2月号
輝く女性Ⅱ Vol.9 篠原伯母野山デザイン 代表 コイケアカリ さん
インタビュアー・三好 万記子
人気料理サロン「ターブルドール」代表の三好万記子さんがホスト役となって、輝いている阪神間在住の女性にお話を伺うシリーズ。
おもてなし上手な三好さんとの対談から、どんなオイシイお話が飛び出すことでしょう。
今回、お話を伺ったのは…
篠原伯母野山デザイン 代表 コイケアカリ さん
私の仕事のルーツは、母のあたたかいシチューとパンの香り。
幸せな日の記憶を、一生の想い出にするお手伝いを…。
今回は金髪のショートカットがカッコいいアカリさんならでは!なクールなアトリエにお邪魔してお話を伺いました。ここはNY?パリ?と間違いそうなカッコいい空間は、実は築100年の古民家をリノベーションされたものだとか。様々な企業やブランドの魅力を引き出し、その場にいる人にワクワクした感動を生みだすお仕事をされているだけあって、アカリさんと一緒に過ごす時間は気持ちがぐんと高揚、時間を忘れるほど会話がはずみました。
…六甲山の麓、灘区の篠原伯母野山町のお生まれで、社名の「篠原伯母野山デザイン」もそこからとられたそうですね。
ええ、漢字だし、読みにくいし、戸惑われる方も多いのですが(笑)、この地名には「西日を浴び北風の当たらぬ日だまりの地」を表すという云い伝えがあるんです。まだ自分の進むべき方向性がはっきり決まっていなかった頃、六甲山の麓なのに六甲おろしの寒い北風も吹かない、暖かなテロワールに生まれ育った私だからこそできることをしたい!という想いを込めて、つけました。
…太陽いっぱいの土地で、どのような幼少期を過ごされましたか。
兄と弟と一緒に裏山に秘密基地をつくったり、アケビや野イチゴやツクシを摘んできて食べたり、カブトムシやクワガタを採りに行ったり。今、思うとたくさんの自然体験を通して、五感が研ぎ澄まされていったように思いますね。当時は六甲に「カナディアンアカデミー」があったので、海外の子どもたちとよく一緒に遊んでいました。彼らのファッションや、醸し出すインターナショナルな雰囲気に憧れを感じていたことも覚えています。
…パーティ文化に精通されているご近所の海外の方達のように、アカリさんのおうちでもホームパーティなどを開かれていたのですか?
パーティ等にあまり関心のない母親だったので逆に反面教師でパーティオーガナイザーの仕事に就いたのかな(笑)。そんな母が、私が小学生の頃、ある日、家に帰ると“さんちか”の「ブレッドダイニング グーテ」で買ってきたチーズパンを皿に盛り付け、シチューを作っていたんです。当時、晩御飯といえば、白飯&お惣菜という時代でしたから、なんだかいつもと違うなぁと。実はその日は母の誕生日で、母が自分で自分のバースデーパーティを開いていたんです。部屋中がシチューとパンのあたたかい香りに包まれた特別な時間だったのでよく覚えています。他にも友達が家に来た時に母が手作りのクッキーを焼いてくれたことも。そういうときの甘い香りや穏やかな空気感が幸せで楽しい記憶として残っています。すごく特別でなくても日々の暮らしの中での何気ない幸せな記憶って大切だなと。そんな大切な時間や空間づくりのお手伝いをしたいと思ったのが今の仕事につながっているかと思います。中学3年の時のアメリカでのホームステイや大学生の時の留学を通して、海外生活やパーティを体験したことも、今の仕事に役に立っているのかな、と思いますね。ただ最初からパーティや空間をプロデュースする仕事を目指していたわけではないんです。デザイン系でもアート系でもない普通の女子大を卒業して、何をしたいのか分からずにOLとして働きながら悶々とした時期もありました。若い時からライフコーディネーターの「マーサ・スチュワート」が好きだったこともあり、OLを辞めてテーブルコーディネーターの丸山洋子先生に師事し、技術を学びました。人が集うパーティでおもてなしするテーブルコーディネートという世界を知り、アドレナリンが噴出しました。自分がやりたい仕事はこれだ!と思い、その想いがテーブル上だけでは納まらないほど大きくなって(笑)、パーティ会場全体の演出も手掛けるようになり、気がつけば今に至るという感じです。
…その時々の状況に合わせて、自分のなかのワクワクした気持ちが高まる方向へと進んでおられますね。初めてお会いしたときは、エレガントな神戸女子という見た目で、テーブルコーディネートのお仕事をメインとされていましたね。
