2020年
7月号

「神戸で落語を楽しむ」 シリーズ  噺家たちの ステイホーム

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 文化人, 神戸

新型コロナウイルス感染症の予防対策で喜楽館をはじめ寄席が休業。
舞台上から笑いを届けてきた落語家たちもステイホームに。突如訪れたこの事態に、何を考え、何をしていたのか。神戸出身の3人が、久しぶりにテーブルを囲みました。場所は、桂あやめさんがオーナーのお店「キラ☆クウカン」。オリジナルビール「ワラエール」とともに。

まずは、元気に集まれたことに乾杯!

銀瓶 僕、久しぶりですよ、噺家と話すの。
あやめ 昨日、月亭遊方君と露の新幸君の3人で落語会やったんよ。コロナ対策をとったら10人しか観客入れられなかったけど、手応えあるねぇ。無観客とは全然違うよ。お客さんも生の舞台が久しぶりやから、すごい面白いいうて。一人一人が責任感もって笑ってくれるから、一人の笑う量が多いねん。また、笑っている人たちを見ている人も楽しそうで。
福丸 無観客はノリも間もなんか違うんですよね。今までスベっていた人は、無観客の方が精神安定しているそうですよ。ウケへんけどスベらへん。
あやめ いつも笑いが返ってこないから、メンタル強いんや!
銀瓶 誰のことやねん、それ! ひどいこというなぁ。福丸君は。
福丸 ちがうちがう!誰か知りませんて。

落語文化消滅の危機!?

銀瓶 いち早くテレワーク落語会をやり出したのが福丸君や桂紋四郎君でしょ。
福丸 紋四郎君コロナ前からネット配信をやり始めていたんです。Zoomを使ったのは、関西では僕ですかねぇ。
銀瓶 自分でやろうと思ったん?誰かの助言?
福丸 新聞の取材で、桂南天、桂かい枝、桂福丸、桂華紋の4人をZoomでつないで、今の状況を話すことがあったんですよ。その時に「Zoomで落語会できるんとちゃう」って。その日のうちにイベントを立ち上げて、連携できるチケット販売システムを設定して、配信環境を整備して、それで終わり。会場を借りる訳でもないし。
銀瓶 「それで終わり」って言うけどな。何のことやねんて思うで。やっぱ賢いわ。
あやめ そら灘中、灘校、京大やもん。こういう人が、噺家を新しいことに近づけてくれるんやね。でも有料にするってのが難しいね。タダなら、YouTubeで誰でもすぐできるのよ。
福丸 有料化が一番難しい。あと「生の落語会の方がええやろ」と言われるけど、それは当たり前でね。今まで劇場や寄席でやってきた世界が潰れてしまう危機感があって、Zoom寄席をやってみたんですよ。
あやめ そう、「寄席がなくてもいいや」ってなってしまう危機感ね。
福丸 大須演芸場(名古屋)が閉鎖の危機ってニュースもあって、一回潰れた文化は元には戻らへんから、何としてでも残さなアカンというのがあったんです。
銀瓶 ということは、落語文化消滅の危機まで感じたわけ?
福丸 落語家がいなくなるとかって意味じゃなくて、誤解を生むかも知れんけど「セミプロ化する」と思った。仕事がない状態が1年続いたら、ほとんどの人が食べて行けないから別の仕事を兼業するわけじゃないですか。それが普通になったら、落語自体がメインじゃなくなって、芸の質が絶対変わるだろうし。
銀瓶 すごいすごい。そこまで考えてたん。
福丸 自分がそうなりたくないなっていうのがあって。子どもが大きくなるまでは、お父さんの仕事は「落語家」って言いたいから。
あやめ 私らの仕事って、こんな一瞬にしてなくなるんやって、びっくりしたよな。新聞か何かに「こういうことで仕事がなくなった人は、普段からもう一つくらいお金をもらえることを考えておきましょう」って書いてあって。そうかも知れんけどなぁ。
福丸 だから落語家として今できることを、なんでもやってみようって。このコロナ禍は、僕の中では神戸で被災して以来の人生観が変わった出来事なんです。そうそう簡単には戻らないと思うし。
あやめ 阪神・淡路大震災後、チャリティーやボランティアでのタダの公演ばかりやっていて。いつかまた落語に千円、二千円払ってくれるようになるんかなって不安やったの。けど、半年もたたんうちに元町の恋雅亭が開いて、300席のチケットがすぐに売り切れ。通路にまでお客さんが座ってパンパンに入ったのよ。あの大変な時に、自分でお金を払って見に来たいって人がいてくれたことが、すごくうれしかった。今もお金払って見たいって言ってくれている人がいるから、早く環境整えて再開したいよね。

