7月号
自立した女性の育成を目指し、さらにウィングを広げる ー神戸女子大学・神戸女子短期大学
神戸女子大学
学長 中島 實さん
少子化が進む時代の中でも高い人気を誇る神戸女子大学。来春にはポートアイランドキャンパスに看護学部が開設し、医療の現場で活躍する人材の育成をめざしていく。
創設の理念を受け継ぎ74年
神戸女子大学の歴史は74年前まで遡ります。昭和15年、行吉國晴・行吉哉女が神戸市葺合区(現・中央区)に専門学校「神戸新装女学院」を開校しました。当時は日中戦争のさなか、翌年に太平洋戦争に突入。夫が徴兵され、戦死するなど、一家の大黒柱を失うという女性にとって辛く厳しい時代背景がありました。そこで、精神的にはもちろん、手に職を付け経済的にも自立できる女性を育てることを目的に創設されたものです。
戦後は、昭和25年の短期大学発足に伴って第一期校の一つとして神戸女子短期大学服装科を開設、翌年、「学校法人 行吉学園」としてスタートします。現在は教育センターを置く三宮キャンパスの場所です。その後、平成4年にはポートアイランドキャンパスに移転しました。一方、神戸女子大学は昭和41年、須磨キャンパスに家政学部が開設されます。ここから4年制大学として、50年近くの歴史を歩んできました。
学生の目標達成をサポート
大学に入ってくる学生、そして保護者の方も、何らかの目標を持っています。その期待に応えるという意味で本学は、国家試験や教員採用試験の合格率が高いという強みがあります。ところが4年のうちにはいろいろな出来事もあり、どうしても中だるみになりがちです。そこで学生のニーズに応えて、正課の授業の充実に加え、試験対策として講習や模擬試験、情報の提供などをサポートしています。そうすると不思議なことに学生たちもやる気になって、自発的に参加するようになってくるんですね。とても良い傾向だと思います。1年生から刺激を与えることは大切です。全学的に広げていきたいと考えています。
高い国家試験合格率
成果は目に見えて上がってきています。例えば今年3月実施の管理栄養士国家試験では新卒合格率は95.9%。これは全国平均を大きく上回る優秀な成績です。健康福祉学部で社会福祉を学ぼうという学生も多く集まってくれています。社会福祉士や精神保健福祉士でも、高い国家試験合格率を誇っています。中でも今年1月の社会福祉士国家試験では、近畿2府4県私立大学の中で合格率2位という好成績を収めています。
また、文系学部では座学だけに留まらず、フィールドワークを積極的に取り入れています。例えば教育学科では神戸市が実施する学生スクールサポーターに参加して、授業や学級活動などをお手伝いしながら教育現場を経験しています。その他ボランティアとしては、私たちも把握しきれないほどの活動に積極的に参加してくれているようです。
いよいよ来春、看護学部を開設
平成27年春、看護学部をポートアイランドキャンパスに開設します。実践に強い専門の講師陣を揃え、5階建ての新棟にそれぞれ実習室を備えます。実習室のほかに、学びの共有空間といわれるコモンズに対応できるスペースも設ける予定です。先端医療施設が集積するポートアイランドという立地を生かし、一部の実習ではご協力いただくことになっています。
看護師は女性の特性を発揮できる分野ですから、女性の自立という本学創設の理念の延長上に、いくつものウィングを広げてきた中の一つが看護学部開設だと考えています。また、看護師不足が深刻な社会問題になっています。さらに今後、超高齢社会において地域で支える医療が求められます。この分野では後発ではありますが、社会のニーズに応えるものでもあると考えています。
社会で堅実に役割を果たす女性を育てる
神戸女子大学の卒業生は約3万人にのぼり、同窓会として「青山会(せいざんかい)」があります。そのほかにも教員や管理栄養士たちの卒業生ネットワークもあり、卒業後の様子について情報が入ってきますが、共通して言えることは、現場で堅実に仕事に取り組んでいるということです。本学の気質でしょうか。うれしく思っているところです。
近年は、女子大学を共学に変更するという動きもあります。しかし本学は今後も、創設時の理念に基づき、女性の自立と社会進出をサポートし、堅実に自分の役割を果たし社会の役に立つ女性を育てる女子大学であり続けます。さらに、新設の看護学部も含め、実績の面でも高い評価を受け「神戸に、神戸女子大学あり!」と言っていただける存在でありたいと考えています。
中島 實(なかしま みのる)
1952年、兵庫県生まれ。名古屋大学大学院教育学研究科修士課程修了。博士(心理学)。1997年に神戸女子大学文学部教授となり、文学研究科長、文学部長、副学長を経て2013年4月より現職。専門は心理学。