4月号
シリーズ神戸の匠 第2回 書に想いと命を
神戸を拠点に幅広く活動しながら、少しずつその評価を高めている書家の砂川雅美さん。横手先生は「その地道な努力を応援したい」と、若い女性書家を第2回目の「匠」に迎えた。
「字」には人生を変えるほどの力がある
横手 イベントやコンサートでの書道パフォーマンスなど多方面で活躍されています砂川先生とは知人を介してお会いする機会があり、私の名刺を作っていただきました。彼女は私の中の「匠」の一人。でも、とても勉強好きで努力家。共感できるし、応援したいと思っています。これからが楽しみですね。しかもとても真面目。
砂川 ありがとうございます。私にとって横手先生は、「人生の着こなし方がとても上手な大先輩」。お仕事や経営についてはもちろんですし、ファッションやグルメ、仕草の一つひとつが洗練されていて、ご一緒に居させていただくだけで、私自身を高めていけると思っています。
横手 いえいえ、神戸の独特な雰囲気のせいですよ。神戸らしさを出すのは難しいものがあり、私などはまだまだです。神戸は色々な分野のリーダーとなるべき場所だと思います。住みやすい街の世界ランキングでも5位以内に入っているほどですから、人も街も洗練されていなくてはダメでしょうね。その一つが、文字。きれいに書かないとね…。
砂川 先生は字がとてもお上手です。
横手 またまた思ってもいないことを! 字は体を表すので、丁寧に書くことを心がけています。砂川さんの名刺はとても好評で、初対面でお渡しすると大概「いいですねえ」と言っていただきます。しかも、お渡しした人の話によると、これを持っているだけでいいことがあるそうですよ(笑)。
砂川 文字は書き方によって、人生が豊かになったり、華やかになったり、逆に人生が尻つぼみになったり、トラブルが絶えなかったりします。自分をより高めてくれる書き方をした方が、はるかにいいですよね。横手先生のお名刺のお名前も、より運気をあげる筆跡で書かせていただいたので、きっと功を奏してくれているのですね(笑)。
「歯」も「字」も個性を生かすことが大切
横手 砂川先生は何故、書家を目指したのですか。
砂川 今はパソコンやメールばかりを使い、文字に感情がありません。文字を見て、笑ったり泣いたりする人間自身の感情もなくなってきているように思います。文字に命や想いを吹き込むことで、皆が忘れかけている心を、すばらしい日本文化のひとつである書を通して、思い出してもらえたら。そう思って、私は書家を目指しました。
横手 書道教室の生徒さんにはどんふうに教えているのかな。
砂川 お手本通りに書くばかりが書道ではありません。書の愉しさを知ってもらえるような教え方を心がけています。それぞれの個性を生かした字を美しく見せるお手伝いができたらうれしいですね。横手先生がいつも「それぞれの個性に合わせた歯が、その人を一番美しく見せる」と仰っておられるので、「同じだな」と思っています。
横手 確かに通じるところがあります。日本人の歯は欧米人のようにキレイに並べると違和感があります。それは、アジア人の顔には平均的に欧米人のような凹凸が少ないからです。欧米での手法をそのまま持って来ても、日本人には合わないんですね。鼻が高くて、目が窪んでいる顔に真っ白な歯を凸凹なくキレイに並べると美しいのですが、日本人には合わないことが多いです。エステティックの「美」には必ず「影(シャドウ)」が必要です。これは文字を書く場合も同じ、人間も「影がある人」に魅力があるでしょう? 私は、凹凸が少ないという日本人の影を生かして、前歯2本を少し出したり2番目の歯を少し引っ込めたりすることによって、顔に凸凹感をもたせ、自然な姿にします。色はその人が神さまから貰った本来のものを尊重します。これがエステティック。びくりするほど白い歯をキレイに並べるコスメティックとは違います。コスメティックは作られた美、エステティックは影を使った美です。砂川さんの歯はとてもきれいで、ちょっとカタカタしている。これが個性です。キレイに並べてしまったらきっと違和感があるでしょうね。
砂川 そうですか、嬉しいです。
横手 歯も個性、文字も個性。どちらも影を生かしたアートにしなくてはいけないですね。
想いを込め、伝えることで人生を豊かに
横手 歯を変えただけで、びっくりするほど前向きになる人がいますよ。文字がきれいになっても同じかな。
砂川 大切な人に贈る手書きの文字は、想いを込めて書いている時間も贈り物です。想いを伝えるということは、人生を豊かに輝くものにできると私は思っています。
横手 将来は砂川注流立ち上げられるのですか。
砂川 今は流派には属さず、何にも縛られることなく自分の好きな仕事がしたいと思っています。でもその仕事は、お客さんの「こんなイメージの字体でお願いします」という要望に応じて何点か書いて、その中から選んでもらうというスタイルです。砂川流というわけではないですが、「お任せします」と依頼されて、見ただけで皆に「砂川雅美の字だ!」と分かってもらえるような書家になることが夢です。横手先生流を是非教えてください。
横手 医者の立場で考えると、作製した模型が完璧ならきっと100点満点の名医になるでしょうね。でも、患者さんの口の中にいざ装着してみると違和感がある。これでは、患者さんにとっては0点。模型で見ると「何これ?」と思わせるような左右非対称のものでも、はめてみるとちょうどいい感じ。患者さんと心が通じ合う瞬間です。あくまでも主役は患者さんです。私は、患者さんにとっての名医でありたいと思っています。
と、偉そうなことを言っていますが、20年たって最近やっと分かってきたことなんです。
砂川 私にはまだまだです。
横手 腕ひとつ!努力次第。頑張ってください。応援していますよ。
砂川 ありがとうございます。これからもご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
書家・砂川 雅美(すながわ まさみ)
3歳から書を学ぶ。大学の書道専攻コースへ進学。卒業後は銀行に就職。神戸のホテルの筆耕等を経て、本格的に書家として活動を始める。「書」の愉しさを生かした自塾を主宰するほか、「書」を主体とした出張イベントや書道パフォーマンスにも精力的に取り組む。また、企業等で「書」を使った企画、制作をはじめ、筆跡診断をもとに、採用、人事、営業戦略のセミナー、研修等ビジネスサポートも実地。
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