9月号
<インタビュー>Make KOBE Great Again! ダン・カーター選手
偉大な神戸製鋼コベルコスティーラーズを
再び取り戻すために!
ラグビーの元ニュージーランド代表、ダン・カーター選手が、神戸製鋼コベルコスティーラーズに加入! カーター選手は、2003年にスーパーラグビーの「クルセイダーズ」とニュージーランド代表「オールブラックス」でデビュー以来、スーパーラグビーでは通算最多得点である1708点の記録を保持、年間最優秀選手には2回選出。ニュージーランド代表としては2011年のニュージーランド大会、2015年のイングランド大会二連覇に貢献、ワールドラグビーの年間最優秀選手賞を3回受賞している。その後フランスリーグに移籍し活躍するなど、世界的なスター選手である。現在では代表からは引退しているが、テストマッチ(国と国の誇りをかけたナショナルチーム同士の国際試合)で世界歴代1位の1598得点というカーター選手の記録はいまだ破られていない。
精度の高いプレーのためには
―神戸の印象はいかがですか。
神戸に来るのは初めてですが、来る前から神戸の良いところは聞いていました。まだ一週間ですが、自分が実際に来てみて、街がきれいなこと、食事がおいしいこと、またそれ以上に、私を迎え入れてくださった、神戸の人たちのホスピタリティに非常に感銘を受けています。
―今回、なぜ神戸製鋼コベルコスティーラーズへの加入を選ばれたのでしょうか。
神戸製鋼は、非常に誇り高いラグビーの歴史をもっていて、けれども2003年以来、トップリーグで優勝していません。もう一度、王座を奪還したい、優勝したい、そのビジョンがしっかりあるということ、そこに感銘を受け、優勝への手助けになればと思い、神戸に来ました。
―ファンのみなさんには、ご自身のプレーでどんなところを見てほしいですか。またプレッシャーの中ではどう戦っていますか。
一番は、プレーの精度、正確性です。私は、パスやキック、一つひとつのプレーに対して、精度と正確性を求めており、自分のパスやキックの精度に自信と誇りをもっています。
高いレベルでプレーするときには、プレッシャーはいつもつきまといます。そのプレッシャーの中で、いかに精度の高いプレーをするかということが、国と国で戦うようなレベルの場では非常に大事になってきます。そのためにはどうするか、ひとつは他の誰よりも一生懸命、練習をするということ。ふたつめは、ただ練習するのではなく、練習内容においても、厳しいプレッシャーがかかるような練習をします。試合中より高い、激しいプレッシャーをかけることによって実際の試合の場面ではそれがより楽に感じられるのです。
―2011年、2015年の2度のラグビーワールドカップで優勝し、史上初の二連覇を成し遂げたニュージーランド代表では112キャップと活躍してこられましたが、その活躍の理由はどこにありますか。
私は自分の仕事に対し、ハードワークを心がけることが、すべてだと思っています。私は2003年に初めてオールブラックスのキャップを得ましたが、そのとき感じたのは、一試合や二試合でオールブラックスのキャリアを終えたくないということでした。ずっとオールブラックスでプレーしたい、グレイトなオールブラックスになりたいと思ったので、そのためには他の誰よりも一生懸命練習するしかないと感じていました。ハードワークをし続けたことが、私のキャリアにつながっていると思います。
世界最高のプレーが見られるワールドカップ
日本のみなさんは幸せ
―カーター選手にとってワールドカップとは?
