7月号
Power of music(音楽の力)
第7回
第7回
作曲家は楽譜を聴く『実はローカルな西洋音楽』
上松 明代
遡ることおよそ8年。私が作曲を学び始めた頃、せっせと書いた曲を聴いて貰いたく複数の作曲の先生に「聴いて欲しい」とお願いしたところ、全ての先生にこう言われた。「楽譜が見たい」。音より楽譜。当時は「音を聞いた方が分かるのでは」と疑問だったが今なら分かる。楽譜を見たいという真意が。
一般的にクラシック音楽とは西洋音楽のことを指す。ヨーロッパの教会を中心に発展した音楽のこと。現在クラシック音楽は一つのジャンルとなり、グローバル音楽として認知されているが、元は西ヨーロッパという地域における民族音楽なのだ。では何故、クラシック音楽が世界的に広まったのか。要因の一つに【五線譜】の存在が挙げられる。
【五線譜】は音を機能的にそして緻密に記録出来る(楽譜を書くための一定条件を記譜法と呼ぶ)。西洋音楽には記譜法に則り楽譜を書き、音符を音に変えるという大原則があったため、数百年前の作品が今も変わらず残っている。では他の国(地域)はどうだろう。例えば日本音楽。日本古来の楽器である龍笛や尺八、三味線、お箏など、各々に譜面がある。しかし各々が独自の譜面を持ち、《日本音楽》という括りで統一された楽譜ではない。バリのガムラン音楽のように譜面に残すという概念がない民族音楽も多い。
楽譜(記譜法)は実に合理的だ。楽器は異なれ、五線譜で読む音符は同じ。だから世界的に楽譜というツールが広がり万国共通のものとなった。
後世に残る音楽は縦(ハーモニー)と横(メロディー)の線の均整美が素晴らしい。音源だと一度聴いただけでは細部までわからない。しかし楽譜を見ると一目瞭然。途端に頭の中で音楽が流れる。そうか!作曲家は楽譜で音楽を聴いているのかぁ〜。納得!
18・19世紀のヨーロッパでは、クラシック音楽は特権階級の人々が楽しむ知的自慢芸術でもあったわけだが、元を正せばローカル音楽。「神戸と言えばジャズ。クラシック音楽は敷居が高い」とおっしゃらず、気楽に、そして気軽に楽しんで。
上松明代(フルート奏者・作曲家)
武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。
オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com