2022年
2月号

「小さく見つけてやさしく治す」がん治療

カテゴリ:医療関係, 神戸

「小さく見つけてやさしく治す」がん治療

2013年に開院した「神戸低侵襲がん医療センター」が今年10周年を迎えます。「敷居が高い」と思われがちですが、実は誰でも受診できて、どの場所のどんながんでも小さく見つけ、最適な治療に結び付けてくれる医療機関です。「もっと広く知ってもらいたい」と言う病院長の藤井正彦さんに詳しくお話を伺いました。

実績を一つひとつ積み重ねながら迎えた10年目

―開設に至った経緯を改めてご紹介ください。
 2008年、神戸大学で設立準備会議が立ち上げられました。大学内では敷地が限られるとともに、資金面でも難しく、医療関係をはじめ地元企業など計8社からの出資を受け、11年に開設準備室設置、13年、神戸医療産業都市での民間医療機関第1号としてポートアイランドで開院しました。個室68床、多床室12床の全80床、リハビリ室を完備し、患者さんにとって最良の治療環境を提供しています。

―「低侵襲」と呼ばれる治療とは。
 外科領域で使われ始めた治療で、「患者さんの負担をできるだけ少なくする」という意味です。最初に心臓の冠動脈バイパス手術で胸骨を切り開き心臓を取り出す手術を、小さな穴を開けて心臓が拍動した状態で行うもので、この後低侵襲という言葉は次第に医療全体に使われ始めました。当センター開設に当たり、放射線治療をフルラインナップし、「切らずに治せる治療」をできるだけ広く提供して患者さんの負担を軽くしようと「低侵襲」という言葉を取り入れました。今でこそ知られるようになりましたが、当初は「何をされるの?」と患者さんに恐れられました。怖そうな言葉ですからね(笑)。

―最新鋭の治療機器を使う放射線治療なのですね。
 発展し始めていた強度変調放射線治療「IMRT」や定位放射線治療「SRT」を行う上で最も有効な組み合わせと考えられた最先端の専用装置を各1台と汎用装置1台、内訳は全国1号機「トゥルービーム」、兵庫県内1号機「サイバーナイフ」と「トモセラピー」計3台を導入し、どの部位のどんながんにも対応できるよう準備しました。

―そして、藤井先生が病院長になられたのですね。
 放射線学会の理事長を務めておられた、当時の病院長・杉村和朗先生から「一緒に教室を盛り立ててくれないか」と声をかけていただき大学に戻りました。先生の下で仕事を始めて12年がたつうち、がん医療センターの構想が進み、放射線科教授の杉村先生、そして私も准教授として会議メンバーに加わっていました。「センターの病院長」というお話を頂き、「荷が重すぎる」とお断りしたのですが、周りを見回すといつの間にか私が杉村先生の下では最年長。「やらせていただきます」とお返事し、それだけでも不安なのに、当然、杉村先生が就かれると思っていた理事長も大学関係者の兼務は法律上できないということで私が務めることになり…戸惑いながらのスタートでした。

―振り返っていかがですか。
 一言でいえば「山あり谷あり」。医療関係者でも腫瘍の治療は「手術が一番」「切らずに治す治療で根治ができるのか?」という捉え方をされる先生方が多い中、全国的にも例を見ない「手術室を持たないがんセンター」として開院しましたので、私たちの思いがなかなか伝わらないこともありました。一つひとつ実績を積み重ね、次第に理解していただけるようになりました。また患者さんからも「お陰さまで治療がうまくいきました」という声を頂くことも多くなり、さらに口コミで当センターを選んでいただく患者さんも増えてきました。

紹介状なしでも、誰でも受診できる医療機関です!

―必ず「切らない治療」を選ぶというのではないのですね。
 もちろんです。あくまでも患者さんにとって最良の治療法を見つけます。例えば胃がんや大腸がんに放射線治療は不向きですから、最も適している「切る手術」をお勧めします。私たちの独断にならないよう開院以来、週1回、神戸大学の外科系診療科外来を非常勤医師で開設してもらい、食道胃腸外科、肝胆膵外科、泌尿器科、耳鼻咽喉頭頚部科、脳神経外科を網羅し、ほとんどの場所のがんに対して手術という治療手段も選べる体制を取っています。ただし、無菌室が必要な血液のがんには対応はできません。

―紹介状が必要なのですか。
 「がんセンター」というと「紹介状を持って治療のために受診する」というイメージを持たれるかも知れませんが、当センターは紹介状なしでどなたにでも受診していただけます。がんの疑いがあるという段階で紹介状を持って受診された場合は、私たちがすぐにそれまでの経緯を把握でき、当日にCTやMRI、エコー検査などを受けていただき、その日のうちに結果説明ができ、その後の精密検査や治療を迅速、スムーズに進めることができるというメリットがあります。

―精密検査も受けられるのですか。
 通院だけでなく入院での検査も可能ですので、遠方から来られる方、検査処置や症状に不安を抱えておられる方にも安心して受けていただけます。採取した組織は神大病院病理部が診断をしてくれます。大学病院のサテライトのような存在だと考えてください。