ステイホームは、会われへんかったものとの再会の場

銀瓶 休んでいる間、何してました?
あやめ コロナの間に太ったら当たり前でしょ。「しばらく会わんうちに、見違えるくらい痩せたね」って言われたかったけど痩せへん。慣れん腹筋や側筋、背筋を毎日やっているけど、痩せへん。
銀瓶 だって、食べるでしょ。
あやめ うん。娘も高校休みで3食家で作るし。女子高生って年齢的にスイーツにハマるわけやん。コーヒーゼリーとか抹茶プリンとか娘が作るの。作っては食べ、作っては食べしていたら育つわな。
銀瓶 そら、そうなるわ。
あやめ あと、めっちゃ断捨離した。前からずっと大掃除したかったから。それと、タンスを風通しのええとこに動かしたくて。いらんもんをどんどん捨てて、やっとタンスが動かせるようになったけど重い。近所にいる甥の林家染八を呼ぼうと思ったけど、わざわざ呼ぶのもなぁって。引き出しを全部出しても持ち上がらへんし、何か手はないかなとブルーシートを敷いて、タンスの角をテコの原理でちょっちょっちょっと動かしながら乗っけて引っ張ったら動いてん。桐のタンス3棹、1人で動かしました。
福丸 すごいですね。
あやめ こういう時に「わたし、ひとりで運べないんでちゅ~」って男呼べば、なんか始まるんやろね。
福丸 運びきったらアカンです。
銀瓶 「運べないんでちゅ~」は、桂花枝の頃はできた。あやめになったらもうアカンねんて(笑)。断捨離って、何を捨てました?
あやめ ベランダにね、4mくらいある角材が5本あったんよ。父親が何を作ろうと思ってたのか、どこからどうやって運び込んだのか全くわからへんねんけど、10年くらいずっと雨風浴びてコケも生えてて。捨てるには1mに切らなあかんいうから、ノコギリ出してきて切りましたよ。
銀瓶 それも1人でやったん?
あやめ やったやった。ほんまによう働いた。この休みでオッサン化がまた進んでしまったわ。
銀瓶 僕は執筆をしてたんですよ。Web雑誌で落語について書きませんか?って話を頂いて。それと前にエッセイ集を出した出版社の社長さんが「また本を出しませんか」って言ってくれてね。今、自叙伝を書いているんです。たくさんの方が亡くなって自分もいつ死ぬかわからへんなって、人生観が変わったというか、何か残しておこうって、思ったんです。書きながら資料探すついでに片付けていたら、いろいろ出てくるのよ。高校時代の冊子やウチの師匠(笑福亭鶴瓶)が僕のために書いてくれた文章の原版がでてきたり。そんなん、コロナがなかったら整理してへんもんね。
あやめ 私も写真がいっぱい出てきた。人からもらって、チョロッと引き出しに入れといた写真とか。そうや、17年間探していたものが出てきてん。
銀瓶・福丸 何?何?
あやめ 憧れの茶道の先生がいてね。17年前に娘が生まれてすぐ「おめでとう!僕はこう見えても子守は得意やから、いつでもご用命ください」って、すごく優しい手紙くれて。いつか娘に見せようと大切にしまってたはずがないねん。娘も茶道をやるようになって、中学で茶道部の部長もやってたから、あんなエラい先生が、こんなこと書いてくれたんやでって見せたいのに、探しても全然見つからなくて。「捨てたんやろか?」と思ってたんが、17年ぶりに出てきたのよ。ノコギリが入っている引き出しから。上の方の引き出しに手紙とか入れているんやけど、よくあるやん、奥の方に引っかかってたのがポトンと落ちたみたいな。それが、ノコギリの上。ちょうど、その人からいただいた着物を、虫干ししてた日に。会われへんかったものと会えたのも時間があったからなんよね。
福丸 僕は子どもを連れて公園に行ったりしていました。池でザリガニすくっていたら、知らんおじさんが通りかかって「カブトムシ捕れるとこ知ってるか?」って言うてくるから「こんなところで捕れますのん」って聞いたら、業者も捕りに来るとこがある、と。行ってみたら、5分ほどで10匹捕れたんです。
あやめ・銀瓶 え~~~!
福丸 生まれて初めて自然のカブトムシを見つけて、それがボボボボボっているんですから。それがひとつ。「カブトムシマスターに会った!」です。あと、ネット配信で「ABEMA(アベマ)寄席」っていうリモート落語会をやったんです。5月に1回目のABEMA寄席が落語協会主催であったんです。江戸落語をね。その次の日に、かい枝兄さんとかと
Zoomで喋っていて「2回目があるんやったら、上方落語やって欲しいなぁ」って。どこに言うたらいいのか調べていたんですけど「Abemaの藤田社長に直で言いましょう」ってなって、「ぜひ2回目は上方落語で」ってTwitterのコメント欄に書いたんです。そしたら社長さんが対応してくださって、2回目が上方落語になったんです。言うてみるもんやなって。
銀瓶 やっぱり、行動力が必要やねぇ。

