7月号
商店街がひとつになって40年。 毎年開催してきた「元町夜市」 7月26日(火)、コロナ後初の第39回開催予定
毎年、たくさんのお客さんで賑わい、元町商店街活性化に一役買っている「元町夜市」。残念ながら一昨年、昨年とコロナ禍で中止になりましたが、今年は7月26日(火)に開催が決定しました。「40年前、どんな経緯で始まったのだろう?」。次の時代を担う若手たちからそんな疑問が上がり、当時をよく知る先輩方に集まっていただき、夜市のこと、昔の元町、これからの元町のことなどお話をお聞きすることになりました。
元町夜市の始まりは
4丁目の酒好きたちの集まり
片山 お酒好きが数人集まって店の前で酒盛りをしていたら近所の人たちも集まって来た。「どうせなら地域の祭りにしよう」と始めたと聞いています。この話をずっと信じていますが間違っていたらすみません(笑)。皆さん、どうですか?
四宮 私自身は1回目からは知らないのですが、兄をはじめ当時のことをよく知っている先輩方に確認したところ、元町4丁目の青年部が数人集まってお酒とつまみで〝夜市ごっこ〟をやっていたそうです。「元町を活性化しないといかん」という話が出ていたところで、大谷靖幸さん(インテルナ キタムラ/4丁目)から「ちゃんとした祭りにしたらどうか?」と声がかかったようです。
李 坂田道治さん(トウシン/4丁目)も加わっていたかな。彼は奇想天外なアイデアマンで、「商店街に電車を走らせよう」と警察に届けも出さずに実際にやってしまってえらく怒られたようです(笑)。元々、元町商店街は夜になると賑わいがなくて寂しいから何とかしようと始めたので、夜市の始まりにも絡んでいるかもしれませんね。
四宮 店主とその家族、従業員の親睦を兼ねて年に1回、飲んだり食べたりするところから始まったので、当初はそれほどお客さんを呼び込もうというイベントではなかったということです。大丸さんも巻き込んで本格的に始めることになり、「元町夜市」と名前を付けて1982年、第1回開催。5万枚のチラシを刷りお客さんにも配ってPRしたそうです。
山口 ところが開催前日に新聞広告も出したところ、保健所から「中止してください」と通達が!届けを出していなかったんです。今では考えられない(笑)。保健所に駆け込み、「今から出します!」と、何とか開催に漕ぎつけました。
片山 初めは走水神社のお祭りの日、7月25日に合わせて開催していましたね。
蓮池 曜日が一定ではないから日にち設定で問題が起き…。
片山 午後10時に祭りが終わり片付けたら夜中の12時ごろになる。翌日も店を開けなくてはいけないからしんどいという意見が出て…。
蓮池 火曜日の開催にしてほしいと要望が出て、25日派と対立(笑)。
山口 走水さんとも相談したのですが、最終的に火曜日開催に落ち着きました。1番街から6丁目まで考え方が違い、統一できずにいろいろ問題は起きましたよ。
目的は利益ではない!
