2021年
6月号
6月号
映画をかんがえる | vol.03 | 井筒 和幸
「やっぱり邦画より洋画やね。世界が分かるし、リアル感が違うな」と高校の映研部の先輩たちが得意げに話していた。だから、16歳のボクも負けてなるかと洋画を追っかけて見まくった。時代の潮流やその先端を探すことに夢中だった。
確かに、その頃に見た悲壮過ぎる『連合艦隊司令長官 山本五十六』や幸せそうな加山雄三の『若大将』シリーズよりは断然、ダスティン・ホフマン主演のニューシネマ『卒業』や、トルーマン・カポーティ原作の『冷血』、カッコいいスティーブ・マックイーンの『ブリット』などはどれも新鮮だった。アメリカの乾いた空気感の中、登場人物たちは人間臭く、舞台劇風な説明口調でなく、さらりと台詞を言ってのけ、すぐさま少年の心を虜にするのだった。
今月の映画
ブリット(1968年)
砲艦サンパブロ(1967年)
PROFILE
井筒 和幸
1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。