2016年
10月号
野球とは生きていくための道具

連載コラム 「第二のプレイボール」|Vol.20

カテゴリ:, 教育・スポーツ

Vol.20 「野球ひとつで世界を渡り歩いた異色のメジャーリーガー マック鈴木さん」

文・写真/岡力<コラムニスト>
引退後にさまざまな世界で活躍する元プロ野球選手の「今」をご紹介します。

 「二ヶ月間のバイト代から諸経費が引かれ、手元に残った600ドルを握りしめ渡米しました」。そう語るのは、NPBを経験せずメジャーのマウンドに初めて立った日本人、マック鈴木さん。神戸市須磨区で生まれ小学2年から野球を始める。地元ボーイズリーグ「神戸須磨クラブ」を経て強豪高校のセレクションを受け合格。しかし高1の冬休みに自主退学する。日本での居場所がなくなり17歳で単身渡米を決意。ボーイズリーグで指導を受けた西口監督の伝手を頼りアメリカのマイナーリーグ1A「サリナス・スパーズ」の球団職員兼練習生として所属する事となった。当時、球団のオーナーを務めていたのは後に「交渉人」として注目をあつめる団 野村氏だった。
 ユニホームの洗濯、球拾い、売店での氷詰め・・・球団内の雑務を全てこなす毎日。正直、野球どころではなかった。食事は、安価で手に入ったフルーツと余ったホットドッグを食べてしのいだ。しかし、その年の最終戦でチャンスは突然訪れる。消化試合の中継ぎではあったが起用され好投。アメリカの地でプロ野球選手としての第一歩を歩む。 
 1996年、2Aの序盤戦で好成績をおさめマリナーズへ昇格。迎えた七夕の夜、ついにメジャーの舞台に立った。1998年には初勝利を記録。プロ入りから7年という月日が流れていた。メジャーでは、6球団に在籍。そして2002年、故郷・神戸の球団「オリックス・ブルーウェーブ」に入団した。オリックス退団後は、ドミニカ、アメリカ、メキシコ、台湾、ベネズエラ、カナダと野球ひとつで世界を渡り歩いた。2011年、独立リーグ「神戸サンズ」の選手兼任監督に就任。その年のオフ、現役生活にピリオドをうつ。
 引退後は、ジムのプロデュースと長田区に校舎を構える「ジャパンアスリートクラブ」で小・中学生を対象に野球の指導を行っている。「野球を介して子供たちのコミュニケーション能力と語学力を高めたい」と語るマック鈴木さん。今日も神戸の地で世界に通用する野球人を育成している。

20161008502
■著書紹介
「漂流者 野球さえあれば、世界のどこでも生きていける」(マック鈴木)
定価:1200円+税
発行:(株)アンドブック
発売:(株)三交社

野球とは生きていくための道具

野球とは生きていくための道具

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

  • 電気で駆けぬける、クーペ・スタイルのSUW|Kobe BMW
  • フランク・ロイド・ライトの建築思想を現代の住まいに|ORGANIC HOUSE
〈2016年10月号〉
有馬の街歩き新発見
企業経営をデザインする⑨お客様のニーズにお応えして愛される旅館づくり
対談/進化する名門私立中学校 第2回 神戸女学院中学部
連載 ミツバチの話 ③
おとな旅・神戸 ワンランク上の神戸を楽しむ
美しい心を育む 品格ある建築W・M・ヴォーリズ設計による 神戸女学院 岡田山キャ…
神戸市医師会設立60周年 会長インタビュー 地域医療を支えて60年
早くて安い!神戸空港からひとっ飛びの旅!!|神戸〜鹿児島の飛行機旅(後編)
有馬温泉がスゴイ理由(ワケ)
芦屋山手のフロントライン「東山町」 その 四
“特別なもの”との出会い ベール・ド・フージェールの家具 3
第4回 神戸洋藝菓子ボックサン
「西神飯店」 「神源」誕生秘話 ④
なるほど医学体験「HANSHIN健康メッセ」開催
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第六十五回
ガゼボショップが提案する“上質なくらし”④
いかりの美味しさ ∞ むげんだい
関西の働く女性を応援し続けて11年 「ACCJ関西ウォーカソン」
人生無 一 事
スイス高級時計産業の芸術性を伝えるために
連載コラム 「第二のプレイボール」|Vol.20
第67回 豊公を偲ぶ有馬大茶会
連載エッセイ/喫茶店の書斎から ⑤  北山冬一郎その後
兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第三十二回
神戸鉄人伝 第82回 石田 皓山(いしだ こうざん)さん
YANASE CELEBRATION ヤナセ セレブレーション
“事故のない明るい兵庫はあなたから” 〜安全で快適な交通社会「兵庫」の実現を目指…
神戸のカクシボタン 第三十四回 神戸のご当地飲料「アップル」
Power of music(音楽の力) 第10回
文化の融合が、独自の邸宅文化を生んだ『芦屋の和洋館よとわに』