2024
11.23

WEB版スペシャルインタビュー|こまつ座 第152回公演
『太鼓たたいて笛ふいて』
俳優・大竹しのぶさん

カテゴリ:汎用

劇作家・井上ひさしが遺した作品の中でも人気が高く、「この作品が、わたしはほんとうに好きです」と本人も語った『太鼓たたいて笛ふいて』が、再び舞台に戻ってきた。今作は、戦中は従軍記者として活躍、戦後は反戦小説を書くようになった作家・林芙美子の凛々しい生涯を描いた音楽評伝劇。初演から芙美子を演じている俳優の大竹しのぶさんに話を聞いた。

「滅びるにはこの日本、あまりにもすばらしすぎる」
伝えることが役者の仕事です。

Q.今作への思いを教えてください。

 演出の栗山民也さんと「またやらなくちゃね」と話していたので、今回実現できて本当に嬉しいです。
 『放浪記』でベストセラー作家になった林芙美子さんのその後の物語ですが、戦中は、“戦は儲かるという物語”と、その時の流れにのり戦争を美化した芙美子。その間違いに気付き、謝罪することに人生を捧げます。また今も世界中のどこかで戦争が起こっていて、戦争の映像が毎日流れて恐怖を身近に感じる今だからこそ、井上さんが伝えたかったことを、きちんと伝えたいと思っています。

Q.初演は22年前ですね。

 この芝居に参加できる喜びに浸っていました。出会えたことに“ありがとう”。それから「言葉で伝えるのが役者の仕事」ということを私なりに理解できた作品でした。
 井上さんの言葉は、じんわりと深く心に染みわたる。人の心に言葉を伝えるというのはこういうことか、と。
 劇中に「おかえりなさい」という台詞があるのですが、ト書きに「全世界の愛を込めて」と書いてあるんです。戦死したと思われていた人への台詞ですが、「おかえりなさい」にどれだけの愛を込められるか、どう表現したらいいか、勿論今もですが、毎日考えていました。

Q.今回はどんな思いがありますか?

 とにかく若い世代に観てほしいですね。劇場に来てくれることを願っています。
 人として知っておかなければならないことってあると思うんです。“学ぶ”という堅苦しいことではなく…。その一つが戦争です。
 井上さんがある時、芝居を観にきた子どもに「戦争は過去の話じゃない。10年後の日本で起こるかもしれない。自分たちの将来に起こるかもしれない話だ」と仰っていたことがありました。その子たちが高校生になって、また来てくれたのですが、「今ならその言葉の意味がわかる」と話してくれました。井上さんは亡くなった後でしたが、井上さんの芝居の力を感じました。
「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく
 ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに 書くこと」
 このことを徹底したすごい人でした。今ならどんなことを伝えるでしょうね。

撮影.高村直希 文.田中奈都子

◾公演情報

こまつ座第152回公演
『太鼓たたいて笛ふいて』

日時:2024年12月4日(水)〜8日(日)
会場:大阪 新歌舞伎座
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ 高田聖子 近藤公園 土屋佑壱 天野はな 福井晶一 朴勝哲(演奏)
新歌舞伎座公式HP



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