2021年
5月号

BE KOBE ミライPROJECT

カテゴリ:神戸

支えられた人は やがて 支える人になる

社会から取り残された子どもたちとその家庭を支援する団体が神戸市内にはたくさんあります。
支援団体と地元企業や一般市民、学生たちをつなぐプラットフォームとして「BE KOBEミライPROJECT」を立ち上げた一般財団法人大吉財団理事長の山本吉大さんと活動を支える若いボランティアスタッフに集まっていただきました。
コロナ禍の今できることを模索しながら支援の輪を広げています。

―大吉財団設立までの経緯は。
私は1993年、23歳で洸陽電機(現 シン・エナジー)を起業しました。お陰さまで会社は順調に成長し、JCでは子ども支援活動に力を入れていました。ライフワークとして本格的に始めようと2017年、会社を後進に譲り経営から退きました。非営利団体として何をやりたいのかを、当時お世話になっていた方々にお話しし協力を得ました。そして、それまで広報担当の管理職として私の力になってくれていた青井君(事務局長の青井介さん)に「一緒にやってくれ」と頼み込み、「一般財団法人 大吉財団」設立に至りました。

―会社の経営から退くという大きな決断をさせた原動力は。
子どものころの体験が原動力になっています。私はいわゆる「貧しい」環境で育ち、14歳で働き始め家計を支えました。勉強をする環境にはなかったのですが、本を読むのが好きで、でも買えなくて…廃品回収のおじさんに貰って、次の回収の日に返しに行く、そんなことをやっていました。高校時代はアルバイトをして、その続きのように社会に出ました。そしてもう一つの大きな原動力は、阪神・淡路大震災で九死に一生を得た経験です。その当時、お世話になった人たちに何か恩返しはできないかと考えました。

―「BE KOBEミライPROJECT」とは。
財団で活動を始めてみて分かったのですが、神戸市内には子ども支援をする団体がたくさんあり、それぞれがすごくいい活動をしているのに、一般市民や学生、地元の企業には全く知られていないのが現状です。活動を最大化していくには一つにまとまったプラットフォームが必要なのではないかと考え、産官学が連携する「BE KOBEミライPROJECT」を2019年に立ち上げました。同時に「BE KOBEミライ基金」を開設し、「BE KOBE」ブランドを活用した経済活動で得た収益を編入し、団体への助成金として活用しています。同年10月3日に活動する側と地元企業など支援する側をつなぐ橋渡し的な役目を果たす発表会「BE KOBEミライセッション」を、助成金審査会を兼ねて開催しました。その結果、応募いただいた12団体全てに助成金を交付することになりました。

―どういった活動を支援するのですか。
子どもはみんな夢を持っています。現実に直面しながら手放していくものですが、家庭や外部の環境で手放さざるを得ないということが続くと、「どうせ自分が努力しても仕方ない」という考えになっていきます。そういう現状を何とか減らそうと子どもたちにチャンスを与えている多岐にわたる活動を支援します。例えば、大学生ボランティアが中心になり、高校受験をしたいけれど塾に行けない子どもたちの学習支援をする「神戸みらい学習室」です。貧困をはじめネガティブな要因の連鎖を断ち切るのは、教育です。経済的な事情で教育を受ける道を断たれることがあってはいけません。「神戸みらい学習室」では現在40~50人の中学生が学んでいます。自分が定めた目標を達成して進学した子どもたちは「次は自分たちが支える立場になる」という思いを語り、卒業していきます。

―「神戸こども宅食プロジェクト」も始まりましたね。
コロナ禍に見舞われ、「活動も無理かな」という思いもあったのですが、「大人は困っているけれど、声をあげられない子どもはもっと困っているはずだ」と気付きました。昨年12月に久元神戸市長と面談し、宅食をはじめできることをやっていきたいという意向をお話しさせていただき、まず北区で児童扶養手当を受給しているひとり親家庭約100世帯に食品を配る実証実験を実施しました。女性配送員が踏み込み過ぎず、ゆるやかなに見守りながら各家庭の状況や問題を把握します。配る食品は日持ちがするもの、お母さんがサッと調理できるもの、たくさん食べられるもの、子どもが好きなものなど考慮して選び、寄付いただいた品や購入品を配ります。多くの子どもたちは普段食べたいものを我慢しているのでしょうね、アンケート結果によるととても喜んでくれたようです。財団からは図書カードを寄付し、これもすごく喜んでもらえたようです。今年中にあと5回届ける予定ですが、課題は食品をどう調達するか?困窮する家庭の子どもたちに一人でも多く届けられるよう、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

