10月号
スイス高級時計産業の芸術性を伝えるために
今年、創業110周年を迎えた高級時計宝飾専門店カミネ。9月3日、110周年記念事業のひとつとして「Le Garde-Temps-Naissance d’une Montre(時を計る、時計の誕生)」の公開取材がホテルオークラ神戸で開催された。
近年、スイスの時計業界では、高度な工作機械を取り入れることで、古くから「手づくり」による時計製造を行う職人たちが減っていっている現状がある。このことに危惧を感じていた時計界の巨匠・フィリップ・デュフォー、グルーベル・フォルセイらが2007年に「Time Aeon」という財団を結成。そして、そのプロジェクトは「ガルド・タン プロジェクト」としてスタートした。
このプロジェクトは、最も伝統的で古典的技法による時計を、パリの時計学校の教師ミッシェル・ブーランジェ氏が11本だけ製造し、それを販売することで、若手時計師の育成のための基金にするというもの。この「ガルド・タン プロジェクト」に、日本の時計店として賛同するのがカミネ。この11本のうちの1本をカミネが扱い、またその1本はプロジェクトの意義に賛同されたお客様が即決し、2年後の納品が決定している。
記念すべき1本目は、2016年6月の香港・クリスティーズオークションで、約1億5000万円で落札され、クリスティーズ史上初めて落札金が活動基金に寄付されることとなった。
この11本の時計には、「フィリップ・デュフォー」「グルーベル・フォルセイ」のダブルネームが刻まれており、最初で最後の名作になっている。
上根社長は、「営利目的ではなく、伝統的な時計技術継承への願いと歴史に対するリスペクトが介在するこのプロジェクトに110周年記念事業のひとつとして参画できることを心から光栄に思います」と話をした。