2019年
2月号
奥に建つ羽黒山のシンボル、五重塔は国宝で、室町時代に再建された。高さ約29m、総こけら葺きで彩色もなく、野趣に満ちて力強い。参道を行くと山伏と出会うことも。 

羽越路紀行「きらきらうえつ」に揺られて北越後・ 庄内の旅へ

カテゴリ:おすすめスポット, 観光

美しき国、日本。その中でも新潟県北部から山形県西部にかけての日本海沿いは清らかで色彩やさしく、春の息吹とともに出かけたい旅先だ。
そんな羽越路を、JRのジョイフルトレイン「きらきらうえつ」号に乗って訪ねてみた。

村上エリア 鮭の街と絶景海岸

北越後の要衝として江戸幕府に重要視されてきた村上の街は、城下町の風情を色濃く残すまちなみが往事を黙して語っている。
村上藩の経済を支えてきたのは、朝日山系からダイヤのように清らかな雫を集めた清流、三面川を悠々と泳ぐ鮭たち。平安時代から朝廷に献上され、日ノ本一の鮭と愛でられたが、江戸時代中期には乱獲で資源枯渇の危機に陥った。そこで青砥武平治なる侍が鮭の回帰本能に着目、分流の種川を整備しここに産卵場を設け、世界初の鮭の自然孵化増殖に成功。藩をあげて資源保護に努め、その結果多くの鮭が遡上するようになったという。「イヨボヤ会館」では種川の河床をガラス越しに見学できる。清冽な水に鮭をはじめとする魚が泳ぎ水族館のようだ。
「イヨボヤ」はこの地の方言で鮭のこと。「イヨ」も「ボヤ」も「魚」の意ゆえ、鮭は「魚の中の魚」ともいうべきか。地元で鮭は一物全体食。百にものぼる料理法で、頭の先から尾の端、内臓まで余すところなくいただく。特に塩引鮭は村上のシンボル。塩を擦り込み軒に吊り下げて、日本海から吹く風で熟成させる。三陸あたりでは頭を上にして吊すが、ここでは尾が上。また腹の一部を繋いだままにする「止め腹」は、大切なイヨボヤを切腹させてはならぬとの思いから。ルビーカラーの切り身を炭火で炙り口にすれば、凝縮した旨味と絶妙な塩加減で何杯でもご飯がすすむ。
三面川が注ぐ海には絶景が広がる。日本海の荒波が削った奇岩や入り組んだ海岸線が10㎞ほど連続し、羽越本線の車窓からも愉しめる。晴れた日は国内屈指の透明度の海水が醸すサファイヤブルーと天空を包むターコイズブルーの間に粟島が望め、曇った日は鈍色の波と豪壮な岩が水墨画の世界をなす。遊覧船に乗れば海からの佳景を満喫できるだけでなく、鴎たちが遊んでくれとばかりに近づいてくる。

軒先の鮭は村上の冬の風物詩だが、鮭の老舗「千年鮭 きっかわ」では年中千匹もの鮭が町屋づくりの店舗の梁から吊され壮観だ。これらの鮭はスライスして酒をかけて食べる「酒びたし」という料理に用いられる。

多彩な鮭料理は市内各所の飲食店でいただける。写真は松尾芭蕉が泊まったとされる旅籠を改修した「千年鮭 井筒屋」の料理。ちなみに女将は神戸出身だとか。

奇岩や洞窟、絶壁が織りなす荒々しい景観の「笹川流れ」は国指定の名勝、天然記念物でもあり、義経伝説も残る。透明度の高い海水を薪で煮詰めた塩はおみやげに好適。

鶴岡エリア 城下町の歴史と信仰の山

山紫水明という言葉は、この地のためにあるのかもしれない。庄内地方はおだやかで美しい。庄内藩は藩主と領民の深い絆が豊かな風土を築いてきたが、その藩校の名をいただく致道博物館は明治レトロの建物のみならず、藩主御隠殿や養蚕農家などこの街の歴史絵巻を体感するようだ。庄内の文化土壌を文学に花咲かせた藤沢周平の記念館は、彼がいかに故郷の歴史に誇りを持ち、何気ない日常を重んじていたかがわかり興味深い。
南東を望むとなだらかで美しい山容が水田の向こうに映える。月山は手つかずのブナ林など豊かな自然もさることながら、出羽三山の一角として崇拝されてきた霊山でもある。
出羽三山の信仰の中心は羽黒山。由緒によれば開山は6世紀末、都から逃れてきた蜂子皇子(崇峻天皇の皇子)、によるという。以降、修験道の中心として勢力は全国に及んだ。江戸時代には庶民にも信仰が広がり、羽黒山=現在、月山=過去、湯殿山=未来というストーリーのもと「生まれかわり」を体感する三山信仰で繁栄、現在ではヒーリングスポットとして若い女性の参詣も多い。時代とともにスタイルは変われども人々の崇敬は変わらない。
羽黒詣では門前のいでは文化記念館で概要を学んでからがおすすめ。ガイドを依頼すればさらに興趣が深まる。随神門から継子坂を下り、白糸を引く須賀の滝を望みつつ神橋を渡る。千年の時を超え参詣者を見守る巨大な爺杉があらわれ、参道は杉並木に包まれる。その向こうに静かに聳える五重塔は国宝で、複雑な組物と素木の肌が尊い。長い石段を登り詰めると、茅葺きの三神合祭殿の威容に感動を覚える。お詣り後に斎館でいただく精進料理は格別で、力強い味わいは修験ならでは。なお、厳粛な朝御饌祭(休暇村羽黒の宿泊者のみ要予約で参拝可)は早起きしても参るべきで、その徳風は三文どころではない。