―近隣病院とも連携されているのですか。
 最新鋭の放射線治療装置を備えてメンテナンスを続けるのは大変なことです。それぞれの病院が行おうとしても採算がとれませんし、患者さんを集積し症例数が増えると経験値も集積され、治療レベルも上がります。近隣病院との連携では、神戸大学病院をはじめ甲南医療センター、神戸日赤病院、神戸労災病院、西市民病院、神戸百年記念病院、中央市民病院などから、放射線治療の全て、あるいは高精度治療の一部を当センターに「委ねる」と言っていただいています。こちらから出向き外来診療している病院もあり、そこでの患者さんについては相互に情報交換しながら治療を進めます。

進化する最先端のがん治療

―この10年で治療法もさらに進歩してきたのでしょうね。
 治療装置は1年1回のメンテナンスの都度、バージョンアップされます。それに加え、治療の保険適用が広がり、例えばサイバーナイフは脳や頭頚部など動かない部位にのみ適用されていましたが、肺や肝臓に拡大され、さらに前立腺、膵臓、腎臓、また脊椎転移を含む少数の転移にまで拡大されています。薬物療法においては、本庶佑先生の発見に伴い免疫療法が保険承認され、非常に多くのがん治療に広がってきました。特に切る治療を諦めざるをえなくなっていた肺がん患者さんの長期生存率が格段に高まり、大きく状況が変わってきています。

―新たな「温熱療法」とは。
 緩和医療の手段として位置づけられてきた「温熱療法」を、適切な時期に放射線や抗がん剤治療と併用すると非常に効果的だと分かってきました。無作為に大きくなったがんは奥まで酸素が届かなくなり、その環境で生き延びようとどんどん悪性化します。8MHzラジオ波を使う最新装置「RF8」で深部まで加温すると、常に一定温度を保つ正常細胞とは違い、温度が上がりやすいがん細胞は42・5度を超えると死滅していきます。また深部温度が上がり、血流が改善されると抗がん剤が奥まで届き、放射線の効果も高まります。低酸素状態が改善され老廃物が出て行き酸性に傾いているがん細胞の周辺環境が中和されるなど、さまざまな治療効果が期待されます。2022年度に本格的に導入予定です。

がんの早期発見にも貢献

―藤井先生はなぜ医学を志されたのですか。
 私は淡路の田舎育ちで、大正生まれの両親は戦争に翻弄された世代です。優秀だったにもかかわらず家庭環境もあり高等教育を受ける希望を叶えることができなかった父はいつも「残せる財産はないけれど、やりたい勉強をさせてあげる」と言っていました。そんな父が、高校3年生の兄が「医学部に行く」と言ったときには大慌て(笑)。でも、希望を叶えてあげようという気持ちが強かったのでしょう…兄は医学部に進学し、続いて私も医学部に進みました。

―放射線科を専門にされたのはなぜ?
 大学6年生のとき祖父が肺がんで亡くなりました。調べてみると、当時の神戸大学で肺がん治療をするなら外科か放射線科。外科は体育会系だから自分にはちょっと無理だなと放射線科を選んで入局したのに、初月給を貰った途端に、シングルプレーヤーの教授にゴルフショップへ連れて行かれ、強引にクラブ一式そろえさせられ、「2年以内に100切らないと破門!」と体育会系の洗礼を受けました。今では趣味として楽しんでいます。

―最後に今後に向けての抱負をお聞かせください。
 基本理念「小さく見つけてやさしく治す」の「小さく見つけて」という部分、がんの早期発見に今後もっと貢献したいと思っています。そのためには、決して敷居の高い病院ではないことをPRし、外来受診をしていただけるように努力していきたいと思っています。また集団検診の受け皿としての検査施設の役目を担い、PET検査を含めいろいろながん検診を希望に沿って実施していますのでご相談ください。将来的には血液中の遺伝子レベルでの検査ががんの早期発見の主流になると考えています。
 病院の運営に関しては2月中旬からクラウドファンディングを立ち上げました。当センターの理念をご理解いただき、ご協力をよろしくお願いいたします。

屋上庭園


屋上庭園


サイバーナイフ


トラルービーム


個室は68床

神戸低侵襲がん医療センター 理事長兼病院長
藤井 正彦(ふじい まさひこ)

1957年生まれ。淡路市出身。神戸大学医学部卒。がん診療に携わるため、放射線科を選択。県立がんセンターなどで研修後、米国エモリー大学に留学。帰国後は三木市民病院で8年間勤務。2000年から12年間神戸大学医学部附属病院で勤務。その間に、現在の病院の設立準備委員会に参加し、2013年4月の開院時より現職

医療法人社団 神戸低侵襲がん医療センター
Kobe Minimally invasive Cancer Center (KMCC)

所在地/神戸市中央区港島中町8丁目5番1
電話番号/予約専用ダイヤル 078(304)4100
電話 078(304)4100(代表)
病床種別/一般病床
届出・許可病床/80床
(急性期一般病床 60床・地域包括ケア病床 20床)
https://www.k-mcc.net/

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