家族との絆、それぞれ

あやめ 銀瓶君とこ、家族で麻雀してなかった?
銀瓶 僕と嫁さんと娘。3人打ちでやるんです。娘には中1くらいから教えて、息子にも教えたんですけど、息子はあんまり好きにならなかったみたい。僕が一番強いから、気をつかってリーチとかするんですよ。リーチってのは、つまり「もうあがれるよ」っていう宣言をするんです。リーチなしでも上がれるんですよ。黙っといて「はい!ロン!」ってしたら、ちょっとした悪モンになるわけ。だから、はじめはリーチしてたんやけど、だんだん容赦しなくなった。娘がね、成長してきたのよ。「うまなったなぁ」いうて、何をほめとんねんって話ですけど。そやけど、家で食事するのが月のうち10日くらいやったのが、今はほとんど毎日でしょ。緊張しましたね。何喋ったらえんかなって。だんだん慣れてきたけど。僕の家やのに不思議や。
福丸 でも、こんなに家族が一緒にいる事は今までなかったですよ。
あやめ 娘が今までしなかった洗濯物を干したり、洗い物したり。自分も同じように食べて、同じように生活しているから空気を感じて、かな。「これやっとこか」とか「今日はご飯なんか作ろっか」とか、ネット見てね。家事って、なかなか大変やし時間がある者がやるんかな、みたいなことをちょっとは思うようになったんか、母親が「失業した〜失業した〜」言うてるから、自分もなんかせなと思ったかな。バイトもしてるんよ。「ほな、仕事行ってくるわ」言うてる娘の背中を見るのが悲しいねん。噺家にもよくいてるやん。嫁が毎日仕事行くのを「行ってらっしゃ~い。洗濯物干しとくな」みたいね。
銀瓶 コロナの前からな。うちもそうや。嫁さんはコロナ前にパート辞めたから、息子と娘のおかげで食うてましたよ。今もや。
あやめ 「しっかり働いてきてね」ってなるよね。
福丸 僕のとこも、嫁さんがずっと仕事。僕が7歳と4歳の子どもの面倒を毎日見てました。人の少ない山の中の公園まで1時間くらいかけて車で行って、遊ばしたり。
あやめ 掃除したりご飯作ったりは?
福丸 それはしないんですよ。掃除や洗濯は僕がやったらぐちゃぐちゃになるから。布団は絶対雨降らん日は外に干すとか、家事のパターンを覚えるのが難しくて。
あやめ なんでやねん。でも、家事をしない人がたまにやると、なんでここにコレ置いてるのとか、なんでコレここにある?とかなるのよ。
福丸 今後仕事が戻ってくれば、こんなに長い時間子どもといることはなくなるし、大きくなったら相手してもらえないし。この年の数ヶ月間をずっと一緒におれたのは良かったのかなぁ。

寄席の再開へ、喜楽館で会いましょう

銀瓶 まぁ3人ともコロナ禍でも有意義に楽しく過ごせたみたいですね。
あやめ 普段目を向けなかったもんに目を向ける機会でもあったし、家の中でもいろんな発見があって。
銀瓶 噺家みんなが自粛中に何してたっていう話があるんでね。マクラのネタにして。お客さんの前にお届けできる日が、すぐそこまできてます。このコロナ禍を耐えてきたパワーで、がんばっていきましょう。ひとつ、今後とも上方落語を
全員 よろしくお願い致します。

神戸新開地・喜楽館

TEL.078-576-1218
新開地駅下車徒歩約2分
(新開地商店街本通りアーケード)

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