2020年
7月号
(実寸タテ10㎝ × ヨコ4.5㎝)

連載エッセイ/喫茶店の書斎から ㊿  ラジオ出演

カテゴリ:文化人, 神戸

今村 欣史
書 ・ 六車明峰

ラジオ関西の「まっこと!ラジオ」という番組に出させていただいた。「人物事典」という15分ばかりのコーナーである。
園田学園女子大学名誉教授で歴史学者の田辺眞人さんがお相手して下さり、アシスタントはタレントの上原伊代さん。
きっかけは、わたしが神戸新聞に書かせていただいた「触媒として生き抜いた」という宮崎修二朗翁への追悼文。そしてその直後に朝日新聞に掲載された、拙著『完本コーヒーカップの耳』についての記事を田辺さんが読まれたことによる。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中ということで、残念ながらわたしはスタジオのお二人とつないだ電話での出演となった。
田辺さんは、「前から出ていただきたかった」とおっしゃる。というのも、以前本誌に連載していた「触媒のうた」を読んで下さっていたのだと。
「あれは面白かったですねえ。わたしも宮崎さんとは古くからの知り合いで、『環状彷徨』(宮崎修二朗著)の出版記念会にも出席しましたよ」と。
「その話なら」とわたしも前のめりになって、つい早口に。
「宮崎先生は数年前に、ご自分の著書も含めて一万冊に上る蔵書を処分されたのですが、『環状彷徨』だけは肌身離さず持っておられて、亡くなられるまで無数の書き込みや挟み込みをしておられました。もう一度改訂版を出すおつもりで」
そのあと話は神戸の歴史家、落合重信氏のことへ。

落合重信=1912年~1995年。郷土史家。三重県生まれ、神戸育ち。神戸史学会を創立し、委員として長く神戸の歴史に関わる。著書、『神戸の歴史』など多数。

落合氏については宮崎翁から何度もお話をお聞きしていた。本誌連載の「触媒のうた」でいつか取り上げたいと思い、神戸市立中央図書館には落合氏の『わが心の自叙伝』があるのを知り大倉山まで出かけて行ったこともある。
だが、その自叙伝は本にはなっておらず、神戸新聞に連載されたものを落合氏自身がコピー製本したものだった。裏表紙には当時の落合氏の住所印が押されている。
貸し出し禁止になっていたのでコピーさせていただき、それは今「喫茶・輪」の書架にある。
驚いたのは、落合氏の経歴。なんとわたしと同じ、お米屋さんのご子息なのだ。そしてこんなことが書かれている。

《私は、著書のあとの略歴に、いつも「学歴ナシ」と書いている。》

これについては面白いエピソードが記されているが、要するに氏は「夜間中学講習所」というのを出たあと、旧制中学(県立三中)へ入り、そして二ヵ月で病気中退しておられるのだ。だから学歴は無きに等しいというわけ。
これはわたしとほぼ同じではないか。
わたしは中学三年生の後半を午前中だけ授業を受け早退していた。そして、県立高校へ入るのは入ったが、一カ月ほどで中退した。そんなわけでなんと身近な人だろうと思ったのだった。
でもその後の人生は全く違います。落合氏は兵庫県の文化史に残るような仕事をなさった人。比してわたしは“何をか言わんや”である。
落合氏と宮崎翁との関係だが、これが面白い。
ほかのところにも書いたことだがお許しを。
「人の縁とは不思議なものですねえ」とおっしゃる宮崎翁がまだ二十歳にも満たない頃の話。
千葉県野田市の興風図書館(現野田市立図書館)で勤務しながら手当たり次第に本を読んでいたと。そんな時、「図書館雑誌」に載った論文に大いに興味を持ち、それが落合重信氏による「日本十進分類表」に関するものだったというのだ。神戸在住の落合氏と、後に親しくなるとは思ってもみないことだったと。そして、
「わたしが若い頃興味を持ったことを、落合さんはみな先にやっておられました。神戸のことを調べてゆくと、いつも落合さんに行き着くんですよ。その人と神戸で巡り合うとはねえ」
ラジオ放送からは少しはみ出した話になってしまったが、この際ちょっと書いておきたかったもので。
そのほか、神戸の文学界の話などが出たが、リスナーのみなさんには少々マニアックな話だったかもしれない。
そのあと話はわたし自身のことに移り、詩やエッセイ、そして拙著の話題に。でもそれはまあいいでしょう。
これまでにもラジオには何度か出演したことがあるが、その度に後で録音を聞いて、早口やなあと自省したのだった。これだけは話しておかねばと思うとどうしてもそうなってしまっている。今回も例に漏れなかった。ああ、恥ずかしい。

(実寸タテ10㎝ × ヨコ4.5㎝)

■六車明峰(むぐるま・めいほう)

一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会計。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。

■今村欣史(いまむら・きんじ)

一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)ほか。

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