ラグビー選手にとっては間違いなく、この場にいたい、この場所にいたいという最高の場所です。4年に1回しか開催されず、そこに自分が出られるという約束はどこにもありません。その一員に選ばれるということは非常に光栄なことです。プラスして、すべての国がこのワールドカップに最高の状態をもって来ている、つまり世界の最高の相手と対戦できるということであり、どれだけタフな大会になるかもわかっています。それが私にとってはワールドカップがもたらしてくれるチャレンジです。しかし、どれだけワールドカップで勝つことが難しいことか! 私は4回ワールドカップに出場しましたが、最初の2回は良い結果にはなりませんでした。その後2011年、2015年と連覇できたのは、私のラグビーのキャリアの中でも非常に素晴らしいことでしたし、私はワールドカップでプレーできた瞬間を心の底から愛しています。
―2015年のワールドカップでは、日本代表が予想外の健闘を見せました。
あの試合は今でも覚えています。オールブラックスのメンバーと一緒に見ていましたが、通常、自分の国が関わっていない試合の時は、どちらの国を応援するということはないのですが、あのときはメンバーのほとんどが日本代表を応援していました。日本代表は、国のために、チームメイトのために戦っていました。そして南アフリカ戦の最後の1分で、トライを取ったときのみんなのハッピーな顔、お客さんのハッピーな顔はとても素晴らしいものでした。本当にすばらしい結果を残したと思っています。
同時に、あの試合が日本にもたらしたものは大きいと思っています。あの2015年より前に1回、日本と対戦するために来日していますが、あの試合の後に日本のラグビーが変わったと感じていますし、南アフリカ代表に勝ったことが、日本におけるラグビーを変えました。これがスポーツの力強さです。ひとつの試合がその国におけるスポーツをガラッと変えてしまう、それがスポーツの力だと思っていますし、あの試合が日本のラグビーに良い影響を与えたことは、私も感じていますので、それはとても嬉しいことだと思います。
―来年、2019年のラグビーワールドカップは、この神戸も会場のひとつになります。
ワールドカップは、通常のテストマッチとは違います。どの国もこのワールドカップのために練習し、最高のものをもって来ます。次回、日本でのワールドカップはいつ開かれるかはわかりません。日本に住む方は、世界で最高のプレーが自分の国で見られるということ、それだけ素晴らしいことです。
どの国も、どの選手もこのワールドカップに最高のピークをもってくるので、その中で前回の日本のようなアップセット(大金星)の試合もあるかもしれません。すばらしい個人のプレー、チームプレー、ラグビーにおける最高のものが見られるのがワールドカップなので、それを観戦できる日本のみなさんは幸せなことです。
―カーター選手は5回目のワールドカップとして次回はどうですか。
それに関しては、私は前回までの自分のパフォーマンスを含めての結果に満足していますし、自分の年齢のこともありますので、次回のワールドカップへの参加はありません。ただ、これまで4回のワールドカップにはプレイヤーとして出場していましたが、来年は開催国にいながらプレイヤーではない、一人のファンとして見るので、来年のワールドカップには違った特別な感情をもっています。
日本代表の選手にとっては、母国で開催されるワールドカップで日本の代表として出場できることは、これ以上ない幸せです。私は2011年にそれを経験しています。良いプレーをして、国全体が誇りに思えるようなプレーをしてほしい。Good luck! そして決勝戦で、日本がオールブラックスと戦うことができれば良いと思っています!
強い神戸製鋼を取り戻す
―神戸製鋼はかつて、V7という強い時代があり、みんなが応援していました。神戸市民としては、その強い神戸製鋼をぜひ取り戻してほしいです。
私はプロフェッショナルラグビープレイヤーとして、15年以上プレーしてきました。そこでもっている経験というものを、神戸製鋼のチームメイトとシェアしたい、それが私の役目です。彼らがさらに良い選手になるための手助けをしたいと思っています。個人的に、もっているモットーとしては、「Make KOBE Great Again!」。すばらしかった神戸製鋼をもう一度取り戻すためにです。以前、輝かしい功績をおさめていた神戸製鋼を取り戻すために、私がその一端を担えればと思っています。ただ現実として、トップリーグには他にも素晴らしいチームがあり、優勝は年々難しくなっています。ですから我々はどのチームよりハードワークをこなさなくてはなりませんし、すべての準備をしてトップリーグに臨みます。そのためには、私自身もハードワークをしますし、この神戸が再びタイトルを奪還できるよう手助けしたいと思っています。
―ラグビーに挑戦している子どもさんへの指導においては?
私は6歳で初めてラグビーをしたときも、そして今も、同じ感情でプレーしています。それは「楽しいから」。他の理由などどうでもいい。子どもたちが「楽しいから」ラグビーをできるよう、指導を心掛けています。コベルコラグビーフェスティバルのようなイベントは子どもにとって、友人たちとプレーし、スター選手と出会えて、ラグビーを楽しむとても良い機会です。