4月号
神戸で始まって 神戸で終る ⑮
1995年1月17日、阪神・淡路大震災の年の10月に兵庫県から「HYOGO AID by ART」のための委員として国内のアーティストにポスターを依頼してもらえないか、という話があった。僕はかつて神戸に住んでいたが、現在は東京に住んでいるので、むしろ地震の被害者である、県内に居住するアーティストに委員のメンバーとして参加してもらうべきではないかと提案した。そこで白髪一雄さん、元永定正さんの元具体美術のメンバーの2人に加わって貰うことにして、約20人の画家、造形作家、写真家を推薦することにした。そして集められた原画を展示すると同時に複数枚数を印刷し、そのポスターの売上げ金を地震の被災者の援助資金にあてることにした。
そして「HYOGO AID by ART」のセレモニーはまだ地震の爪痕の残る明石公園の仮設舞台で開催され、当時の兵庫県知事の貝原俊民氏にポスターの売上金の目録を差し上げた。
この「HYOGO AID by ART」のあった翌月、さらに「ART POWER」と題する個展の依頼を受けた。場所は六甲アイランドで、広い空間の壁いっぱいに絵画作品を展示することになった。まだ地震の被害の復興は遅々として進んでおらず、街のあちこちに青いテントが目立ち、街からは生気と活力が消えて、被害からまぬがれた住民の表情にもまだ暗い陰が差していた。そんな沈殿した空気の中から、何とか立ち上ろうという動きが、若い人達を中心に地元の有志によって、ART POWER実行委員会が組織され、神戸出身者であるぼくの美術展が計画された。
美術家 横尾 忠則
プロフィール
よこおただのり 美術家。 1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、小説「ぶるうらんど」で泉鏡花文学賞、「言葉を離れる」で講談社エッセイ賞受賞。愛知県美術館にて「GENKYO 横尾忠則」展を開催。(4月11日まで)
http://www.tadanoriyokoo.com