車窓を風景画に変える列車快速「きらきらうえつ」
新潟~酒田・秋田を運行(運転日とダイヤは要確認)。全席指定のリクライニングシートで、笹川流れや庄内平野など魅力いっぱいの風景を大きな窓から満喫できる。2号車「きらきらラウンジ」ではお茶やお酒を愉しみながらゆったりと。なお今秋、新型車両「海里」へバトンタッチする予定。国鉄の名車、485系の乗り心地を味わえる稀少な車両でもあるので、鉄道好きならお早めにご乗車を

奥に建つ羽黒山のシンボル、五重塔は国宝で、室町時代に再建された。高さ約29m、総こけら葺きで彩色もなく、野趣に満ちて力強い。参道を行くと山伏と出会うことも。 

体力を消耗する山伏たちが口にするものゆえ、羽黒山の精進料理はしっかりとした味付け。サクサクした地のタケノコやぷるぷるのごま豆腐など食感も心地よく、料理としての完成度も高い。

地域の歴史を見守ってきた古い建築を利用し、充実した郷土史の資料を展示する致道博物館。明治ロマンを感じるこの建物は明治14年築の旧西田川郡役所。

酒田・遊佐エリア 北前船の湊と湧水の郷

庄内の政治の中心が鶴岡なら、酒田は経済の中心。北前船西廻り航路の起点として物資や文化が集積し、ひときわ栄華を極めた。その象徴は日本一の大地主として繁栄した本間家。千石船で財を成すだけでなく、土地の改良や水利整備、防砂林の植林などインフラ整備に私財を投じて地域の発展に尽くし、庄内藩の財政立て直しにも貢献した。その名残は今なお佇む本間家旧本邸にうかがえる。幕府巡検の本陣として設けられた武家屋敷スペースと、私的な商家スペースとが一体となった様式は全国的にも珍しい。庭には全国各地の銘石がちりばめられているが、これは船体を安定させるおもりの石、綿積石として運ばれたもので、交易範囲の広さを物語っている。
酒田は最上川の河口に位置し、庄内や山形盆地の舟運の拠点だったが、中でも米は一番の産物。最上川沿いに築かれた山居倉庫は、米蔵の屋根が連なり壮観だ。市街地にはほかにも豪商の旧鐙屋、旧料亭の相馬樓、灯台が残る日和山公園などに湊町の風情が残り、逍遥するだけで時の旅人となった気分だ。
酒田に来たならば、日本を代表する写真家のひとり、土門拳の記念館も訪ねたい。大判のパネルで展示される作品は迫力があり、リアリズムを追求した土門の息づかいが聞こえるよう。谷口吉生設計の建築もユニークで、展望台から北東を望むと円錐形の山に雲がたなびいている。
その山、「出羽富士」とも称される鳥海山の裾野まで足を延ばして遊佐へ。随所に鳥海山の伏流水が湧き、散策すればすなわち湧水めぐりとなる町だ。町外れの静かな森に佇む丸池様は、それ自体がご神体という不思議な池。底から湧き出でるピュアな水は冷たく澄み渡り、木立から漏れる光が注がれると水面はエメラルドの光に包まれ、その神秘さに心まで濯がれる。
さあ、麗しき羽越路へ。心癒やす旅路があなたを待っている。

スピリチュアルなスポットとして若い女性から注目されている丸池様。湧き出でる水のみを水源とし、水温が低いため沈んだ倒木が腐らないという。

本間家は今年創業330年を迎え、本間家旧本邸や別館(お店)でさまざまな特別企画展示がおこなわれる予定だ。

山居倉庫は、船からトラックに変わったいまも米蔵としての機能を発揮するだけでなく、一部は観光物産館や庄内米歴史資料に。樹齢150年以上のケヤキ36本が列をなすけやき並木も見どころ


早春の羽越路を彩るおひな様
城下町村上 町屋の人形さま巡り
旧町人町と呼ばれる一帯で約4千体の人形が飾られる。
3月1日(金)~4月3日(水)
お問い合わせ 村上市観光協会 TEL.0254-53-2258
庄内ひな街道
鶴岡、酒田、遊佐など庄内地方各地で由緒あるひな人形を展示。
2月下旬~4月上旬(施設により異なる)
お問い合わせ 庄内観光コンベンション協会 TEL.0235-68-2511


【インフォメーション】

お問い合わせ 日本海きらきら羽越観光圏推進協議会
(庄内観光コンベンション協会内)TEL.0235-68-2511
「日本海きらきら」で検索してください

【アクセス】
三宮=バス・電車=大阪空港=飛行機=新潟空港=バス=新潟
三宮=電車=大阪(梅田)=夜行バス=新潟
新神戸=新幹線のぞみ=東京=新幹線とき=新潟
新潟=きらきらうえつ・特急いなほ=村上・鶴岡・酒田
神戸空港=飛行機=仙台空港=バス=酒田・鶴岡=きらきらうえつ・特急いなほ=村上

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