―コーヒーの活動とは。
私の硬い話はおしまいにして、中心になって活動している若い人たちから紹介してもらいましょう(笑)。

売って楽しい、飲んで美味しいプロジェクト
BE KOBE Specialty Coffee

「ポーアイにおもしろい焙煎屋さんがいる」。ミライプロジェクト立ち上げ直後、プロデューサーの丸山僚介さん(KIITOチーフ)のひと言から「BE KOBEスペシャルティ コーヒー」は生まれた。
コーヒーの利益を用いて、国内外のさまざまな社会貢献活動の支援をする「LANDMADE」代表で焙煎士の上野真人さんの協力を得て、「地域課題を解決するコーヒー」を作るワークショップを3回にわたって開催。学生ボランティアたちが中心になって企画・開発を進め、約2カ月後の7月、初めての活動として「神戸みなとまつり」でチャリティーブースを出展した。「カウンターは、伐採した市内の街路樹の端材を株式会社三栄さんにご提供頂き、兵庫区の工房MAR_Uさんご協力のもと、学生たちと一緒に手作りしました。コーヒーバッグのパッケージデザインは北区に実家があるイラストレーター井上たつやさんにお願いしました。ワークショップにも参加して意見を交わしながら制作してくださって、イラストには学生たちのアイデアがいっぱい詰まっています。支援を募る側、募金する側の間にコーヒーを据えることで一方通行ではない、それぞれが楽しく参加できる支援の形が生まれ、『コーヒーを選んでよかったな』と実感しています」とこれまでの活動を振り返る丸山さん。収益の一部がミライ基金に入ることはもちろん、コーヒー豆の生産地であるエチオピアの子どもの支援にも使われている。
「コロナの影響もあり、どのように流通させ、皆さんに手に取ってもらうかがこれからの課題。賛同いただける方の得意を活かしながら、楽しく着実に社会課題を解決していきたい」と、コーヒープロジェクトを主導する大吉財団の井出山沙織さんは話す。

吉見凌さん(甲南大学4回生)

2回生の中ごろ、サークルなどに入っているわけでもない僕の学生生活は…朝起きて学校行って、バイト行って、たまに遊んで…そんなことの繰り返しで、「このルーティーンで4年間を終わるのはもったいない」という思いがありました。ボランティアに興味はあっても僕の中には「履歴書のため、就活のためにやっている」というイメージがあり躊躇していた時、このプロジェクトを知りました。「好きなコーヒーで社会や神戸の街に貢献できるのなら」とワークショップに参加してみたところ、みんなが本気で取り組んでいる様子を見て本格的にやってみようと決めました。学生生活では出会えなかっただろういろいろな人たちとのつながりができて、大きな刺激を受けました。今後もできる限り時間を取ってこのプロジェクトの活動を続けていきます。

西牟田晃弘さん(甲南大学4回生)

吉見からこのプロジェクトのことを聞き、最初は「楽しそう」という好奇心で行ってみたのですが、だんだん積極的に参加するようになりました。生まれ育ったのが神戸ではない僕は活動を通じてこの街が好きになり、活気づけることをやりたいという思いが強くなりました。卒業後も積極的に参加していきたいと思っています。

南千裕さん(神戸学院大学3回生)

大学のボランティアセンターからのメールで活動を知り、参加しました。3回のワークショップでは大人の方たちに助けられながら、みんなが思い描いていることを形にしていく作業を楽しみながらできたと思っています。私は神戸出身ではないのですが、この街のことが身近に感じられ、「第二の故郷」のような気持ちになりました。私は4月から4回生。有望な後輩メンバーもいますが、もちろん先輩方も積極的に参加してくださると信じています(笑)。
※学年は2021年3月時点

BE KOBE ミライPROJECT

一般財団法人大吉財団理事長 山本吉大さん

吉見凌さん

西牟田晃弘さん

南千裕さん

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