2014年
12月号
自然資材を中心にした、人と自然に優しい庭づくり“スロウガーデン”を提案する

私のKOBEデザイン4 森とまちをつなげるため、自然の力で土づくり

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街に緑を増やすことは地球環境を守る大切な手段。
ところが、緑を育てる土づくりの段階で環境に負荷を与えている。
何故なのでしょう? 自然の力による土づくりを通して、
森とまちをつなげる取り組みをする内田さんにお聞きした。

植物の育つ原理はみんな同じ

―ミドリカフェとは。オープンまでの経緯は。
内田 私は大学卒業後、造園コンサルタントとして、公園緑地の設計・デザイン、山の保全や街路樹を植えるなど、公共事業に関わる緑化事業に約8年携わりました。基本的に官公庁発注の大規模な仕事ですから、もっと〝草の根的〟な活動で、たくさんの人に自然や緑の魅力を身近に感じてもらいたいという思いがありました。そこで独立することを決めたのですが、事務所という形態ではなく、人が気軽に集まれる場所にしたいと10年前、岡本で「ミドリカフェ」をオープンしました。当初は飲食に力を入れ過ぎ、途中から「目指しているところと何か違うな」と思い始めました。本来は造園設計デザイン事務所のサロン的なつもりでしたから(笑)。そこで心機一転、原点に戻ろうとこの場所へ移転して7年目になりました。
―緑や自然に興味を持ったのはいつごろから。
内田 元々、緑や自然に関することには興味があり、造園コンサルタントの仕事をしていたのですが、公共事業で植物を植えるときには、どのような土を使うか指示されるのが当たり前で、土の中のことはノータッチ。当時はプランをデザインするときは、土より上のことしか描きませんでした。
―土に興味を持つようになったきっかけは。
内田 ミドリカフェを始めてからです。有機栽培や無農薬栽培に力を入れている生産者さんと直接提携し、交流するなかで、土のことを教えていただいたり、お手伝いなどもしながら土に触るようになりました。そうするうちにだんだん土の中のことに興味を持つようになり、野菜も草も花も木も同じ植物だから育つ原理は同じなのに、「造園では何故、農業のように土の中のことを考えないのだろう」と疑問を持ち始めました。

土は本来、自然の力だけでできるもの

―良い土とは。
内田 造園やガーデニング用に大量に販売されている土の製造工場へ見学に行ったことがあります。日本各地や海外からも、大きなエネルギーとコストをかけて原材料を集めてきます。地元にもたくさん原材料はあるはずなのに、こんなことをする必要があるのかというのがまず疑問です。そして、膨大な光熱費や添加物を使って短時間で発酵・熟成させ、最後は熱処理で消毒して、ものすごく短いスパンで大量に生産して出荷しています。生物も全くいない、これが土だろうか?などと思い始めたころ、姫路市夢前町の山に囲まれた自然環境の中で、周囲の街から出る刈り草・落ち葉・剪定枝などの植物を原材料に、自然のまま土を作っている人のことを知りました。
―どんな生産方法を取っているのですか。
内田 ほぼ何もしません。半年から1年、原材料を野積みして、月に1回程度切り返しをしているだけなのです。勉強がてら現場へ行ってみて、衝撃を受けました。エネルギーもコストもかかりません。原材料を分解して発酵させているのは、原材料に棲みついている微生物やミミズの力だけです。こうやって出来た土に、落ち葉や雑草などをエサとして与えれば、彼らはそれを分解して栄養を出し続けます。この自然のシステムが延々と回っていくのです。自然の力を最大限に引き出して健全な状態を保てば、殺虫剤や肥料も必要がなくなります。例えれば…人間の力で作った土は〝温室育ちのひ弱な子〟、自然が作る土は〝外で遊ぶ元気な子〟。元気な子どもに栄養剤や薬、サプリメントも要りませんね。

場所さえあれば誰でもできる土づくり

―自然の力だけで育てられた土を「森育ち」として販売して広めているのですね。
内田 地球環境に最も貢献するはずの緑化事業なのに、その基盤となる土の中が全く理解されていない。この自然の土を緑化基盤のスタンダードにしたいと考えました。そこで、ミドリカフェとして長年お付き合いいただいている造園屋さんやガーデニング雑貨のお店などにお話しして、賛同いただいた神戸阪神間の7店舗で「森育ち」を扱っていただいています。幸いこの地域は、お店も消費者もオーガニックに対する意識が高く、興味を持っていただき、販路を少しずつ広げることができています。
―今後は。
内田 もっとたくさんの人に知ってもらいたいと立ち上げたのが、自然資源を活用して森とまちをつなげようという取り組み、「旅する大地」です。自然の土づくりは、落ち葉や剪定枝など、森や山林にある資源を有効活用すれば誰にでもできます。市民活動の一環とする、林業従事者が新たな事業収入源として作るなど、手段はいろいろあります。
 今のところ「森育ち」は姫路産だけですが、全国に広がり、色々な土地の「森育ち」としてブランディングしたいと考えています。現段階で、兵庫県丹波市では住民参加型の事業の一環として、また熊本県山鹿市では森林組合の林業活性化事業の一環として、「旅する大地」事業に参加いただいています。来年になればそれぞれの培養土「森育ち」が出来あがってくる予定です。将来は、「六甲の森育ち」も夢ではないでしょうね。
 「旅する大地」では、「森育ち」の販売だけでなく、土に関するワークショップや、実際に山を歩き自然を体感できるアウトドアイベントなどの開催を通じて、森と街をつなぐ仕組みを作り上げていきたいと思っています。

自然資材を中心にした、人と自然に優しい庭づくり“スロウガーデン”を提案する



「森育ち」は、兵庫県姫路産天然成分100%の庭土
資料提供:リビングソイル研究所


微生物やミミズが棲む土は、草花を元気に育てる


農薬や化学肥料をできるだけ使用せずに栽培された、旬の野菜を使用する。カフェでは食事もできる




ミドリカフェ 代表 内田 圭介さん

1972年生まれ。「ミドリカフェ」代表。京都工芸繊維大学卒業後、造園コンサルタントを経て、2007年、都市部におけるエコでスローなライフスタイルを提案する「ミドリカフェ」をオープン。無添加・無農薬で育てる菜園や庭づくりの設計デザインのほか、ガーデニング雑貨やタネ苗の販売、オーガニックな飲食メニューを提供。兵庫県立大学院淡路景観園芸学校インストラクターも務める。

ミドリカフェ

「みどり豊かなライフ・スタイルの提案」をコンセプトに、シンプルで自然と向き合った、
笑顔のある生活を提供する場としてつくられたカフェです。
http://www.midoricafe.jp

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〈2014年12月号〉
第20回 神戸ルミナリエ 開催期間:12月4日(木) 〜 12月15日(月)
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