2021年
9月号
9月号
神戸で始まって 神戸で終る ⑲
2012年11月3日。横尾忠則現代美術館のコケラ落とし展は「反反復復反復」展と題したまるで暗号のようなタイトルの展覧会名だ。オープニング展ということもあって、強烈な印象を植えつけたかった。僕の作品の特徴として、過去に制作した作品を時間を経て同一モチーフと形態を利用して反復するという傾向の作品をしばしば制作してきた。
例えば初めて絵画作品を描いた1966年の「ピンクガールシリーズ」を36年後に反復するという実験が反復作品の出発であった。反復の切っ掛けは2002年に東京都現代美術館で「森羅万象」展が開催された時、「ピンクガールシリーズ」を展示することになったが、そのシリーズの中の2点が海外に流出していて行方不明のために、再制作することになった。幸い写真の資料があったために自作の模写をすることにした。この時点まで反復意識は全くなかった。
寸分違わぬ同じ作品が2点出来たことに僕は不思議な感動を覚えた。と同時に同一作品を複数化することに新境地を開拓する一種のアバンギャルド精神が僕の中で発酵するのを感じた。過去の絵画歴史を見渡すと、エル・グレコ、ジョルジュ・デ・キリコ、クロード・モネ、ジャスパー・ジョーンズ、アンディ・ウォーホルらがすでに反復の先鞭をつけていることに気づいた。
美術家 横尾 忠則
1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。横尾忠則現代美術館にて9月18日より「横尾忠則の恐怖の館」展を開催。
http://www.tadanoriyokoo.com