9月号
レクサスと日本のモノづくり ③
「恒久的建築」を追求するアトリエ派
株式会社アーキノヴァ設計工房
代表取締役 一級建築士
柏本 保 さん
人が暮らす。人が集う。だからこそ、建築にはやすらぎが必用だ。
シンプルでありながらユニークな窓や絶妙な色づかいに個性が煌めくアーキノヴァ設計工房の作品は、遊び心と快適さに満ち、心を和ませてくれる。
大人しすぎると存在に気付かれない。派手すぎると調和を乱す。アーキノヴァ設計工房代表取締役の柏本保さんが手がける建築は、そのさじ加減が秀逸だ。周囲の景観に和合しつつも目を惹くカラーとデザイン。内部空間も機能的で心地良く完成度が高い。しかも流行に左右されない普遍性があり、時代に馴染みつつ常に新鮮さを感じさせる。
何気ないようで実はかなり練られている柏本さんの作品は、アイデアを綴る何枚ものスケッチと、それを立体化してイメージを掴むための模型づくりを積み重ね、感性を昇華させて生まれくる。そのスキームは、アーティストと言うより職人のそれに近い。
建築を学んだのは、田中角栄が日本列島改造論を打ち上げ、国中が建築ラッシュに見舞われていた時代。多くの同期が華やかなゼネコンに進む中、社会の風潮に背を向けるが如く、地道なものづくりの道を選んだ。東京と関西の設計事務所で腕を磨き、不惑を迎え独立。気付けばバブルに秋風が吹き、やがて木枯らしとなったが、そんな逆境にありながら寒椿の如く咲き続けてきた。それは確かな腕、そして人一倍強い建築への愛情が成せる業なのかもしれない。
愛車は「車にこだわりはなかったのですが、洒落ていて一発で気に入って」選んだ赤いレクサスIS250。コツコツ仕事を積み上げるアーキテクトを満足させるのは、彼の建築と同様、性能とデザインがギターの調べのように端麗なハーモニーを奏でているからなのだろう。車も建築も、色褪せることのない「本物」の根底には、機能と美の幸せな調和がある。
■株式会社アーキノヴァ設計工房
神戸市中央区山本通2-4-24
リランズゲート1-5A
TEL.078-222-3231