7月号
harmony(はーもにぃ) Vol.53 あるウクライナ女性のつぶやき
NHKテレビで5月に放映された「ウクライナ 家族の戦場」の中で一人の40代の女性、リーダ・シレンコさんが、こんなつぶやきをしていました。
「怖いのは暴力に慣れるのが早いことです。戦争当初はすべての犠牲者が悲劇だった。でも、数日その状態が続くと犠牲者は単なる統計に過ぎなくなる。最初は死体の写真を見ると気分が悪くなった。今は何百枚の写真を見ても何の感情も沸き上がってきません。もう、怒りすら感じないのです。恐ろしいのは、この状況で生活するのに慣れてきたこと。」「数百人の住民の遺体が見つかりました。両手を縛られ、殺害された人々、レイプされた女性、子供たち。あまりにもショックが大きすぎて理解できない。
今まで生きてきてこんな絶望を味わったことがありません。非常に難しい道徳的な問いがすべての人々に投げかけられています。毎日悪魔のような行為を目にしていると、怒りと憎しみに支配される。そして敵を死ぬほど苦しめたくなるし、不幸にしたいと思うようになる。殺したくもなる。それは正しいようにも思えるけれど、でも自分の苦しみを相手にも味わわせようと考えること自体おそろしい。ウクライナ兵のことを心配しています。なぜなら人間性を失うのは簡単だからです。一度失ったら後戻りはできません。
彼ら(残虐な行為をした兵士)は家族の一員です。父であり、息子なんです。この戦争が終わったら彼らにも普通の暮らしが待っています。人間性が保てるように何かしなければいけません。」
ごく普通の平凡な人間が、戦場においては人間を殺害し、残虐な行為をすることが出来る。それは特別な人ではなく、私であり、あなたでもあるのです。耐えられない悲惨な出来事にも人間は慣れてしまう。それは生きていくために自分を守る生態反応なのでしょうか。人間性すら剥ぎ取ってしまう戦争がまだ続いています。
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