴いて覚えて、左手で適当に伴奏を付けて弾いてしまうんです。難しくなったら勝手に全然違う曲に移っていって、不思議と最後はちゃんと終わる(笑)。
―即興演奏ですね!
私に初めて即興演奏を見せてくれたのは姉かもしれません。私が実家を出てからも姉はずっとピアノや歌を楽しんでいました。今も根底には「姉が居たら楽しんでくれるかな」という思いがあります。
―どんなサークル活動を?
月2回、中央区の青少年会館に集まります。好きな楽器や歌を自由に演奏したり歌ったり。音楽を楽しめるようになると、毎日の生活で他のことに対しても興味を持って積極的になれます。変わっていく様子を見るのが嬉しくて、私たちも一緒に楽しんでいます。コンサート出演に向けてアンサンブルもやります。
―アンサンブルで一つにまとめるのは難しいのでは?
人前でパフォーマンスすることはみんな大好きです。それぞれが持つ個性と障がいの特性だけでなく、新たな個性を見出し、誰もがどこかで主役になれるようなアレンジや即興演奏によって、自信に満ちたすごくいい表情になります。中には、よしもとにハマっているお笑い担当もいます(笑)。
―スタッフにはどんな人たちが参加しているのですか。
バイオリン、ギター、パーカションなど、私の専門外はフォローしてもらっていますし、音楽療法士、臨床心理士や介護福祉士、大学の先生、学生さんなど、職種や立場は違っても音楽好きのスタッフが協力してくれています。私はもう年なので(笑)、若いスタッフに加わってもらって、これからのあんだんてKOBEを支えてほしいと思っています。
―昨年は大学院修士課程を修了されたそうですが、音楽療法を究めたのですか。
コミュニティ音楽療法と呼ばれている分野で、施設の中に留まらず地域社会の中で様々な人が音楽を通した交流をすることで、障がいへの理解を深め、互いに支援し合う社会を目指すというものです。音楽をはじめ芸術文化全般、医療や福祉、教育などあらゆる分野の専門家が企業や自治体とも連携し「コミュニティ音楽活動」として社会に根付かせていくのが最終的な目標です。
―今はまだ難しい?
この取り組みは盛んになってきています。4月27日に篠山市で開催される「とっておきの音楽祭」は障がいがある人もない人も、演奏する人も聴く人も街角のステージを楽しむイベントです。いつか神戸でもできたらいいな、と思います。一昨年から始めたあんだんてKOBE自主企画「はっぴぃ♡みらくるライブ」は出演者と観客が一体になれるコンサートです。
―Peko MusicとあんだんてKOBEの今後は?
Peko Musicでは障がいのある人もレッスンを受けています。社会が目指す方向と同じく二つの隔たりをなくすのが理想です。近々あんだんて主催のドラムサークルをまずはPeko Musicで開催する予定です。年齢、性別、障がいの有無に関わらず誰でも参加できる打楽器の即興アンサンブルサークル。こうした取り組みを少しずつ広げていきたいと思っています。