3月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第173回
川西市医師会市民医療フォーラム
「川西市・猪名川町の医療・介護のゆくえ
~未来へつなぐ安心のために~」について
─昨年の川西医師会市民医療フォーラムはどんなテーマでしたか。
元木 第23回を迎えた今回は2025年11月8日に、「川西市・猪名川町の医療・介護のゆくえ~未来へつなぐ安心のために~」をテーマに開催しました。会場は3年ぶりにみつなかホールでした。残念ながら今回は前回よりも参加者が減りましたが、260名のみなさまにご来場いただきました。
─フォーラムでは過去にも医療や介護について採り上げていますね。
元木 はい。川西市医師会では2003年から市民フォーラムを開催していますが、川西市や猪名川町は阪神間の市町の中でも比較的高齢化率が高いこともあり、これまでも地域の医療、介護、福祉に関するさまざまな問題を提起してきました。2011年のフォーラムで認知症を採り上げたことがきっかけになり認知症連携パス「つながりノート」ができたのですが、これが認知症対策の先進事例として厚生労働白書に掲載され、G7認知症グローバルサミットでも報告されています。
─今回はどのようなプログラムでしたか。
元木 まず、社会保障審議会や社会保障国民会議委員、社会制度改革国民会議などで委員を務められ、医療制度や社会保障政策に造詣が深い慶應義塾大学商学部教授の権丈(けんじょう)善一先生に基調講演をお願いし、これを受けてパネルディスカッションをおこないました。
─基調講演はどのようなお話でしたか。
元木 「昔の医療、そして今とこれからの医療」と題し、主に社会保険についてと、これからの医療の方向性についてお話いただきました。
─社会保険についてはどのような内容でしたか。
元木 まずはデータを示しつつ、対GDP比における日本の税や社会保険料の割合はOECD諸国の中でも決して高い訳ではないという基本的な状況を確認した上で、社会保険の役割とは「消費の平準化」であり、賃金と社会保険がワンセットになって安心して人生を送ることができるので、自身の人生の高齢期における支出膨張を抑えるために若いときから社会保険に入るという理解が大切だとおっしゃっていました。
─これからの医療についてはどのようなお話がありましたか。
元木 人口減少と高齢化の流れの中でどうすれば医療と介護を守れるかという視点で、権丈先生も関わられた2013年の社会保障制度改革国民会議報告書の内容をもとに解説されました。まず、元通りに治す医療から、地域全体で治し支える地域完結型の医療へと医療の質の転換が必要であり、QOL(生活の質)の維持向上を目指すようになるので、医療と介護の分離はできないだろうということです。
─医療の質の変化にどう対応していくべきなのでしょうか。
元木 患者側については、医療を持続可能にするためにも意識改革が必要だという指摘をされました。医療提供者側については、高齢化と人口減少により医療ニーズと提供体制にギャップが生まれてきたので、ニーズの方に合わせて変えていくべきとのことです。そして、これまでの診療科別の専門医療から、何でも気軽に相談できるゲートキーパー的な「医師の家族化」が大切であり、医療機関も「競争」から「協業」、つまり機能や役割を分担していくようになるべきだと方向性を示されるとともに、その推進役として機能する全国57の地域医療連携推進法人のうち25番目の川西・猪名川地域ヘルスケアネットワークを評価していただきました。
─パネルディスカッションはどのような内容でしたか。
元木 まず、川西市医師会会長の織田行雄先生と川西市・猪名川町在宅医療・介護連携支援センター相談員の森上淑美氏がパネリストとして登壇し、これを受けて権丈先生がコメントしました。
─パネリストからはどのようなプレゼンがありましたか。
元木 織田先生は「川西市・猪名川町の人口構成と医療の現状や今後の展望について」と題し、1973年に全国に先駆けて医療機関として登録されている保健センターを開設したこと、コロナ禍でも検査センサーの設営やワクチン集団接種体制で協力してきたこと、地域ケア協議会で多職種連携を進めて地域医療連携推進法人「川西・猪名川地域ヘルスケアネットワーク」へと発展させたことなどを例に、川西市や猪名川町では医師会と行政の連携がきわめて密接であることを紹介、今後も地域医療を持続できる体制を目指したいとお話しされました。続いて森上氏が「在宅医療・介護連携について」をテーマに、在宅医療・介護連携支援の設立の経緯や目的のほか、専門職の相談窓口、研修機会の提供、つながりノート連絡会をはじめとする活動内容を詳しく紹介され、つながりノートが患者家族の安心感醸成やケア職員の連携促進に大いに役立っていると述べられました。
─権丈先生のコメントはいかがでしたか。
元木 終末期の医療やケアについて本人、家族、医療や介護の関係者が話し合って意志を共有するアドバンス・ケア・プランニング(人生会議)の重要性を説かれ、それを推進するためにも家族同様に信頼できる医師が必要であり、その存在が地域の医療の質を高めるという見解を示された上で、「この国の先導となるようなモデルをつくっていただきたい」とコメントされました。
─今年も市民フォーラムを開催する予定ですか。
元木 はい、秋に開催予定です。詳細は決まり次第、川西市医師会ホームページなどでご案内しますので、ぜひご来場ください。

第23回川西医師会市民医療フォーラムは、3年ぶりにみつなかホールで開催。260名のみなさまが来場した

今回のフォーラムでは、医療制度や社会保障政策に造詣が深い慶應義塾大学商学部教授の権丈善一先生が基調講演をおこなった

パネルディスカッションでは、川西市医師会会長の織田行雄先生と、川西市・猪名川町在宅医療・介護連携支援センター相談員の森上淑美氏が、パネリストとして登壇

パネリストを務めた織田先生と森上氏がプレゼンをおこない、これを受けて権丈先生がコメントした