親睦を深め、楽しむこと
四宮 食べ物を手作りして、利益があれば町に上納し、赤字があれば補填しますから最終的にほとんど利益は上がらない。本来は楽しむのが目的でした。
片山 うちの母親が健在なころは、おでんのネタをたくさん仕入れて、3日前から準備していました。当日は近所の人たちがお鍋を持って晩ご飯のおかずを買いに来て、「それはちょっと違うだろう」と思ったものです(笑)。
李 最初の頃は閑散としていて、こんなに発展するとは思いませんでした。徐々に人出が増えて、最近は歩くのも大変ですからね。
四宮 店主たちの高齢化もありしんどくなってきて、つながりのあるお店や近隣のお店の出店を認めるようになりました。人がたくさん来て賑やかになり、だんだん本来の目的から外れて営利主義に走る傾向もみられました。「続ける意味があるのか」という意見が出た時期もありました。私は今、直接は関わっていないのですが良い方向に進んでいるようで安心しました。
蓮池 手づくりの祭りにお客さんが来てくれて話が盛り上がるという良さがありましたね。最近は商店街にもチェーン店が多くなってきてちょっと様子が変わってきています。前のように戻れたらいいのになあとは思っています。
四宮 テナントさんが増えてきて若い人たちもたくさん入ってきています。一緒になって自ら汗を流し、楽しむという本来の意図を引き継いで続けていってくれたらいいなと思いますね。
山口 40年ですからね、今では開催する側もお客さんも、親子孫三代にわたっています。
蓮池 たくさんの人に楽しみにしてもらっていて、「今年はいつ?」と聞かれます。
今までと同じではダメ
コロナ後初開催の元町夜市
片山 コロナで2年中止が続いたので、「今年もないの?」と聞かれ、開催が決まったのは良かったけれど…。
蓮池 今までと同じことをやっていたのでは警察の許可が下りません。今までは11メーター道路の真ん中に椅子やテーブルを置いていたのですが、「真ん中に人が行き来できるスペースを少なくとも5メートル分空けられないなら開催は無理」と言われています。
片山 保健所と消防署にも届けを出さなくてはいけません。私は保健所に何度か足を運びました。飲食店以外が食べ物を作るスペースでは三方を囲みなさいと言われています。テントなどをリースすると採算が合わない。これをどうクリアするのかを考えなくてはいけません。
李 40年間を振り返ると、商店街全体でまとまったイベントをいろいろ企画してきましたがなかなか意見がまとまらず、残っているのは夜市とミュージックウィークの2つだけです。当日までに解決しなくてはいけない問題はたくさんありますが、再開できることになって良かった。秋のミュージックウィークも今年は復活します!
四宮 一番街から6丁目までそれぞれが頑張って、連合会が一つにまとまり40年近く続けてこられたというのは元町商店街の自慢です。規模をこれ以上大きくする必要はないと思っています。「親睦が目的」という原点をもう一度思い出しつつ「お客さま第一」を付け加えて「元町らしさ」を打ち出して続けていってほしいですね。
片山 素人が集まって事故や食中毒も出さずよくやってこられたとつくづく思います。今年で39回目、ここまできたからには永遠に続いてほしいですね。マンションができて元町の住人も増えています。みんな一緒に楽しめる地域のお祭りとして続けていけたらいいなと思っています。
山口 夜市は今年で39回、そして再来年は元町商店街150周年。節目の年に盛り上がるのが元町ですからね、期待しています。
蓮池 150周年か…。元町は震災後変わってしまいました。テナントが増えて、元々の店主がやっているお店は3割ぐらいになったのかなあ。高級洋服店、ボタン専門店、べっ甲専門店など個性的な店があった昔の元町商店街を知っているだけに、残念です。そこで、一番街で考えているのが「ココにしかない店」の誘致です。例えば、地元のめがね屋さんが、子どもさん専門のめがね店をオープンしています。こういうお店にどんどん来てもらったら昔の元町に戻れるのではないかなあと話し合っています。
李 商店街の店が継続できない根底にあるのは、後継者問題だと思います。幸いうちは何とか後継者を育てることができました。きっと若い人たちが連合会の実働部隊として頑張ってくれるでしょう。
四宮 おしゃれして緊張感を持って行くのが元町商店街。昔のそういう雰囲気は残してほしいですね。大規模なチェーン店にリスペクトは持っています。しかしそれが商店街にあるべき店なのか?商店街に必要なのはビジネスの規模ではなく個性です。代々続いている店にはストーリーがあります。「お母さんお元気?」「息子さんどないしてはります?」。そんな会話があるのが商店街の良さです。これからも大事にしていってほしいと思います。
山口 元町には商店街らしさがまだ残っています。ルールがありマナーを守ってもらう街づくりを次の世代の若い人たちが受け継いでくれたらまだまだ大丈夫。街が荒れることはないと信じています。
片山 若い人たちが頑張ってくれていますね。私たちの若いころに比べたらよっぽどしっかりしている。昔は無許可で電車は走らせるわ、夜市を始めるわ…ええ加減なことやっていましたからね(笑)。
「夜市はなんで始まったの?」と、私たちが考えたこともなかった疑問を持ってこの懇談会を開いてくれたのも彼らです。私たちは〝語り部〟として知っていることを伝えていかないといかんなと気付かせてくれました。これからも若い人たちが中心になって全丁仲良くやっていってくれると思っています。
元町夜市
2022年7月26日(火)
18:00-21:00
詳しくは下記、URLよりご覧いただけます。
https://www.kobe-motomachi.or.jp/