ヘアスタイルをガラリと変えたのは2年前。ライフスタイルがどんどん変化する中で、デコラティブな装飾やお皿を重ねて飾るコーディネートが、本当に自分らしいスタイルか考える機会がありました。自分を枠に押し込めているような感覚が少しあったんです。そんなときに海外からのゲストをおもてなしする空間で、“飾らないで飾る”ことをリクエストされて、考え方が変わったように思います。極限までそぎ落とすってどういうことだろうと。人にどう見られたいかではなく、自分自身ももっとシンプルにそぎ落とせば、もっと気持ちが楽になれるかも…。そう思うと、肩の力がスッと抜けて無理に自身を飾らなくなりました。
…クライアントに自分を理解してもらうためにもスタイルは大切な要素ですものね。金髪になられましたが(笑)、以前より穏やかな印象に変わられたように思います。2015年よりご自身のブランド「by akari」も立ち上げて今、ノリにのっておられますよね。
約10年前、雑誌『RSVP』のイギリスのカップケーキ特集に触発され、大阪、東京のカップケーキ店を巡ってリサーチしたレポートを、(株)ポトマックの金指社長に手紙として送り、どこにもないメッセージを伝えるスイーツを作りたいと切々と訴えたんです。そこからご縁があって、同社の仕事をお手伝いさせていただくことになったこともあり、独立するきっかけとなりました。わざわざ説明をしなくても、自然と人が笑顔になって会話が弾み幸せな気持ちになる時間と空間を創りたくて、紙という素材に出会いました。既製品ではなく、自由にデザインできるペーパーアイテムは、テーマカラーやオリジナリティを表現でき、また紙ならではの優しい質感がデコラティブになりすぎず、どんな空間にも活用できました。もっと面白いもの、特別なものを創りたくて、ダンボールという素材に出会い、ますます表現の世界が広がりました。
…今後の展開はどのようにお考えですか。
ここ最近、商業ベースで大きな空間のプロデュースをさせていただきました。今年は紙を活用したミニマムな世界に挑戦したいと考えています。小さな空間にサイズダウンした分、内容を濃縮して、実写化などテクニック的にも昇華させて新しい何かを生み出していければと。久しぶりにワクワクしたチャレンジ意欲にあふれているんですよ。私は専門の教育を受けたデザイナーでもアーティストでもない、だから固定概念がありません。これをしたらダメとか、出来ないとか思わないのがラッキー、何でもやっちゃえ!というのが私の強みかなと思っています。
…アカリさんは常に前向きに成長し続けている、楽天家さんです。もちろん褒め言葉ですよ!キラキラと輝く金髪美人にふさわしく、アイデアがキラキラと湧いて出てくる。どんな新しいハッピーをアカリさんがうみだしてくれるのか、とても楽しみにしています。
三好さんからの質問コーナー
Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか。
A.3月に京都にオープンする「LURRA。」というお店です。デンマークの「NOMA」出身のシェフ、JACOBと、世界各国で経験を積んだ日本人ソムリエ、食材や食器などお店のこだわりを紹介する日本人コミュニケーターの3人がコラボし、全く新しい料理を京都から世界へ発信。開店前の試験営業に何度かお邪魔したのですが、既存のレストランにはない日本の食材を活用した新しいアプローチに心が躍りました。
篠原伯母野山デザイン 代表 コイケアカリ
兵庫県生まれ。企業パーティやイベントを企画するほか、「コミュニケーションをデザインする」をテーマに、人が集う場、会話・対話する場をプロデュース。2012年よりダンボールで作るパーティ空間「PAPER PARTY」をデザインし、新たな紙の可能性を発信。 2015年には自身のライフスタイルブランド「by akari」を立ち上げ、ダンボールのテーブルや椅子、オリジナルオブジェ、サインボード、オーナメントなどを企画販売。また様々な企業のブランドイメージアップや販売促進のディレクションなども手掛け、そのアイデアと技術は国内外からひっぱりだこ。2018年神戸新聞夕刊「随想」でコラムを執筆。IFDA会長、神戸松蔭女子学院大学ファッション・ハウジングデザイン学科非常勤講師
三好 万記子(みよし まきこ)
株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。