7月号
実践的学習で学ぶ〝グローバル・シティズン〟の考え方 ー神戸市外国語大学
神戸市外国語大学 国際関係学科
准教授 ローリー・ゼネック 西出さん
行動する国際人の育成を目指す神戸市外国語大学。
ユニークかつ、アクティブな教育もその魅力の一つで、英語教育に携わる教員対象のティーチャートレーニングにも力を入れている
日本で暮らして30年余り
私は発展途上の国をはじめ、世界の国や地域の文化に興味を持ち、大学卒業後はCrossroads Internationalでアフリカに行き、カナダでの教師を経て、大学院に進むのを前に1983年、友達を訪ねて日本に来ました。短期滞在の予定だったのですが、京都外大西高校に勤務していた先生が突然帰国することになり、私が勤めることになったのをきっかけに日本で30年余り暮らすことになりました。
英語の先生は責任重大
英語の学習・教育において重要なこと learn(知識の修得)、think(自分になにができるかを考える)、act(行動)を指導するティーチャートレーニングのため2007年、神戸市外大に着任しました。幼稚園、小中学校・高校・大学の教員を対象にAcademic Writing、Team Teaching、speech communicationの科目を担当し、論文を書くこと、外国人と日本人の先生または日本人の英語の先生と担任の先生がペアで教える方法、英語で進める英語の授業方法などを教えています。
また、近隣の小学校の児童が神戸市外大を訪問し、私たちに準備してきた英語で質問するというイベントがあります。普段学校内ではできないことで、児童たちのモチベーションがとても高まるようです。英語の先生が授業の中で英語を話さなければ、生徒が英語で話すことを学ぶ機会はなくなってしまうので、先生の責任は重大です。日本では先生を教育するという考え方自体があまりないようですが、ティーチャートレーニングは大切だと思います。
英語での模擬国連から得られるもの
世界で通用する国際感覚を育てることは私の使命だと考えています。そこで、1990年に高校での模擬国連プログラムを作り、京都外大西高校をはじめ、その他の高校で実施し、今も続いています。模擬国連とは国際連合の会議を想定し、参加者が加盟国の代表として議論して最終的に決議案をまとめるものです。神戸市外大に来てから、大学生主催の日本語による模擬国連は一部実施されていましたが、すべて英語で、または授業として行われているものはないと知りました。日本語で世界の知識は得られても、世界の人たちと話し合いはできません。私は、国際コミュニケーションコースを開設するとき、英語での模擬国連の授業を提案しました。学長や他の先生方からの賛同を得て、実行することになりました。日本初でしたが、ここから全国の大学に少しずつ広がってきました。模擬国連では世界の国々の知識を得るだけでなく、議題について自分たちが担当する加盟国の立場で様々な角度から考え、また国や人の多様性を理解し認め合うことを学びます。
今年は6月27日から29日の3日間、外国人学生60名を含む200名の学生が集まり「JUEMUN2014(日本大学英語模擬国連)」を開催しました。模擬国連は初めて出会う学生たちが議論する貴重な体験です。昨年は韓国の仁川で開催された「NMUN(全米模擬国連大会)海外大会」に6名が参加しました。また、今年4月にはニューヨークで開催された全米大会(世界中から5000名以上の学生が参加)に参加しました。2016年、70周年を迎える神戸市外大でこの世界大会を開催できることを目標にしています。
行動する国際人として、今の自分にできることを頑張ろう
私のゼミでは「Service‐Learning」をテーマに、世界で起きている問題についてNGO・NPOを通して勉強しています。問題を見つけ出し、その解決方法を探しだすため活動に参加するのは学生自身です。私はそのチャレンジを応援し、時に助言を与えるだけです。海外へ出ていく学生もいますし、国内、地域のコミュニティーなどいろいろな場所で活動に取り組み、最終的に論文にまとめます。この実践的学習はグローバルなものの見方を育て、学生たちを成長させるものです。
自分の国に誇りを持ち自身のアイデンティティーを持つことはもちろん大事ですが、どこで何をしていても国際人としての自覚をグローバル・シティズン(世界市民)の一人として、住む街のため、日本のため、世界のために、今の自分にできることを考え、行動してほしいと思っています。
ローリー・ゼネック 西出(にしで)
カナダ生まれ。サスカチャワン大学・大学院(カナダ)卒業。テンプル大学(アメリカ)にて英語を母語としない人への英語教授法を学ぶ。2007年に神戸市外国語大学准教授となる。